村長との面会
「土砂崩れですか? この平らな道で土砂崩れなんて起こるとこなんてありゃしないし、土砂崩れを直した痕跡もなかったですぜ」
馬車の御者は笑いながらそう証言している。
「こりゃ参ったな」
俺は独りぼやく。
街道の土砂崩れの調査に来たんだけど、何事もなくフォレスタリアの村に着いてしまったんだが冒険者ギルドへの報告はどうすりゃいいんだ?
俺が頭を抱えているとアイラが得意気な顔をする。
「こんな時はこの村の長である村長のお墨付きを貰えばいい」
「なるほど、『土砂崩れなんて起きてない』と一筆書いて貰えばいいんだな」
「アイラちゃん、さすが元貴族! 賢い」
「えっへん!」
一筆貰うべく、村長の家に向かうけど村の様子がおかしい。
村民が誰一人すれ違わないのだ。
「ゴーストタウンみたいな村だな」
「アルク様と違ってみんな仕事で忙しいんじゃないですか?」
「ちょいまて! まるで俺が働いてないようなこと言うな」
昼間から村をうろついてるけど、俺は冒険者という個人事業主をやってるんだから!
俺がオロオロしているとアイラがそれっぽい答えを教えてくれた。
「他所者が来たから警戒してる?」
「きっとそれだな」
そんな話をしながら歩いていたら村長の家に着いたんだけど驚いた。
村長宅はちょっとした豪華さで3階建てのレンガ造りのしっかりしたお屋敷である。
周りの村民の家らしき物が藁ぶき屋根に土壁の平屋になのと比べると違和感ありまくりで浮きまくり。
村民にはぺんぺん草も生えない程の重税を掛けているのに、村長は有り余る税金で豪勢な暮らしをしているのが目に見える。
屋敷の執事に依頼書を見せると、村長との面会はあっさりと実現した。
村長は平民だと思うんだけど着飾った貴族みたいな恰好をしている。
ソニアが俺に耳打ちをしてきた。
「アルク様、この村長はかなりの成金ですね」
「ああ、間違いない」
男なのに宝石の付いた金のアクセサリをジャラジャラ着けて香水がぷんぷん臭う。
アイラの婚約者だった貴族といい勝負だ。
村長に土砂崩れのことを聞いてみた。
「土砂崩れ? そんな事が起こったなんて聞いておらんが?」
証言が取れたので俺は依頼書に一筆書いて貰った。
これで俺の仕事は終わり、とっとと帰るぞ。
と思ったんだけど、部屋を後にしようとした時にレイカが領主に余計なことを聞き始める。
「この村に冒険者が訪れたと思うんですが、行方を知りませんか?」
「冒険者だと? さあ、見てないな」
村長は執事に聞く。
「なにか知らんか?」
「そう言えば一週間前に、ダンジョン攻略をすると言った冒険者パーティーが村を訪れていましたな」
「そう言うことだ。その冒険者の行方を捜したいなら、お前たちもダンジョンに向かってみるがいい」
屋敷を出た俺たち。
これから、どうするか話し合う。
「冒険者は土砂崩れで足止めを食らってたんじゃなく、ダンジョンへ向かって行方不明になったっポイんだけどどうする?」
レイカはすぐに手を挙げた。
「探すに一票です!」
「俺は帰るに一票」
頼まれてない仕事をするほど俺たちは暇じゃない。
馬車に乗って帰ろうと思ったらアイラが止めた。
「アルクは鬼畜」
「なんでそんなこと言うんだよ?」
「冒険者が何かのトラブルになってることは間違いない。それを見て見ぬ振りをするアルクは鬼畜」
「俺も冒険者の行方が心配で助けたいとは思うんだけど、今は金を稼ぐのが最優先事項だろ」
と、心にもないことを言っておく。
「アルク様の意見に従いたいところですが、わたしも探した方がいいと思います」
「理由は?」
「追加報酬を貰えると思うし、タウンシアに戻ってから再度調査になったらもう一度フォレスタリアまで戻って来る羽目になって大変ですよ」
「それも一理あるな……。じゃあ、冒険者パーティーがどこに向かったのか行方だけでも追ってみるか」
俺は馬車の御者のおっちゃんを帰らせる。
「調査が長引きそうで今日は泊りになると思うから先に帰ってくれ」
「わかりやした。またお願いします!」
おっちゃんはタウンシアに帰って行った。
今から帰れば夕方前にはタウンシアに着くだろう。
俺たちはダンジョンを目指す。
でも、その前に……。
「おい、レイカ! なんで村長の前で余計なことを言ったんだよ?」
「余計な事? です?」
「村長との面会で冒険者の行方を聞かなければ今頃帰れてたんだぞ」
「あの村長がちょっと気になりまして……」
「成金度合いか?」
「そう言うことじゃなく、あの村長からちょっと嫌な臭いがしましたので……」
臭いってなんだよ。
あの村長は香水の臭いがキツかったけど、そこまで臭くはなかったぞ。
「わたしの取り越し苦労ならいいんですが……」
レイカが気になったことは置いといて、俺たちは行方不明の冒険者パーティーを探すことになったのであった。




