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武器屋の依頼

 武器屋で受けた依頼は簡単なお仕事だった。


「じゃんけんぽーい! また負けか……くそっ!」


 隣町のツヴァイまで順番にリアカーを引いて歩いて行く。


 リアカーを引くのはひとりで十分なので引く役はじゃんけんで決める。


 ツヴァイ迄1時間半の移動なのでじゃんけんチャンスは3回だ。


 もちろん、リアカーを引く順番じゃ無ければリアカーの荷台に乗って極楽移動となる。


 じゃんけんで負けまくって、ずっとリアカーを引いている俺だが次こそは負けない。


 ツヴァイに着いたら武器屋へ行って引換券を渡して武器を受け取り、また戻るだけの簡単なお仕事だ。


 結局往路の片道は全部俺がリアカーを引いていたが、「ご主人様のアルク様にリアカーを全ての道で引かせるのはさすがに申し訳ないと」ソニアが言い出して復路の最初の一回はソニアがリアカーを引くことになった。


 なんで俺がじゃんけんで全部負ける前提になってるんだよ。


 行きの往路と比べると剣が30本ほど増えてるけど大した重量じゃない。


 こんな大した重量でもない荷物を運んでアイラとソニアの装備が貰えるとはチョロい仕事である。


 アイラは荷物の剣を見ながら何かを考え込んでいた。


 俺はそんな思い悩むアイラが少し気になり他愛無い話を投げて探ってみることにする。


「こんな荷物運びだけで装備を貰えるなんて楽な仕事だよな。それ以外になにか気になる事でもあるのか?」


「そう、かな? わたしはこの運搬する装備の少なさや道端に転がる馬車らしきものの残骸の多さに、この依頼には何か裏が有るとにらんでいる」


「それって冒険者ギルドの講習で言ってた『罠のある依頼』のことか?」


「そう。わたしはこの運搬する荷物の少なさで確信した」


 アイラはひとり頷くと話を続ける。


「馬車移動じゃなく馬を使わないリアカーでの運搬も気になる。たぶん、この依頼には魔物が出る」


 アイラが言うには荷物の少なさは魔物に襲われることが前提で高価な馬の必要ないリアカーでの運搬になり、失ってもいい量の荷物を運搬させてるらしい。


 そして魔物が出たら運搬の名目で格安の報酬で雇った俺たちに魔物を退治させる気とのこと。


 それを聞いたリアカーを引いているソニアが笑いとばす。


「アイラちゃんは心配し過ぎ」


 ソニアは力説を続けた。


「アルク様はグレート・サイクロプスをチカンスキルで倒した英雄なのですよ」


 そしておちゃらけた。


「魔物の前にアルク様が現れただけで魔物はビビりまくってておしっこ漏らして逃げ出します」


 よせやい、照れるぜ! 褒めんなや。


 旅は楽しくて、なんぼ。


 俺も悪乗りだ。


「俺は世界一魔物をビビらす男、あまりの恐怖に魔物たちが俺を避けるから魔物が全然現れないんだぜ。その証拠にこの辺り一帯に魔物がいないだろ?」


 辺り一面、まっ平らななにも無い草原で草しか生えてない。


 真面目な話をしていたのにふざける俺にアイラが白い眼を向けるので慌てて付け足す。


「まあ、この辺りには森が無いからグレート・サイクロプスが現れる心配はしなくていいと思うぞ」


「そうならいい……。でもアルク、魔物が出ないとか変なフラグ立てない」


 アイラも悪乗りだ。


 そんなことを言って旅を楽しんでいたんだけど……、突如辺りに鳴り響く魔物の咆哮!


「ブンモー!」


 そして行商人の馬車が血相を変えて逃げ走って来た!


 どうやら俺は本当に魔物出現フラグを立ててしまったようだ。


 行商人が叫ぶ!


「牛が出たぞ!」


「牛って?」


「この辺りの荷馬車を襲いまくっているドレッド・ブルに決まってるだろ!」


 ドレッド・ブルは見たことは無いがとんでもなく巨大な雄牛だと聞いたことがある。


 得意技は突進で、奴の突進を食らったら王都の軍隊の隊列でさえ崩壊するそうだ。


「ドレッド・ブルが出たのかよ」


 呆気に取られていると行商人は俺たちを置き去りにして走り逃げて行った。


 道のはるか向こうを見ると、ちょっとした山みたいなのが猛烈なスピードでこっちへ向かってくる。


「来たぞ!」


「フラグ立っちゃいましたね」


「立ちましたね」


 それはそれはでっけえ牛だった。


 その大きさは普通の牛の10倍はある。


 腰が抜けるぐらいデカかった。


 ソニアはやる気満々だ!


「さあ、アルク様! 得意技のチカンスキルであの牛を(ひざまず)かせて下さい」


「置換するって、どいつと置換すればいいんだよ? さっきの雄叫びでこの辺りの魔物は全部どこかに逃げていったぞ」


「えっ?? えっ……? はうっ!」


 ソニアは俺がチカンスキルを使えないと知って顔が真っ青だ。


 アイラは落ち着き払っていた。


「さすが、恐怖で魔物を追い払う男アルク。辺り一面、魔物がいない」


 それいいから。


 なんで今になって俺のギャグを拾う。


 そしてドレッド・ブルは俺たちの前までやって来てやる気を見せる。


 ドレッド・ブルは鼻息が荒くやる気満々で頭を下げお尻を振り振りして突進の構え!


 猫でいうにゃんこアイドリングをしていた。

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