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講習始まる

 翌朝、俺たちは冒険者ギルドで待ち合わせし、町から結構離れた講習会場となる森まで歩きで向かった。


 ちょっとした遠足だ。


 参加メンバーは教官役のライムと、俺たち『リプレイスメント』のリーダーの俺と、メンバーのソニアとアイラ、そして隣村の冒険者パーティーの『ソラ団』のリーダーのソラとメンバーのゼル、ジェリカの生徒6名。


 俺はライムに前から気になっていたことを聞いてみた。


「受付だけで冒険者をしたことの無いライムが講習の教官なんて務まるのかよ?」


「失礼ねー」


 ライムは頬を膨らませて怒っている。


「これでも研修で半年間、Bランクの冒険者パーティーに所属してたのよ」


「そうだったんですか」


 アイラは意外といった感じで驚いている。


「冒険者ギルドの受付になる場合、冒険者をしたことがある人の場合は研修が無いんですけど、冒険者経験が無い場合は研修で冒険者パーティーに参加して冒険者稼業を経験しないといけないんです」


 冒険者ギルドの受付って意外と厳しいんだな。


「敵の強さとか敵の攻撃とかを把握してないと、実力不相応な危険な依頼受注を見逃してしまいますからね」


「ふえ~」


 ジェリカは感心しまくりだ。


 ライムがソラに新しい話題を振った。


「そういえばソラ団の皆さんは、まだ冒険者を経験したことがないんですよね」


「ええ。ネーベン村は冒険者ギルドが無いような小さい村なんです」


 ゼルも答える。


「俺たちは村長の指示で冒険者になるように任命されたんだ。村にはろくな仕事が無いからな……」


「もしかして無職だったのか?」


「無職言うな!」


 俺が指摘するとゼルが顔を真っ赤にして怒る。


「本当は親の仕事を継いで畑仕事をする予定だったんだけど、ここのところ不作続きで村で食うにも困って……。このままじゃ飢え死ぬから、村長が金を出して俺たちを冒険者になるように任命したんだ」


 ジェリカがボソっと言った。


「冒険者をやったことのないわたしたちが冒険者なんて出来るわけも無く、実質的な口減らし」


 ソラがジェリカをたしなめる。


「それについては散々話し合ったじゃない。村を捨てて街に出るか、村で冒険者としてやっていくか……。そしてわたしたちは村で冒険者をやっていくことを選んだんじゃない」


 暗くなった空気を吹き消すようにライムが明るい声を出す。


「それじゃ、この講習で冒険者としてやっていけるようにしっかりと技術を身に付けましょうね」


 ネーベン村から来た奴らは思ったよりも重い理由で冒険者を目指してることが判明した。


 講習なんて適当に済ませばいいやと軽い気持ちで臨んでいた俺はあまりの重さに言葉を失う。


 俺が言葉を失っていると、先に口を開いたのはアイラだった。


 アイラの質問にソラが答える


「ネーベン村って穀倉地帯で有名だったんだけど、今は不作なの?」


「穀倉地帯として有名だったんですけど、ここ5年ぐらいで収穫量が激減して今では普通の村の収穫量の半分ぐらいよ」


「なるほどです……。それじゃ冒険者になって魔物を狩って稼ぐしかないのですね」


「ええ」


 俺たちはソラ団のメンバーにエールを送った。


 *


 今回の敵はワイルド・ボア。


 ゴブリンと違い巣を持たず、縄張りを単独で守るタイプの魔物なので初心者でも狩りやすい。


 俺たちが経験してきた魔物で言うとホーン・ラビットに近い行動をする敵だ。


 ただ違うのは攻撃性と大きさ。


 草食性のホーン・ラビットの場合、人間と出くわせば逃げるのが基本で追い詰めなければ相手から襲ってくることはなかったが、雑食性のワイルド・ボアの場合は好戦的で襲ってくるとのこと。


 縄張りに入った時点で襲われる可能性が有るので警戒を始めないといけない。


 また、大きさもかなり違う。


 ホーン・ラビットは猫ぐらいの大きさだったが、ワイルド・ボアは大型犬ぐらいの大きさだ。


 その身体の大きさを生かした得意技の突進を食らったらタダじゃ済まない。


 ライムが説明したワイルド・ボアの特徴はこんな感じだった。


 それと、ライムが言うにはネーベン村周辺に生息しているのと、ゴブリンと違い肉が食用になるとのことで今回の講習の敵に選定した理由とのこと。


 あと、ソラ団の連中にワイルド・ボア狩りを経験させたかったっていうのも大きな理由だ。


 村に帰ってから、ボア狩りの経験が有るのと無いのとじゃ大きく違うからな。


 俺たちはテントの設営を済ませると早速ワイルド・ボア狩りに向かった。


 俺は皆を激励する。


「よーし、みんな今日はボアを狩りまくるぞ!」


「アルク様、今夜は焼肉パーティーですね」


「狩れなければ今夜は水だけ」とアイラがぼそり。


「マジか?」


 ゼルの声が森に響く。


 うまく狩りを終わらせて、楽しい夕飯を迎えたいものだ。

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