第百三十二話「元破壊神志望と闇王」
「――って事がありました」
「ごっはん、ごっはん♪」
「うふふ、あのミナちゃんがね〜。
これはかなり前進したわねっ♪」
「ごっはんー、ごっはんー♪」
「にしてもこれ美味しいわね?」
「ウマ☆アマレストランの料理長にお願いして作ってもらったんだ」
「何て言ったっけっ?」
「ピザだ」
「びよーん、びよーん♪」
「これもドンの……アレ?」
「そそ、美味すぎて食い続けて太るヤツをピザデブって言うんだ」
「まんまじゃないっ」
「びよよーん♪」
ポトッ
「あーあ、落としちゃった……」
「食べ物で遊ぶからよっ?」
「うっ……うぅ……」
「ほれ、これ食っていいから」
「ぅ、ゔんっ!」
「スーレはうまくやれそうか?」
「既にファンが出来たわよ」
「やるなぁ」
チチチーン!
「あら、3人とも?」
「って事は……」
《件名:ふははははは!》
《このハティー様にお任せあれだ!》
「……どういう事かしら?」
「多分、テストに受かったんだろうな」
「何故わかったんだ?」
「勘だよ勘、多分もうすぐ正解が届くよ」
チチチーン!
《件名:書き忘れたのだ!》
《合格したから今から向かうのだ!》
「今からかよ……」
「ホントに当たったぞ!」
「皆本気ねぇー」
「だからこそ俺も手を抜けない」
「ふふふ、頑張るのは良いけど、たまには休んでねっ」
「明日はともかく、明後日はゆっくりできそうだから久々に休むつもりだよ」
「そう、良かったっ」
「ところで私達は明日行かなくても良いのか?」
「夜勤明けだし、大丈夫だよ。
ハティーは来るだろうけど、サードレベルのハーピーだし、ミナとジェイドは呼べないだろう。
群れだから親玉もいるかもだが……まぁなんとかなるでしょ」
「お前ぇとリュウリュウがいて何とかならねぇ方がおかしいぜ?」
「あ、テンダーさん、まだ起きてたんすか」
「良い匂いに釣られたんだよ」
「テンダーさんのも残してありますよ。
囚人の皆さんにも差し入れしときました」
「そりゃありがたいが、お前ぇ金は大丈夫なのか?」
「囚人の方達から頂いた魔石と武器のおかげで、今はかなり裕福なんです」
「ったく、どっちが盗賊かわかんねーな」
「あはは、すみません」
「いや、お前ぇの評判はここでも悪くねぇぜ?
若いのに出来た青年だとな」
「当然だ、私のドンなのだ!」
お前は来るのがはえーよ。
「あん、何だこのガキは?
……なっ!?」
「強いでしょ?」
「俺は自惚れてたのかもしれんな。
世の中にこんな強ぇヤツがゴロゴロしてるとはな」
「テンダーさんも十分強いですよ」
「サシでガディスに勝ったヤツが言うと皮肉にか聞こえねーぞ?」
「こらーっ!
もっと私の話をするのだ!」
「ハティー、これ美味いぞ」
「食べるのだ!」
「はっはっはっは、良い舵取りだな!」
舵取りって……船なんてあるのかこの世界?
馬鹿でかい湖はいくつかあるから……あるんだろうか?
「テンダーってんだ、よろしくな嬢ちゃん!」
「変だ!」
「テンダー!」
「てんだー!」
「そうだー!」
「お前、面白いな!」
「ハッハッハッハ、嬢ちゃんもな!
スーレにも驚いたが、第9剣士部隊はビックリ箱みてぇなとこだ」
「いつかもっと驚かせられるように頑張ります」
「これ以上何を驚くってんだ?」
「さて、なんでしょうね」
「……お前ぇが一番不気味だよ」
「さいですかー」
はい、翌朝の首都ダダンであります!
現場には俺、ハティー、デューク、ソージ、リュウリュウと副官のサイ、召喚士のカエデ、ミノリでございます。
ハーピーはサードレベルだからちょいと強い。
群れとなると副官のサイでも少しキツイんじゃなかろうか?
一体一体は余裕だけど、囲まれると辛いよな。
まぁ俺達いるから大丈夫だろうけど……空に逃げられたら標準装備の俺ではなんとも出来んな。
「おい、ドン……」
「なんすかソージさん?」
「いい加減にしろよ、なんだこのガキはっ?」
「さっき紹介したでしょう、ハティー――」
「なのだ!」
「ふふふふ、ドン君の知り合いだけで神者ギルドが出来てしまうかもしれんな」
「作るつもりは毛頭ないですよ」
「けど面白そうだねっ」
作ってもそこは遊園地じゃないぞ。
「リュウリュウ様、本日どのようにするのでしょうか?」
「サイ、お前はどう思うかね?」
「リュウリュウ様のご指示を頂くのがベストであります!」
またかよ……。
「リュウリュウさんはサイさんが立てた作戦案を聞きたいんですよ」
「私が作戦を……ですか?」
「これはリュウリュウさんからのテストみたいなもんですよ」
「さぁ、どうかなサイ?」
「そうですね……空を飛ぶ魔物は人間にとって天敵であります。
出来る限り魔物を引き付ける事が重要だと思います」
「うむ、それで?」
「都合の良い囮役がいれば効率的に倒せるかと思います!」
「ほぉ、囮か……で、適役はだれが良いかな?」
「それは……わ、私が囮になります!」
うわぁ、これサイに自分で言わせる為のリュウリュウの作戦だろう。
狙われ易い場所で囮になれなんて人に頼めないしな。
サイがコロコロされていらっしゃる。
それを俺がかばう事も想定済みだろう?
知ってる知ってる。
やればいいんでしょう?
「では囮は俺がやるので、サイさんは遊撃にまわってください」
「し、しかしドン様ではハーピーが近寄らないのではっ」
「魔石を全部外せばサイさんより弱くなるので大丈夫ですよ」
「レ……ドン、危険過ぎるのだっ!」
お前も危ねぇよ。
なんで合格出したんだよスンっ。
「範囲外から僕がよく見てるから大丈夫だよっ」
「うむ、ある程度引き付けたら我らも出るから安心したまえ」
「お前、なんだか好きになれないのだ!」
「…………」
あーあー、なんか「え、それ思ってても言っちゃうの!?」って感じの表情になっちゃった。
「ハティー、めっ!」
「でもなのだ!」
「すみませんね、まだまだ子供なんですよ」
「そ、そのようだね」
「何を言うのだ!
もう子作りは出来るのだ!」
ダメだこいつ。
「ハティー、帰りたくなかったら黙ってなさい」
「む、むぅうううっ!」
「すみませんね、身体は子供、中身は子供、そしてたまに大人なんですよ」
「中々面白い知り合いだね?」
「強いんですけどね」
「強いのだ!」
「しー!」
「むぅううっ!」
デュークはデュークで笑い堪えるのに必死だし、カエデとミノリは井戸端会議みたいなのしてるし。
まとまりが悪いチームである事はわかったわ。
「では現地まで向かおうか」
「「「はい!」」」
ダダンの南、ハティー兄がいた森の脇を通り、目撃情報のあった山脈地帯をやや東へ。
余談だが、あのまま南行ってたらオバルスとケミナがのほほんと話してるだろう。
「さて目撃情報があった場所までは間もなくだろうな」
「リュウリュウ様、あちらに少し開けた岩場がございますわ」
「あそこにドン様を放置すれば良いんじゃないの?」
カエデが少し怖い事を言ったが、まぁそれで正解だろうな。
「どうかねドン君?」
確かに魔物のにおいが少しするな。
「俺もあそこでいいと思います」
「おし、そんじゃあ食われてこいや!」
「食われないですってば」
「そん位なら俺でも殺せるぜ?
せいぜい背後に気をつけろよ」
「ソージ君も背後に気を付けてねっ」
「ち、近寄んじゃねーっ」
「ソージ殿、リュウリュウ様の作戦の弊害となります。
お静かにお願い致します」
「けっ!」
「むぅううう」
お前そんなに喋りたいのかよ。
「ドン様、ご武運を……」
「ありがとうございます、ミノリさん」
「気を付けてちょうだい」
「お二人も召喚獣の準備をお願いしますね」
「わかりました」
「わかったわ」
「ではドン君、100体程引き付けてくれたまえ」
「簡単に言いますねぇ」
「行ってらっしゃいっ」
「行ってきまーす」
はい、開けた岩石地帯の中央です。
ハーピー……この前は人を襲う危険な奴らだったからデュークがちょんぱしたが、出来れば倒したくない魔物だ。
普通のハーピーは話せないみたいだが、親玉が出てくればあるいは……。
とりあえず地面に魔物言語で文字を……。
《ハーピーさんへ。
こんな僕で良かったらお話しませんか?》
こんなとこだろう。
遠目でしかも地面に文字を書いてるならリュウリュウにはわからないだろう。
約30分経過……。
ん……においが濃くなったな?
数はわからんが、増えてる。
更に15分経過……。
来た。
……俺の時代では発見出来なかった、「ハーピークイーン」。
オーバートップレベルの……チャッピー曰く分からず屋。
バサッバサッ……トッ。
普通のハーピーは緑色の乳だし鳥人間。
下半身は茶色の体毛で覆われてる。
乳のサイズはまちまちで、まな板サイズからクイーンサイズまで。
そしてそのクイーンはC程のサイズで、肌の色が薄い青、髪は金髪で、瞳も金色。
髪型は……髪を全て後ろにもってってるな。
耳はエルフみたいにとんがってて、こいつだけ乳を灰色の布かなんかで隠してる。
大きさは……2メートルちょいってとこか。
羽を広げたら4メートルってとこかしら?
『初めまして』
『……娘達の言ってた事は本当だったようだな』
『あぁ、この文字の事ですか?』
『どこで誰に習った?』
『2000年前、チャッピーとマカオに……。
いや、空の支配者と騏驎にと言った方が正解ですかね』
ホントはチャッピーだけなんだけどね。
『あの馬鹿共が教えた……2000年前だと?』
『レウスといいます』
『…………』
『信じてくれなくても結構ですよ』
『あぁ、信じるつもりはない』
なるほど、厄介そうだな。
『して、我らの縄張りに何の用だ?』
『出来ればなんですが、人間を襲わないで欲しいとお願いしに来ました』
『最初に我等の縄張りを荒らしたのは人間だ。
ならば人間の縄張りを荒らし返すのは当然だろう?』
『そりゃごもっともで』
『……そこは同意するところではないだろう?』
『いえ、武力行使にはあまり賛同したくないですが、筋が通ってますからね』
『……なるほど、ただの人間ではないようだな』
『では、別のお願いがあります』
『図々しさもあるようだな。
お前、自分がお願い出来る立場にあると思っているのか?』
『いるからこそのお願いです』
『……なるほど伏兵か』
頭の回転もお早いようでいらっしゃる。
『神者ギルドの第3剣士リュウリュウ、利休とギャルオ……いや、冥王と闇王を体内に宿してる召喚士二人も待機しています。
俺は囮役なんですよ』
『ハッタリ……ではないみたいだな』
『あれ、信じてくれるんですか?』
『ヘル・デス殿とデュラハンの事をその名前で呼ぶ人間は限られている。
なるほど……はるか昔、魔人間親善大使を名乗ったのはお前か。
イモータル・セイント殿から話は聞いている』
『ギャルオは殿を付けないんすね』
『敬称という言葉がわかれば答えは出るだろう』
『納得です』
『しかし理解出来んな?』
『へ?』
『私を殺した方がそちらにとっては得ではないのか?』
『俺はわがままなんです』
『……ではそのわがままな願いとやらを言ってみろ』
『出来れば縄張りを移動していただけませんか?』
『この地は非常に豊かだ。
水もあり塩もあり緑もある。
それ相応の縄張りなぞ見つかるわけもない。
ましてここは人界……人の目を掻い潜っての縄張りだぞ?
無理だ』
『少し我慢して頂ければ良い場所を提供出来ると思うんです』
『ほぉ?』
『チャッピーに聞いた事があるんです。
ハーピーは肉も食うが草も食うと』
『だから両方のエサが揃うココを選んだのだ』
『ユグドラシルの木が生き返ると言ったらどうでしょう?』
『それこそ信じられん話だな』
『まぁ、結果で示しますよ』
『…………いつだ?』
『おそらく1週間以内』
『……1週間後、ユグドラシルの木を見に行く。
その時に結論を出そう』
『では?』
『あぁ、それまでは大人しく待ってやろう』
『ありがとうございます』
『しかし、もしそれが嘘だった場合』
『殺しますか?』
『いや、私の旦那になってもらう』
青いのはちょっと……。
『お前は中々美味そうだ』
『わー、食べられちゃう』
『ハーピーの旦那になった者は、最終的に文字通り食べられる。
殺すというのはあながち間違いではないな』
そーゆー結婚システムやめようぜ?
『全力を尽くします』
『あぁ、せいぜい全力を尽くせ』
『あ、帰る前に一発殴ってもらえます?』
『……そういう事か』
『話が早くて助かります』
バキッ……ゴゴンッ!
……痛いよママン
『面白い男だ……さらばっ!』
「まさかバレてしまうとはな」
「魔物が人間言語を喋れるとはビックリでした」
「ほぉ、珍しいな?
召喚獣も話せてるではないか?」
「あぁ、そういえばそうですね」
「はん、たまに抜けてんですよこいつは!」
「ところでそこの2人が、カエデさんとミノリさんの召喚獣ですか?」
「召喚獣は人じゃねーんだ。
なんだよ2人ってのは」
あ、やべ。
「あぁ、そうでした。
2体……いや2匹かな?」
「どちらでも構わぬよ」
「しかしこのインプみたいなの、本当に強いんですか?」
「ふふふ、そいつは私より強いぞ。
かつて冥王と呼ばれた魔王ギルドの序列2位だ」
「冥王ってあのヘル・デスですか!?」
「ん……」
よし、利休が起きそうだ。
けど、ここで起こしちゃまずいか?
カエデが体内に戻したら通心ケーブルでパクった方が良いかもしれん。
「そしてこいつが、かつて闇王と呼ばれたデュラハンだ」
「へぇ、なんかこっちの方が強そうですね」
「デュラハンは確かに強いが、ヘル・デス程ではないよ」
「へぇ、そうなんですね」
「はんっ、お前なんかより全然強ぇんだよ。
冥王なんかガディスさんと張り合うんだかんな」
「ソージ殿、ドン様は一度ガディス様に勝利しております」
「そーなのだ!」
「けっ、きっとあの日はガディスさんの糖が足りて無かったんだよ」
「おいお前!」
「なんだよ糞ガキ」
「あまりレウスを馬鹿にするな!
レウスが本気を出せばお前らなんかイチコロなのだ!」
……。
「……あっ、しまったのだ!」
さようなら第9剣士部隊。
お待たせしました。その11~12




