ワイルド・ボア狩り講習② 新スキル
ソニアの移動狩りの案に乗ることになったけど、移動狩りがなんなのかよくわからない。
「移動狩りってなんだ?」
ソニアは丁寧に教えてくれた。
「移動狩りとはその名の通り、陣地を持たずに全員が移動しながら獲物を狩るスタイルのことです」
ほーん。
そういう狩り方なのか。
「陣地に陣取らない、いつものゴブリン狩りとあんまり変わらない感じですね」
ゴブリン狩りの場合は押し寄せるゴブリンの群れから俺が逃げ回ってるだけなんだけど、まあ黙っとこ。
ソニアは説明を続ける。
「釣り形式の狩りだと、陣地から獲物までの距離が段々と離れていって効率が悪いんです。それに釣りの距離が伸びれば当然釣り役のアルク様の身に襲い掛かる危険も増えるわけですし、パーティーの人数がそれほど多くない場合はしない方がいいと思います」
確かにワイルド・ボアみたいな縄張りのある獲物の場合、獲物が縄張りから大きく移動することはないので移動しながら狩るか陣地を変えながら狩ったほうが効率がいいかも知れない。
「ただワイルド・ボアを食用として狩る場合は肉の運搬もあるので、狩る数は台車に乗せられる数、多くて3~4匹なので一帯の獲物が狩りつくされるまでは狩らないのでどっちでも変わらないかもしれません」
「今回の講習であんまり狩り過ぎてもソラ団の獲物がいなくなるから、今日は2~3匹でやめておこう」
「はい」
2匹目を狩り終えたら、俺のレベルが9に上がった。
それと共にスキルを覚えたとの表示が視界に現れる。
覚えたのはチカンスキルの強化らしい。
どうやらチカン師のスキルは3レベルごとに覚えるようだ。
「なんかスキルを覚えたぞ」
「おめでとうございます」
アイラが俺の新スキルに興味を持ったのか聞いてくる。
「おめでとう。今度はどんなスキルなの?」
「覚えたというか、チカンスキルの強化らしい。で、使い方は毎度の如くわからない」
「全く使い方がわからないの?」
『対象物の鑑定が出来るようになる』との説明が書いてあるけど俺には使い方がサッパリだ。
俺はお手上げのポーズをする。
それを見たアイラが思い切っていってきた。
「じゃあ、わたしにそのスキル試してください」
「ケガもしてないのに試していいのかよ?」
「ソニアの角の交換みたいになにが出来るのか、使わなきゃどうなるのかわからないでしょ?」
そう言われるとそうだな……。
俺はアイラに言われるようにスキルを試してみたが何も起こらない。
正確にはアイラの全裸、いや人体図は見れたが今までのチカンと同じ。
特に欠損して赤く点滅する部位とかは一切見られなかった。
これはグレート・サイクロプスの目みたいに強制的にチカンするタイプなのかな?
それならアイラで試すことはなおさら出来ない。
代わりに倒したワイルド・ボアで試してみたけどなにも起こらなかった。
「うーん、謎だ」
俺はこの時、とんでもないチカンスキルの使い方のミスをしていたのだったがわかったのは後々になってだ。
*
俺とアイラで一匹、ソニアが一人で一匹のワイルド・ボアをキャンプまで運搬し、血抜きを済ますけどソラ団のメンバーはまだ戻ってこない。
「ソラ団の連中、まだ帰ってこないな」
「まだ狩りをしてるんでしょうか?」
探しに行くとすぐに見つけた。
ゼルたちは泥まみれになり自分たちの身長より深い穴を掘っていた。
「お前たち、なにをしてるんだよ?」
「落とし穴を掘ってるんだ」
なるほどなー。
ライムが言っていたワイルド・ボアを狩る方法って罠だったのか。
なっとくなっとく。
でも、ワイルド・ボアって落とし穴に落ちるほど頭が悪いんだろうか?
ライムは得意気になって説明した。
「ワイルド・ボアは怒ると周りが見えなくなるので落とし穴には落ちまくりなのよ。わたしも先輩冒険者に教えて貰うまでは簡単に落とし穴に落ちるとは思ってもみなかったわ」
「よし、深さはこんなものでいいだろう」
落とし穴を掘り終えたゼルたちが穴から上がって来た。
木の枝で穴を隠すと落とし穴の完成だ。
実際に落とし穴にワイルド・ボアが落ちるか試してみると、これがまた面白いように落ちた。
「こりゃいいな」
「わたしたちでも簡単に狩れるね」
そこでジェリカがぼそっと言う。
「穴を掘るのが結構大変、重労働」
「まあ、俺たちは畑仕事になれてるから、俺たちに似合いの狩り方だ」
「そうね。わたしたちには向いている」
結局ワイルド・ボアは俺たちのと合わせて合計4匹狩って今日は焼肉パーティーだ。




