おっさんとの面会
おっさんはここらの村人とは段違いのいい身なりをしていて、黒い背広をバッチリと決めていた。
貴族では無いが、きっと王国の金持か商人だろう。
助けたおっさんが礼をいった。
「サイクロプスから助けて頂いてありがとうございます。お食事でもしながらお礼をしたいので、お嬢さんたちも一緒に連れてレストランに来て貰えませんか?」
その夜、レストランでおっさんと会うことにした。
「美味い物が食べれるぞ!」
「本当ですか?」
ソニアは目を輝かせてまだ見ぬメニューを片っ端から食い尽くそうとしている。
底知れぬソニアの食欲、おっさんの財布の危機だ。
レストランなんて行ったら余裕で月収の3ヶ月分ぐらい吹っ飛ぶから、生まれて初めて行くぜ!
どんな美味い物が食べれるか今から楽しみだ。
「私は行かない方がいいと思う。アルクも行かない方がいい」
「なんでだ?」
「きっと良くないことが起きる」
大喜びのソニアに反してアイラは暗い顔をしていた。
おっさんに会いに行かないと助けたお礼が貰えないので、行かないという選択肢は無い。
俺はソニアとアイラを連れておっさんに会いに行った。
*
レストランは貸し切りだった。
俺たちが店に入ると、店員が後ろ手でドアのカギを締めて守衛を立たせる。
見たことも無い警備体制だな。
もしかしてこのおっさんは俺の思っている以上に偉い人なんじゃないのか?って考えが頭を過る。
そんなことを思いつつも、食事会に臨む俺たち。
おっさんが落ち着いた声で話し始めた。
「サイクロプスから助けて頂いてありがとうございます。あなたは命の恩人です」
「いえいえ、困ってる人がいたら助けるのは人として当たり前のことです」
おっさんを見捨てようとしたことはきれいさっぱり忘れ普段は口から出ないような出まかせを言うと、アイラもソニアも俺を見つめる。
その目はやめろー!
俺のハートに致命傷、いたたまれなくなるじゃないか。
おっさんはそんな俺の心の中を見透かしたのか、見下したような表情をする。
「アルク君でしたかね? お噂は色々と聞いておりますよ」
きっとチカンのことを言ってるんだろう。
説明しても理解してくれる訳が無いので、俺は口から出まかせで論点ずらし。
「冒険者仲間ではゴブリンバスターとして有名ですが、一般的にはそこまで有名じゃないですよ」
でもおっさんは俺の話術じゃ躱せない。
おっさんはダイレクトに切り込んできた。
「なんでも、お噂じゃ貴族の娘を手籠めにしたほどのプレイボーイって話じゃないですか」
「そんな噂もありますね」とカッコつけた返事をする俺。
あくまでも噂だけでなんにもしてねーけどな。
ソニアが事情を説明してをくれた。
「アルク様はサイクロプスとやったとまで根も葉もない噂を立てられて困っているんです」
それ全然、事情の説明になってない。
余計に混乱させるだけだろ。
ソニアの話を聞いたおっさんの目が厳しくなった。
「サイクロプスを手籠めにしたとか、そんなことはどうでもいいんです。君が手籠めにした貴族の娘、そこに座ってるお嬢様は私の旦那様の愛娘なんですよ」
「えっ?」
俺の後ろで立っていた店員が俺を羽交い絞めにし、テーブルに押さえ付けた。
ソニアも俺と同じように羽交い絞めにされテーブルに押さえ付けられて身動きが取れない。
「お前がお嬢様を手籠めにしたせいで、やっと纏まった縁談が破談になった責任をどう取ってくれるんだ!」
「そんなこと言われましても、娘さんに手なんて出していません」
おっさんは声を荒げる。
「さっき確認したらお嬢様に手を出したことを臭わせていたじゃないか!」
「あれは見栄を張っただけで、女の人としたことがない年齢イコール彼女居ない歴の童貞なんです!」
「そんなこと信じられるか! こっちにはな、寝室でお嬢様とお前が裸で居たって苦情迄来てるんだ!」
お貴族様からアイラの親元に婚約破棄の書状でも届いたんだろうか?
これは全力で誤解を解かないと!
「確かにお嬢様とは裸で居たことは事実ですけど、いかがわしいことは一切してないんです」
弁解してもおっさんは聞く耳持たずって感じ。
おっさんが指示を出す!
「よし、確証が取れた。こいつらを斬首しろ!」
斬首って……首を斬り落とすってこと?
そんなことされたら……死んじゃうじゃん!
サイクロプスを倒したお礼を貰う為にレストランに来たら、絶対絶命の危機が訪れた。
どうする俺!




