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加護詐欺王子とは言わせない〜実は超絶チートの七転八起人生〜  作者: 如月 玲
第3章 策謀、紛争、ついでに縁談

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(18)謀略の気配

「ディロス……。あんた、どこまで人遣いが荒いの……」

 室内全員の視線を集めてしまったシーラは、心底うんざりした表情で悪態を吐いた。しかしそんな彼女に、ディロスが平然と言い返す。


「俺の言ってること、間違っているかな?」

「間違ってはいないわよ。間違っては。ただ……、まかり間違っても、どこからどう見ても非戦闘職種の私にお鉢が回って来る事態は避けたかったというのが本音だし、超絶にムカつくだけよ」

 そこでダレンが諦めたように溜め息を吐き、カイルが頭を下げる。


「まあ……、仕方がないだろうな」

「シーラ。非戦闘職種の君にまで、面倒をかける事態になってすまない」

「ダレンさん!?」

「カイル様まで、何を言っているんですか!?」

「まあ、こんな状態であれば、仕方がありませんよね」

 カイルが当然のように頭を下げたことで、居並ぶ家臣達は動揺した。それに対し、シーラは腹を括ったように呟いてから、サーディンに視線を向ける。


「サーディン様、二百で十分です」

「うん? 二百というのは?」

「この城に残しておく騎士は、二百で結構です」

「は?」

 唐突に言われた内容が咄嗟に理解できなかったサーディンは、目を丸くして固まった。そして彼の部下達が揃って怒りの声を上げる。


「おい!」

「正気か!?」

「何を言ってるんだ!!」

「黙らんか!!」

「…………」

 再び部下達を一喝して黙らせたサーディンは、先ほどのディロスに対する問いかけ以上の緊迫感を醸し出しつつ、シーラに確認を入れた。


「騎士を二百か。歩兵は?」

「不要です。丸ごと国境に連れて行ってください」

「『攻防戦をしない』と言ったな。確かに二百であれば、城の運営と防御は最低限できる。しかし、あくまでも最低限だ。ここに攻め込ませない方策があれば、予め聞いておきたいが」

「真っ当な騎士様達にはあまりお聞かせしたくない内容ですし、お聞きにならない方が良いと思います」

 大真面目にシーラが告げた内容に、サーディンが凄みのある薄笑いで応じる。


「なるほど。間違っても正攻法ではない、ろくでもない謀略の類というわけだ」

「その認識で結構です。あと便宜を図っていただきたい事があるのですが」

「どんな事だ?」

「城に残す部隊は、完璧に連携が取れる部隊であること。かつ統率部隊の管理責任者は、部外者で女の私の指示にも無条件で従ってもらうことです。その他、情報収集と連絡網を確実にしておくことでしょうか」

 シーラから提示された内容について考え込んだサーディンだったが、それは長い時間ではなかった。


「分かった。こちらには二百だけ割くことにする。人選と体制も、全面的に君の希望に沿うようにしよう」

「ありがとうございます」

「サーディン様!」

「騎士団長!!」

 サーディンが予想外にあっさりと要求を飲んでしまったことに対して、周囲から驚愕と非難の声が上がった。しかしシーラはそんな事はお構いなしに立ち上がり、冷静にダレンに対して断りを入れる。


「そうと決まれば、失礼します。今日中にキリの良いところまで、仕事を終わらせておきますので」

 その台詞にダレンが反応するより早く、ディロスが戸惑った声を上げる。


「え? 早速、明日にでも出かけるつもり?」

「当たり前でしょうが。収穫祭が近くて人の行き来が多いし、見慣れないよそ者がいても大して不審に思われないわよ。地図だけじゃ実際の所は分からないし、実況検分してくるわ」

「確かにそうかもしれないけど……」

 シーラの主張に、ディロスは少々不安そうな顔つきになった。そんな彼を無視しながら、シーラがカイルに向かって要求を繰り出す。


「そういうわけなので、誰か適当な人を付けてくれませんか?」

「そうだな……。まずエディ、シーラに同行して、ヴォール男爵領との領境に出向いてくれないか?」

「ええと、構いませんが……。明日出発、ということですよね?」

「そういうこと。明日というより、明朝なのでよろしく」

「分かりました。急いで準備します」

 急に指名を受けたエディは戸惑った顔になったものの、すぐにシーラに向き直って了承した。そこで人選について、カイルがダレンに提案する。


「それから……、リーンにも同行して貰うか」

「そうですね。その方が効率よく調査できるでしょう。それではそちら方面は、この三人に任せることにして」

「ちょっと待ってください!」

「非戦闘員ばかりで組ませて、大丈夫なのですか?」

「せめて何人か、護衛を同行させるべきではありませんか?」

 突如として騎士から上がった声に、カイルはシーラに確認を入れた。


「シーラ、どうする?」

「ぞろぞろと大挙して移動したら、嫌でも人目についてしまいます。お心遣いはありがたいのですが、三人で大丈夫です」

 あっさりと却下してきたシーラに、カイルはそれ以上食い下がったりはしなかった。


「分かった。全面的に任せる」

「不在の間の仕事は、溜め込まないように処理しておく」

「ありがとうございます。それでは失礼します」

 ダレンが仕事の肩代わりを申し出たことで、シーラは安堵した表情で退出していった。それを見送ってから、ダレンとカイルが言葉を交わす。


「そうなると目下の懸念は、近日中にここに押しかけて来るヴォール男爵ご一行様ですな」

「そうだな。彼らは領内の様子や、城の内外をできるだけ調べていく目算だろうし。その辺りの対処を頼めるか?」

「こちらでどうとでもいたします。騎士団の皆様は連中に気取られない程度に、諸々の準備を進めておいてください」

「そうだな。それでは解散とする。皆、よろしく頼む」

 そのカイルの宣言で、会議は終了となった。全員が立ち上がり、一礼して退出するカイルを見送ったが、各自が歩き出すと同時に呆れと愚痴が入り混じった声が上がる。


「本当に、今日の会議はとんでもなかったな」

「全くだ。クレート伯爵とヴォール男爵が繋がっているだけでもとんでもないのに、ここに二百だけ残して全部国境側に振り分けろって……」

「一体、何を考えているんだよ」

 殆どの者が不審と不安を胸の内に押さえ込んだまま、それから何日かが過ぎていった。




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