食費稼ぎ
昨日まで俺の懐は人生史上最高にかつてないほどホクホクだったんだけど、一夜明けた今の懐は木枯らしが吹いている。
昨日サビア屋のミントから吹っ掛けられたせいで、アイラの譲り受けに全財産を使い果たしてしまった。
グレート・サイクロプスの討伐という臨時収入のあては有るものの、討伐クエストが発行されていない魔物を受注せずに勝手に狩ったので討伐報酬の支払いは王都の冒険者ギルド本部からの送金が済むまで手に入らないらしい。
そりゃ、こんな地方都市の冒険者ギルドの金庫に大金が眠ってる訳も無いしな。
報酬を支払ってしまったらギルドの資金繰りに困るとライムさんに泣きつかれたので仕方なし。
そんなことがあって、懐に北風が吹き荒む俺たちは食費を稼ぐべく町の隣の草原へとホーンラビット狩りに来ていたのだ。
なにしろ、今の俺たちは3人の大所帯なのだ。
おまけにその中の一人は5人分以上の食事を軽く平らげるフードファイターが紛れ込んでいるので我が家のエンゲル係数は絶望的に高く稼がないといけないのだ。
3人で狩りに来たけど、回復役のアイラが暇そうにしていた。
「二人とも強いから、回復する必要が無くて暇過ぎる」
俺もソニアも強くなったので、ホーンラビット如き雑魚でケガをするなんてことはあり得ないのだ。
でも、これだとアイラのレベルが上がらずレベルが上がらないので、必要は無いけれど俺の戦闘に加勢して石を投げて貰っているのだ。
「お、いて!」
時々コントロールが乱れて俺の頭に石がクリティカルヒットするのは愛嬌だ。
何匹か倒していると、アイラが大喜びしだす。
「レベルがやっと上がりました」
「おお!」
「おめでとう!」
「これならゴブリンにリベンジできるかな?」
「いいね、じゃあやってみるか!」
*
ということでやって来たゴブリンの巣。
今日も元気にゴブリンでいっぱいだ。
ここで狩りを何度かして、何度もゴブリンを全滅させたのに次の日には数が元通りに戻ってる仕組みが良く分からん。
きっと、俺が働けば腹が減るとか、かわいい女の子がいたらついつい心が惹かれるレベルの話で考えるだけ無駄なレベルの話なんだろうな。
どうでもいいことは置いといて今日も元気にゴブリン狩りだ。
アイラが胸を張った。
「わたしがいいことを思い付きました」
「いいこと?」
ソニアも俺も首を傾げている。
「こうです!」
ソニアは俺の後ろに隠れて砂粒に近い大きさの無数の小石をゴブリンに向かって投げる。
当然、ゴブリンの群れは石を当てられたので怒り狂って襲ってきた。
俺をな!
「のあっ!」
俺は慌てて逃げる。
「なんで俺を襲ってくるんだよ?」
「ゴブリンはアルク様の姿が見えたのでアルク様が攻撃したんだと勘違いしてるようですね」
そういうことか。
ゴブリンがいきなり襲って来たからビビッて逃げちゃったんだけど倒さないとな。
レベルも結構上がったし、ゴブリンの群れの討伐なんて余裕余裕。
俺の剣にバッタバッタと倒されるゴブリンたち。
ゴブリンは単純に俺に向かって突進してくるだけなので討伐は実に簡単だ。
アイラは俺の才能に感激していた。
「すごいです、アルク!」
「俺の実力はこんなものさ」
「それにわたしのレベルも上がりまくりです」
レベルが上がらないで悩んでいた昨日とは打って変わって表情が明るい。
結局、その日のアイラは小石だけじゃなく短剣も持たせてたので、短剣の扱いがかなりうまくなったようだ。
これでゴブリン一匹ぐらいなら相手を出来るようになって、ケガ待ちの暇ひま回復魔法使いだけじゃなく短剣で戦闘に参加出来るようになった。
「今日のアイラは物凄い成長じゃないか」
「今日のアイラちゃんは頑張った」
俺とソニアの両方から褒められたので「えへへ」とアイラは照れていた。
*
ゴブリンから採れた魔石をもって冒険者ギルドへと向かう。
ゴブリンから採れる魔石自体は大した価値は無いんだけど、数が数なだけに結構な報酬になる。
宿代払って、豪華な夕飯をソニアが食べまくっても十分なお釣りが返ってくるはずだ。
ギルドのカウンターに居たライムに魔石の買取を頼んだ。
「悪い、ちょっと数が多いんだけど魔石の買取を頼めるか?」
その時ライムが固まった。
魔石の数に驚いたんじゃない。
「そ、そ、その子は、ど、ど、どうしたんですか?」
明らかに動揺しまくりのライム。
俺から見てもライムが動揺してるのがハッキリとわかった。
そういえばライムにアイラを紹介してなかったな。
「この子は昨日俺の仲間にしたアイラだ。よろしくな」
「アルクに買ってもらったサビアのアイラです」
それを聞いてさらに固まるライム。
「ま、ま、また、サビアを買ったんですか?」
「まあ、色々と事情があって買ったんだ」
ライムが小声でなにかを言ってる。
「私が彼女じゃ、ダメ……なんですか……」
「ん? 聞こえないけどどうした?」
「な、なんでもないです」
最近、金回りが急に良くなったアルクがサビアを買いまくり、ライムから離れていってると実感したライムは危機感を募らせていた。




