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加護詐欺王子とは言わせない〜実は超絶チートの七転八起人生〜  作者: 如月 玲
第3章 策謀、紛争、ついでに縁談

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(19)招かれざる客人

 客人の到着予定時刻が迫り、出迎えの為にカイル以下、城の主だった面々が大広間に集まってきた。正面奥に据えられた椅子にカイルが座り、その左右に他の者達が一列に並ぶ。殆どの者はいつも通りの表情で佇んでいたが、中には小さく悪態を吐く者も存在していた。


「これから領地をかすめ取ろうって盗人野郎が、どの面下げてのこのこ出向いてきやがるんだろうな」

 その呟きを耳にした同僚達が、声を潜めながら彼を宥める。


「ロベルト……、気持ちは分かるし激しく同感だが、まかり間違っても客人の前で毒舌も皮肉も吐くなよ?」

「客人だぁ? こっちの都合も聞かずに、一方的に押しかけ宣言してきた馬鹿どもじゃねえかよ?」

「だから、一応訪問のお伺いを立ててきているし」

「貴族として無碍に断れなかったからだろ?」

 そんな揉めているところに、サーディンの叱責が飛んだ。


「おい、お前達。さっきからごちゃごちゃと五月蠅いぞ。そろそろ到着予定時刻だ」

「分かっています。余計なことは口にしませんし、態度にも出しません」

「当たり前だ」

 不満げに言い返したロベルトに一瞥もくれず、サーディンは無表情で大広間の出入り口に視線を向けた。すると少ししてヴォール男爵到着の先触れが来て、その場全員が居住まいを正す。その少し後に担当者に案内され、ヴォール男爵一行が大広間に入場してきた。


「ヴォール男爵、ようこそトルファンへ。歓迎いたします。城下が収穫祭でなにかと騒がしく落ち着きがないと思いますが、精一杯おもてなしさせていただきます」

 ヴォール男爵ケーニスが入ってきたのを認めたカイルは、椅子から立ち上がって彼を出迎えた。対するケーニスもまっすぐカイルに歩み寄り、笑顔で礼を述べる。


「フェロール伯爵。こちらこそ急な申し入れにもかかわらず、快く受け入れていただいて感謝しております」

「滞在中は、こちらのダレンが男爵ご一行の対応を致します。城内の人手が若干少ないためにご不自由をかける事があるかもしれませんが、可能な限りご要望にお応えしますので、遠慮なく仰ってください」

 ここでカイルが、傍らに立つダレンを手で示しながら説明する。それを受けて、ケーニスはダレンに向き直って愛想を振りまいた。


「これはかたじけない。ダレン殿、よろしく頼む」

「畏まりました。それでは夕刻に歓迎の晩餐の席を設けますが、それまで寛いでいただけるように、皆様をお部屋にご案内します」

「それはありがたいのだが、伯爵のご都合が良ければ早速二人でお話ししたいのだ」

「私とですか?」

 唐突な指名に、カイルは意外そうな顔つきで応じた。それにケーニスは笑顔を深めながら話を続ける。


「ええ。隣り合っている領地とは言え、これまで互いになにかと忙しく、実際に顔を合わせて落ち着いて親睦を深める機会が無かったですからな。部下達は自由に、城内や城下を見学させて貰いたいが」

「それではダレン。全員を各自のお部屋にご案内した後、男爵は応接室に、部下の方達はご希望の場所にご案内してくれ」

「畏まりました」 

 カイルとダレンのやり取りを聞いたケーニスは、そこで慌てて固辞しようとした。


「伯爵。案内などしていただかなくても」

「いえ、先程も申し上げましたが、今現在収穫祭の真っ最中で城への人の出入りも激しく、何かお客人に対して失礼があったり事故に巻き込まれないとも限りません」

「事故とか、そんな大げさな」

「ヴォール男爵は、私が伯爵としてこの地に赴いて初めての客人ですから、念には念を入れて接待させていただきます」

「接待していただくのは嬉しいのですが」

「王都であれば賓客の場合、一団体ごとに一個小隊は配置するのが当然ですが、辺境の弱小領主としてはそこまでできないのをお許しください」

「賓客とかそんな扱いは」

「皆、客人をお待たせするな。速やかにご案内するように」

 ケーニスの台詞を半ば無視する勢いで主張したカイルは、有無を言わせぬ口調で言い切った。それを受けてダレンが恭しく頭を下げ、予め決めておいた担当者達も、すかさずケーニスの随行者達の側に立つ。


「はい。それでは男爵様、こちらへどうぞ。側近の方には隣接したお部屋を準備してありますし、護衛の方々にも同じ階の部屋を準備してあります」

「それではヴォール男爵、また後ほど。少し仕事を片付けてから、応接室でお会いしましょう。お茶の準備をさせておきます」

「……それはどうも」

 カイルは笑顔のままケーニスをあしらい、最初から揉め事にしたくないケーニスは不満げに大広間から出て行った。彼の家臣達も全員、複数の案内人という名目の監視者に付き添われ、面白くなさそうに主の後に続く。そんな一行を見送ったロベルトは、やっと満足そうに鼻で笑った。


「はっ、いいようにあしらわれてやがる」

「ロベルト」

「分かってる。だいたい連れて来る人数は予想していたしな。担当を決めて交代で見張るぞ」

「お前はどう考えても目立つから、堂々と張り付く方な。俺達はこっそり見張っているから、揉め事を起こすなよ?」

「少しは信用しろ」

「信用できているなら、一々こんな事を言わん」

 どう考えてもお愛想笑いなどできないしする気もないロベルトを、周囲の者達は諦め顔で宥めつつ、今後の分担や予定の最終確認を進めていった。






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