仕入れ依頼
結局、ソラたちは冒険者になることを諦めたようだ。
正確に言うと諦めたのではない。
岩塩の鉱脈が見つかったということで、仕事にありつけそうなのでわざわざ危険な冒険者をする必要が無くなったのだ。
ソラが頭を下げる。
「今までいろいろ協力してもらったのに申し訳ないです。やはりわたしたちは農家の子ども。戦闘には向いてなかったんです」
「冒険者ギルドには俺から事情を説明しておくから気にすんな」
俺が拠点しているタウンシアの町に戻り冒険者ギルドのライムに報告する。
俺はネーベン村で起こったことを報告した。
ライムは信じられないと言った感じで俺の話を聞いている。
「話をまとめると、ネーベン村で岩塩の鉱脈が見つかったので、ソラ団のメンバーは冒険者を諦めたということですね」
「そう言うことになりました」
ライムは険しい表情をしている。
「面倒な事になったわね」
「なにがなんです?」
冒険者を辞めることがそんなに問題なんだろうか?
「ギルドが町に無いのに冒険者になりたいというのでサポートをしてきたのに、それを反故にされたとなると賠償問題になりそうね」
冒険者ギルドとしてはソラ団の講習は投資的な側面があったようだ。
「もちろん、アルクさんには責任は無いから安心してね」
ネーベン村とは特に契約も交わさないのでこの話を進めたライムの責任になりそうだとのこと。
「大変だとは思うけど、頑張れ!」
そうエールを送ったんだが……、ライムさんは俺の手を両手でがっしりと掴んできた。
なにこれ、力が強くて全然振りほどけないんだけど?
さすがに元冒険者の受付嬢の力は半端ない。
「アルクさん!」
「は、はい?」
「疲れ果てているわたしを癒して下さい」
「癒すって?」
ライムは小声で話す。
「ここでは言えないことですけど、あんなことやこんなことです。それさえアルクさんにして貰えればわたしはまだまだ頑張れます!」
「それって、あんなことやこんなこと?」
「はい!」
ライムの鼻息が荒い。
「わたしたち、婚約したんですから一度ぐらいそう言うことがあってもいいんです」
ソニアとアイラも続ける。
「婚約したのにアルク様はそういうことを全くしてくれないんです!」
「そうです、アルクはヘタレ」
おい、お前ら!
こんなとこで痴話げんかみたいなのを始めるな!
周りの冒険者の目が冷たすぎるだろ。
「アルクの野郎、EDなんだってよ」
「立たないんですって」
誰だよ! また訳わからんデマを流してるのは!
俺は逃げるように冒険者ギルドを飛び出た。
さすがに未成年のアイラに手を出す勇気は起こらないし、アイラを差し置いてソニアだけって訳にもいかない。
そういうのをする時は分け隔てなく、全ての俺の嫁と一緒する。
取りあえず、ソニアとアイラには装備を買ってなだめることにした。
「本当ですか!」
「やったー!」
装備を新調すると聞いたソニアとアイラは上機嫌だ。
戦闘民族に与える飴は装備に限る。
*
「好きな装備を買ってこい」
俺はネーベン村への護衛報酬の金貨20枚をソニアとアイラに渡す。
俺も武器を物色していると、店主のおっさんが話し掛けて来た。
「依頼を受けてくれれば、装備を無料で進呈します」
ギルドを通さない話にはロクなものが無い。
怪しい話じゃないだろうな?
稀に強敵が出るなど本来は開示すべき情報を隠し不当に安く働かせたり、違法な物の入手や運搬の依頼をして来るのが多いそう。
そうこの前の講習で習った。
俺は眉をひそめつつおっさんの話を聞く。
「急ぎの商品の仕入れをして欲しいだけです。ほら、あそこの剣の棚が空になってるでしょ? 丁度在庫が切れてしまって、冒険者ギルドを通したら時間が掛かるので……。ちょっと隣町のアインスまで行って仕入れて来て欲しいんです」
そう言うことか……。
怪しい点も無いのでその依頼を受けることにした俺。
真剣な目で防具選びをしているソニアたちを呼び戻し、仕入れに出掛けることにした。
店を出る時にアイラがおっさんにひそひそ声でなにかを話してたんだけど気になる。




