罠穴掘り
翌朝、ソラからの呼び出しが無いのでこちらから探しに行く。
村の中心部に行きソラかゼル、ジェリカのソラ団のメンバーが居ないか聞きまわると、村人が口を合わせたかのように言う。
「ソラたちは朝早くにどこかに出掛けて行ったよ」
「昨日は夜遅くに戻って来たから、まだ寝てると思うんだけど……。え? もう出かけてていないのか?」
「ゼルたちならさっき森の方に歩いて行くのを見かけたぞ」
俺たちは森を探すことにした。
森へ行くとゼルのぼやき声が聞こえてすぐに見つかって一安心だ。
「なんだよ、この地面! どちゃくそ固いんだけど!」
「掘れない訳じゃないけど、ほんと固いよね」
「早く落とし穴を掘らないとチコク魔のアルクが起きてきて文句を言われる」
付き合ってまだ日が浅いというのに酷い言われようだ。
ソニアがいう。
「アルク様はチコク魔じゃなくチカン魔なのに失礼な人たちですね」
なんだよ、チカン魔って!
初めて聞いたぞ。
「俺はチカン魔じゃなくチカン師だ」
「はうっ!」
ソニアはジェリカの言った『チコク魔』に釣られて俺の本職を間違えて言ったことに気が付いて申し訳なさそうにしていた。
騒いでいる俺たちがやって来たことに気が付いたソラが落とし穴の底から上がって来て頭を下げる。
「こちらから迎えに行く予定だったのに、そちらから来てもらって申し訳ありません」
俺はソラに様子を聞く。
「騒がしかったけど、どうしたんだ?」
「昨日から落とし穴を掘っているんですが、講習と違って上手く掘れないんです」
「やっぱりライムの姉御が居ないとダメなのかな?」
落とし穴は2メートルぐらいしか掘れておらず、講習の時の3メートルと比べると明らかに浅い。
これでは落とし穴に落ちたワイルド・ボアが本気を出して突進したら登って来てしまう。
「俺にスコップ貸して休んでて」
ソラと代わって俺も落とし穴を掘ってみるけど、やたら固くてスコップの刃を弾いてしまう。
このスコップ、ボロボロ過ぎる。
「なんかこれおかしくないか?」
俺がスコップのことを愚痴ると、ゼルは別の意味で受け取ったようだ。
「だから、さっきからこの地面は深い穴が掘れなくておかしいって言ってるだろ?」
ちょっと愚痴ったら逆にゼルにマウント取られた。
ゼルは思うように落とし穴が掘れなくてイライラしてるみたいだ。
落とし穴を掘る様子を上から見ていたアイラが穴掘りの様子を見ていて何かに気が付いたようだ。
「アルク、その土を鑑定してみて」
「この土をか?」
土よりもむしろスコップの刃先の方を鑑定した方がいいんじゃないかと思ったんだが、何が気になったのかわからないがアイラの指示通り土を鑑定してみた。
すると……。
「えっ?」
俺は思わず声が漏れた。
鑑定した結果は驚くべきものだった。
土だと思ったものは土じゃなかったのだ。
「どうだった?」
アイラが聞いて来た。
俺は答える。
「土じゃなかったよ」
「まじか?」
「岩塩だよ」
土だと思ったものは岩塩だったのだ。
ゼルは納得してないみたい。
「岩塩て地中の奥底に眠っているお宝と思ったんだが、こんなに地中の浅いとこにもあるものなのか?」
岩塩というものは何らかの理由で出来た海水湖が干上がって出来た物で、湖だったとこの最深部に塩分の結晶が岩状になって残ったものだ。
なので地面の奥底に有るという認識は正しい。
以上、アイラからの受け売りだ。
アイラが答える。
「極稀に地殻変動で地表に露出している岩塩鉱脈が稀に有る。そう言うとこは掘りやすいから岩塩の一大産地になる」
そう言えば……、この前講習会のキャンプ料理の為に買った岩塩の産地、激強な魔物が棲みついてしまったせいでエグイ値上がりをしていた。
あの生産地も岩塩鉱脈が地表に露出していたらしいな。
こんなものが地中に眠っているのに灌漑なんてしたら、地表に塩分が上がってきて作物が育たなくなる訳だ。
ソラが言う。
「これはとんでもない金の成る鉱脈を掘り当ててしまったのでは?」
その後、ネーベン村はなんやかんやあって岩塩の一大産地になった。
ソラ団のメンバーも冒険者をしなくても余裕で暮らしていけるぐらい潤ったとさ。
めでたしめでたし。




