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加護詐欺王子とは言わせない〜実は超絶チートの七転八起人生〜  作者: 如月 玲
第3章 策謀、紛争、ついでに縁談

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(32)謀略

「たかが八人に、先程から何をしている! さっさと囲んで、なぶり殺しにしてしまえ!!」

 当初、少人数の敵から奇襲を受けたと報告を受けたクレート伯爵領騎士団長のキアソンは、すぐに片が付くと思っていた。その予想に反し、自軍の混乱が拡大している状況に、苛立ちを隠さずに周囲に怒声を浴びせる。しかし彼の部下達は、恐怖と動揺をない交ぜにした様子で、口々にキアソンに訴える。


「で、ですが団長! あいつら、強すぎます!!」

「それに、何だか変なんですよ!?」

「こっちの攻撃が通じていないみたいです!」

「側で見ていないので、はっきりとは分かりませんが!」

「何をわけが分からないことを言っている! 攻撃が通じないなど、馬鹿な事があるか!! 何か変な武器でも使っているのではないか? 近寄ってきちんと確認すれば良いだけの話だろうが!!」

「ですが、連中に近づいた瞬間に殺されます!」

 悲鳴じみた部下の訴えに、ここでキアソンの堪忍袋の緒が切れた。


「揃いも揃って、意気地無しどもが!! それにマークス!! 貴様、この周辺には軍馬を通せる道などないから向こうからは仕掛けられないし、前線基地としてはうってつけだとか言っておきながら、ここまで気づかれずに接近されるとはどういうことだ!?」

 部下達を盛大に叱りつけた後、キアソンの怒りは同行していたマークスに向けられた。その怒りを真正面から浴びたマークスは、顔色を悪くしながら必死の形相で弁解する。


「そ、それは! 確かに迂回路などはないはずだ! どうして奴らが現れたのか分からん!」

「この無能が! それとも貴様、我々を嵌めたのか!? 散々フェロール伯を蔑んで貶める言動をしておきながら、全て偽りか!? クレート伯に取り入って害しようとしたが上手くいかず、我々をここまでおびき出したのか!?」

「そ、そんなわけあるかっ! そんなことをして、私に何の得がある!」

 そんな仲間割れの様相を呈してきた場に、刻一刻と乱戦の場が近づいてくる。クレート騎士団の旗が乱立しており、立派な装備の騎士が固まっていることで、アスラン達にはそこが本陣だと容易に推察できた。そして微塵も躊躇わず、群がる敵兵を蹴散らしつつ押し寄せる。


「あれだ!」

「行くぞ!」

「おう!!」

「ひっ、ひぃいっ!」

「奴らが来た!!」

「怯むな!! 落ち着いて対処しろ! 奴らを囲め!!」

 怒号と悲鳴が飛び交う中、もう何人目になるか分からない敵を斬り捨てて馬上から地面に叩き落としたアスランは、ぼっかりと空いた視界の先に不愉快極まりない人間の顔を認めた。


「ほう? 思った通りだな」

 騎士団長と思われる壮年の男とマークスが揃っているのを確認したアスランは、両眼を不気味に光らせ、舌なめずりせんばかりの壮絶な笑みを浮かべた。それを横目で見てしまったロベルトは、相変わらず敵からの攻撃を受け流しながら、一応忠告してみる。


「……おい、アスラン。恥知らずがいるからって、ぶち切れるなよ?」

「誰がそんなことをするか。奴には、相応しい死に様をさせてやる」

「ああ、もう好きにしろ。俺は知らん」

 言うだけ無駄だったなと思いながら、ロベルトは自分に向かって繰り出された槍先をあっさりと片手で掴んだ。それを強引に引き寄せて相手を馬から落としつつ、奪った槍を彼に向かって力一杯突き下ろす。次の瞬間流れるような動作で手綱を操り、すれ違いざま敵の馬に体当たりをしつつ、相手の腕を斬りつけて落下させて後方の仲間の為に進行方向を開けた。

 他の者達も、技量は十分で場数も踏んでいる者ばかりであり、彼らの異常さに慄いた敵陣の者達が少し距離を空けて囲んだ状態で、アスラン達はキアソンとマークスの目の前に進んだ。

 そしてマークスとしっかり視線を合わせたアスランは、相手を罵倒するどころか、満面の笑みで口を開いた。


「やあ、久しぶりだな、マークス。長期間ご苦労だった。君の働きは、フェロール伯爵が高く評価している。安心して戻ってきたまえ」

「は? な、何を言って」

「ところで、隣にいる彼はクレート騎士団団長で間違いないのだな? 殺して首をムスタ城のクレート伯爵に届けるにしても、一応の礼儀として名前を伝えないといけないだろう。彼の名前を教えて欲しいのだが」

「きっ、貴様にそんな馴れ馴れしくされる覚えは」

「やはり貴様、我々を裏切っていたな……」

「い、いやっ! 誤解だ! あいつがわけが分からないことを言っているだけで!」

 親しげに語りかけてくるアスランに、マークスは狼狽気味に反論しようとした。しかしその横でキアソンが、唸るような声を上げながら鞘から剣を抜く。怒りを露わにした彼から後ずさりながら、マークスは必死の形相で訴えた。しかしその光景にも微動だにせず、アスランが大真面目に言葉を継ぐ。


「そうだぞ。マークスは裏切ったりしていないぞ? 最初からフェロール伯爵の意を受けて、追放の汚名を受けつつもクレート伯爵の懐深くに入り込み、情報を流す役目を果たしてくれたのだからな」

「ふざけるなぁあぁぁっ!!」

「ぎゃあぁぁぁぁっ!!」

 キアソンが勢いよく剣を振り下ろして、マークスの胸を切り裂く。それと同時に周囲を囲んでいた騎士達も、手にしていた得物でマークスの身体を複数方向から斬りつけ、または刺し貫いた。


「ぐはぁっ……、ば、ばか、な………」

 うつろな目をしたまま、マークスは地面に倒れ伏した。その身体を踏みにじりながら、キアソンが部下達に向かって吠える。


「薄汚い裏切り者は排除した! あとはこの鼠どもだけだ! さっさと始末して、トルファン城に攻め込むぞ!!」

「やれるものならやってみろ!!」

 そこで再び乱戦となり、マークスの遺体はその混乱のただ中でうち捨てられ、存在すらも忘れられていった。













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