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第百三十七話「亀鍋」

「レウス〜、お客様よ〜♪」

「どなたー?」

「アタシのダ・ン・ナ♪

 きゃ〜、言っちゃったわ〜!」


 逝っちゃえ逝っちゃえ〜。


「……何をしている」

「見てわかりませんか?

 女房に膝枕をしてもらってます」

「レウス君、ユグドラシルの木を治す話はどうなったんだい!」

「ガディスさんまで来たんすか……。

 よく見てくださいよ、足でしっかり回復(ヒール)してるでしょうに」

「俺にゃふざけてるようにしか見えねぇよ」

「あ、ザーボンさんも来たんですか?」

「おう、文句あっか?」

「問題ないっすよ」

「しかし1000年経っている傷口が回復するとは……って、この複数の(オーラ)の塊はなんだい?」

「拡散で回復(ヒール)を発射してるんですよ」

「……これを1日中続けてるのか」

「睡眠中以外は……ですけどね」

「レウスの寝顔は可愛いんだぞ!」

「キャスカ、今それは聞いてないぞ」

「はははは、良い奥さんだね!」

「しかし凄ぇ(オーラ)量だな……」

「他人から(オーラ)を奪えるんですよ」

「「「…………」」」

「どーだ!」

「きゅーきゅ!」

「お、スン来たのか」

「きゅきゅーう、きゅいきゅいっきゅ」

「そうか、帰るのか。

 マカオ、チャッピー、スンの護衛頼むわ!」

「は~い♪」

「じゅーろくまん……!

 え、終わりでいいの!?」

「帰ったらもう10万秒なー」

「ふっ、これが我の最大の試練か……」

「スンを無事に届けられたら残り5万秒にしていいぞー」

「まじで!?」

「おー、まじまじ」

「さぁスン、共に行こうじゃないか!

 26万秒の(いただき)へ!」

「気を付けてなー」

「「は~い」」

「んじゃまた明日なー」

「きゅーい!」




「「「…………」」」

「どうしたんですか?」

「いや、前も思ったが、我々の魔物への概念が根底から覆されてる気分なんだよ」

「魔物の概念のほとんどが「人間を襲う者」ですからね。

 けど大抵の原因は人間にあったりするもんなんですよ。

 それを改善しようかなーって時に死んじゃって、そりゃもう大変だったんですよ」

「……そこまで自分の死を気軽に言う奴も珍しいな」

「しょっちゅう瀕死になってますし、実際に2回死んでますからね。

 人の死には慣れませんが、自分の死には慣れてしまってるのかもしれません。

 いや、ほんとは慣れちゃいけないんですけどね」

「ほっほっほ、こりゃ本当に大器だの」

「あれ、グラマールさんじゃないすかっ」

「お邪魔しております」

「シャミーさんまでいらっしゃる」


 あ、グラマールはハーフエルフのおばあちゃん召喚士で、シャミーはハーフエルフで高身長の尼さん召喚士だぞ。


「隠れて話は聞かせてもらったよ」

「申し訳ございません」

「誰かいるなーとは思ってたんですが、お二人でしたか。

 なんで隠れてたんです?

 やっぱり俺を見極める為! とかですかね?」

「概ね合っとるな」

「お見事でございます」

「確かに若い頃聞いたレウス・コンクルードの噂通りじゃな」

「その噂を知ってたら魔物の概念が変わってもおかしくないんじゃないかい?」

「あたしゃ、自分で見て得心したものしか信用しないんだよ」

「そんで……協力して頂けるんでしょうかね?」

「ふふふ、納得しなければここへ降りては来ませんよ」

「おぉ、これはかなりの進展ですね!

 ちょいと上に行きましょうか」

「ここじゃ出せないしねぇ」

「私の玄武は出せますけど、やはり広い場所の方が喜ぶと思うので……」

「あ……」

「……どうした?」


 はい、ユグ木の根元までやってまいりました!


「グラマールさん」

「なんだね?」

「朱雀はかなりやかましい性格してますよ」

「捕らえる時、耳が痛くなるほど騒いでたのは覚えてるよ」


 起きたら起きたで五月蠅いだろうね。

 他の皆の捕らえられた瞬間はどうだったんだろう?

 まぁ大体は瀕死だったろうから、喋る余裕も無いんだろうけどな。


「私の玄武さんはどんな性格ですの?」


 そんな目をキラキラさせて聞くなよ……。


「そうですねぇ……」

「はい!」

「幻滅するかもしれません」

「……はい?」

「かなり図々しくて、かなりひん曲がってます。

 もしかしたら召喚獣のままの方が良いと思う位には……抵抗があるかもしれないですね」

「このレウスにそこまで言わせる玄武ねぇ……こりゃ楽しみだな」

「あー心配だ……」

「ほっほっほ、それじゃ朱雀から出すよー」


 皆さんお待たせしました!

 ラーナIN朱雀ではなく、生朱雀であります!

 おぉめっちゃ真っ赤なフォルム!

 お、大きい顔……?

 黄色い(くちばし)に……黒い目元。

 …………はい、赤くてデカいだけの雀です!

 なんだこの寸胴っぷりは……体長約20メートル。

 どうやってチャッピーと交尾すんだよ。

 物理的に不可能じゃないか?


「オマタセシマシタゴシュジンサマ」

「さぁレウス、スズメを起こしてあげよう!」

「ス、ストォオオオップ!」


 ゴゴゥンッ


「レウス、まだ喋るな!」


 すっげぇ顔だなチャッピー……そして神速だったな、今のは。

 限界以上のスピードだったかもしれん。


「なぜだチャッピー!」

「キャスカは黙ってなさい!」

「な……なんでぇ……?」


 ……泣かすなよ。

 まぁ、察してやらないキャスカも悪いけどな。


「チャッピー君はなぜ止めたんだい?」


 俺今しゃべれないアルよ。

 あぁ、地面に相関図を書いてやるか


 ガリガリ……。


「魔物も大変だなおい……」

「ほっほっほ、苦労しているみたいだねぇ」

「はははは、これは想像してなかったな!」

「……どうするんだ?」

「どうしますか、レウスさん?」


 ガリガリ……。


 《チャッピー逃げろ》


「我は空の支配者……なりっ!」


 ビュンッ


「スズメ、チャッピーが「あはははは、捕まえてごらん!」だってさ!」

「……わ、私は不死鳥朱雀……魂も愛も……何度でも蘇る……わっ!」


 ビュンッ!


 ………………。


「ギャアアアアアアアアッ!!」

「あー、やっぱりスズメのが速いかぁ~」

「……ひでぇ」

「あ、悪趣味だねレウス君……」

「人の恋路は邪魔しちゃいけませんよ」

「「「魔物だろう?」」」

「考え方は人それぞれですよ」

「愛は偉大よねぇ~♪」

「あ、お帰りマカオ」

「さぁレッド、アタシ達の愛も誰にも止められないわ!」

「……お前と愛を契った覚えはない」

「引いてもダメなら押してみる……アタシにはわかるわ!」


 俺には皆目見当もつかないな。


「……レウス、今度コイツのかわし方を――」

「マカオはかわせませんので諦めてください」

「…………斬るか」

「本人も喜ぶと思います」

「…………控えるか」

「賢明ですね」

「で、では玄武を出しますね」

「お願いします」


 小さい(オーラ)の球体だこと……。


「オマタセシマシタゴシュジンサマ」

「塩」

「舐めたい……はっ!?」

「いよう」

「なんだ、レウスさんじゃないですか?」

「目が覚めたか?」

「私は……あ、思い出しましたわ。

 ちょっとそこのアナタ」

「は、はい?」

「まずね、何勝手に私を捕らえちゃってるんですか?

 私の人権どうなっとるんですか?

 ふざけてますの?」

「……」

「狭いし(くっら)いし、嫌な命令も聞かなきゃいけないし、ホント最悪でしたわ。

 私へ命令する時、心とか痛みませんでした?

 平然とやってのけたならアナタの心は相当荒んでますわ。

 そこんとこどうなんですかね?」

「……」

「何も言わないんですか?

 あぁ、そうですかそうですか。

 じゃあ私が心を痛めながらアナタに言ってみますわ。

 ちょっと塩水もらえます?」


 ……うぜぇ。


「レウスさん、この人ちょっとおかしいですわ。

 人を1000年もこき使って何も言えないんですって」

「塩水なら俺がやるからその辺にしておきな」

「ちょっとアナタ、これが優しさってやつですよ。

 アナタにはこういうものが足りないと思わないんですか?

 召喚士ですからね、さぞや色々な場所でご高説をしてきたんでしょうね。

 さて、今のアナタはそのご高説に適った行動をしているんでしょうかね?

 あー、嫌だ嫌だ……自分の過去を振り返っても、まともな行動をしてきたという自意識が過剰過ぎるんですわ。

 はっきり言って、もう最悪ですわ」

「トルソ、一生塩分がいらなければ言い続けても構わないぞ」

「レウスさんに感謝してください」

「……わ、私はなんて事をっ」

「シャミーさん、あまり気にしなくて良いんですよ」

「で、でもっ」

「弱肉強食の中で負けたアイツにも非があります」

「あー、それ言っちゃいますー?

 あのとんでもないブレイブアンデッドに勝てたのは私の戦果ですからね」


 …………俺じゃ駄目だな。


 《件名:ちょっと》

 《俺に召喚されてください》


 チーン!


 《件名:はーいっ》

 《了解しましたっ♪》


「レウスさん、何してるんですか?」

「塩分を取り寄せてます」

「さすがレウスさんですわ。

 いやー、よくわかってますわ」


 ヒュンッ


「お待たせしましたご主人様っ♪」

「そこの亀を鍋にしてください」

「ちょちょちょちょちょぉおおおおっ!?

 何でこの人がおるんですか!?

 私の華麗なる頭突きで召喚士を仕留めたはずですわっ!!」

「トルソさん、僕と君の仲だから、遺言くらいは聞くよっ♪」

「何言ってるんですか!

 こんな横暴通ってたまるもんですか!」

「ところでトルソ、俺が起こしてあげたのに礼も言えないのはどこのどいつだ?」

「それは後程言うつもりでしたわ!

 何ですのこの仕打ち!」

「確かに、捕らえられこき使われたかもしれないが、瀕死のお前を前に、生殺与奪の権利があった勝者に何を言ってるんだ?」

「そうそう、戦争で文句を言っちゃ駄目だよっ」

「勝てば官軍、負ければ賊軍だろ?」

「た、確かにそうですが――」

「ケント君、もう斬っていいのかいっ?」

「わわわわわかりましたわ!

 シャミーさん、少し言い過ぎましたわ!

 私達は恩人であり友人、それで手打ちにしましょっ、ねっ!」

「げ、玄武さんがそれで良いのであればっ……」

「あ、私の名前トルソっていうんですわ!

 気軽に「トルたん」とか呼んでもらって結構ですわ!

 レウスさん、デュークさん、こここここれで良いんですよね!?」

「ケント君、今夜は何を食べるんだいっ?」

「亀――」

「だーっ、これ以上何を望んでるんですか!」

「……が作った料理を食いたいですね」

「ま、真心込めて作らせて頂きますわ!」

「うんっ♪」

「お疲れのところありがとうございやした!」

「コホンッ……またいつでも呼ぶが良いっ♪」


 ヒュンッ


 ……ノリノリだったな。


「じゅ、寿命が1000年縮みましたわ……」

「夕飯は超薄味で頼む」

「じゃあ岩塩は4個で足りると思いますわ」

「4分の1個でも多いわ」

「栄養不足になっても知りませんからね」


 こいつは生活習慣病になって死ぬんじゃないか?


 バサッバサッ……ヒュウ、ゴゴンッ。


「あ、チャッピーお帰り」

「わ、我……もうお婿さんになれないっ!」

「何されたんだよ」

「角を(くちばし)でハムハムされた!」

「おめでとう」

「レウス、我を売りおったね!」


 そこは「な」だろうがよ。


「ごめんなさい」

「謝っても許さないもんね!」

「じゃあしょうがないな」

「しょうがないね!」

「ところでスズメは?」

「ハムハムされた後消えちゃった!

 何を言ってるのよ、私はここにいるわよ!」

「へ?」

「わ、我今変な事言わなかった!?

 意識の混在って素晴らしいわね」

「あらら〜?」

「チャッピーの中に……」

「インスズメ!

 わ、我の口が勝手に!?」


 よ、余計な要素が……。

お待たせしました。その16、17

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