↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
47/54

第47話 戦争になってる?

竜骨砦の地下は、巨大な迷宮になっていた。


砦そのものは地上の軍事施設だが、地下には古い竜の骨を利用したダンジョンが広がっている。骨の柱。青白い魔力を放つ壁。遠くから響く、何かが歩く音。


「ここから先は、ゲームだと八十台向けだ」


クロウは短剣を構えた。


「つまり、これまでより強い敵がいる」


レオンが剣を抜く。


「そう。でも、経験値も高い。装備素材も手に入る」


「お前は本当に、それしか考えていないのか?」


「それ以外に、何かあるか?」


セリアは、骨の柱を見た。


「王国軍が、すぐ地上にいることは考えていますか?」


「地上にいるなら、地下までは来ないだろ」


「王国の重要拠点です。地下の存在を知っている可能性はあります」


「でも、入口は隠し通路だ。ゲームでも誰も知らなかった」


クロウは歩き出した。


最初の部屋には、骨でできた獣が五体いた。普通の獣よりも速く、攻撃を受けると骨片を飛ばしてくる。


「最初に中央の一体。倒れた後、周囲の骨片が爆発する」


クロウの指示に合わせ、レオンが中央の獣を引きつける。セリアは骨片の散らばる位置を読み、爆発の範囲を知らせた。


「左側が安全です。右の柱の裏は避けてください」


レオンが敵を左へ誘導する。クロウが首の骨を断ち、獣が崩れた。残った骨片が赤く光る。


「下がれ!」


爆発が起き、床に亀裂が走った。


その後も、クロウは罠を解除し、敵の配置を利用し、経験値の高い魔物だけを選んで倒していった。中ボスの前まで来ると、彼は道の端を指した。


「こっちは通らなくていい」


「何もないのか?」


「敵が多いだけ。あっちの隠し通路を使うと、中ボスを飛ばせる」


レオンが呆れた。


「せっかくのダンジョンなのに、戦わないのか?」


「経験値の効率が悪い敵と戦う必要はないだろ」


セリアは、クロウの言う「攻略」が、単に敵を倒すことではないと改めて理解した。倒さない方がよい敵。通らない方がよい道。仕掛けを利用して、戦う場所と時間を選ぶ。


それは、迷宮全体を一つの問題として見ている者の判断だった。


中層を抜け、最深部へ近づいた頃、地上から音が聞こえた。


鐘。怒鳴り声。複数の足音。


「王国軍が動いています」


セリアが立ち止まった。


「入口を見つけたのか?」


レオンが尋ねる。


「分かりません。ただ、地上の兵士が増えています」


「なら、急いだ方がいい」


クロウは最深部の扉を見た。


「この先に、八十用の素材がある」


「今、そこを優先するのか?」


「ここまで来たんだから、取って帰るだろ」


扉を開くと、巨大な竜骨が組み上がった広間が現れた。骨の中央には黒い魔力が集まり、四本脚の竜型魔物が姿を現す。


「ゲームでは、ここがボスだ」


「またボスか」


レオンが剣を構えた。


「攻撃の後に首を下げる。そこが弱点。骨を三本壊すと、胸が開く」


クロウの指示が飛ぶ。


竜骨獣が咆哮し、広間へ骨の槍を降らせた。レオンが走り、セリアが安全な場所を示す。クロウは敵の攻撃を誘導し、背後の骨柱へ当てた。


「一本目!」


柱が砕ける。


竜骨獣が振り返り、尻尾を薙いだ。レオンが跳び、クロウが腹の下を抜ける。セリアの魔法が足を縛り、レオンの剣が二本目の骨柱を断った。


敵の動きが鈍る。


「三本目は、俺が壊す。レオンは正面を頼む」


「分かった!」


クロウが柱へ走る。竜骨獣が口を開き、黒い炎が集まった。


「セリア、今!」


光の魔法が敵の口元を逸らし、炎が天井へ抜ける。クロウの刃が三本目の柱へ入った。


広間の魔力が崩れ、竜骨獣の胸が開いた。


「全員、核へ!」


三人の攻撃が黒い核へ集中する。竜骨獣が最後の力で暴れたが、セリアが動きを読み、レオンが足を止め、クロウが弱点へ攻撃を入れ続けた。


核が砕ける。


竜骨獣は崩れ、骨の広間に素材が散らばった。


「よし。欲しかった素材がある」


クロウは黒い竜骨片を拾い上げた。


「これで八十用の装備が作れる。いい感じだ」


レオンは、天井の向こうから聞こえる音に耳を澄ませた。


「地上が騒がしい」


クロウたちは入口へ戻った。


隠し通路を抜けて外へ出ると、竜骨砦の周辺には王国軍が増えていた。街道側には兵士が並び、その向こうには、レオンとセリアの勢力から来た護衛たちも集まっている。


誰も武器を下ろしていない。


「何これ」


クロウが言った。


「戦争になりかけています」


セリアが答えた。


「戦争?」


クロウは、本気で驚いた。


「俺たち、何かした?」


「……かなりした」


レオンが言った。


王国側から見れば、戦略資源を求め、高位魔物を繰り返し討伐し、臣従要求を拒否した勢力が、軍の封鎖線を迂回して王国北部の重要地点へ侵入したことになる。


その上、砦の地下で魔物を倒し、魔力の流れまで変えている。


完全に反乱勢力の行動だった。


「でも、俺たちは鉱石が欲しかっただけだろ」


「王国は、そうは考えていません」


「そんなつもりなかったんだけどな」


クロウは手に入れた竜骨片を袋へしまった。


「まあ、向こうから来るなら仕方ないか」


征服したいわけではない。王国と戦いたいわけでもない。


ただ、レオンやセリア、これまで関わってきた人々が攻撃されるなら、放置するつもりもなかった。


「早めに終わらせよう。レベル上げが止まるし」


「お前にとって、戦争はその扱いなのか?」


レオンが疲れた声で尋ねる。


「長引いたら困るだろ」


セリアは王国軍の向こうを見た。


「それについてだけは、私も同意します」


竜骨砦の前で、両者の視線がぶつかる。


クロウは、次に作る装備の性能を考えていた。


その背後で、地方勢力と王国の衝突が、避けられない段階へ進み始めていた。


遠くで、王国軍の角笛が鳴った。


レオンのもとへ、配下の護衛が駆け寄る。街道の南側にも兵が集まり始めているという。セリアへは、周辺の町から避難と物資の相談が届いていた。


「王国は、本気でこちらを排除するつもりです」


セリアが言った。


「なら、まずは話し合えばいいんじゃないか?」


「話し合いのために、これほどの兵を並べるでしょうか」


クロウは竜骨片を一度取り出し、光にかざした。黒い素材は、地下迷宮の魔力をまだわずかに帯びている。


「せっかく取ってきたんだから、装備を作りたいな」


「その前に、王国との問題を解決してください」


「分かってる。だから、早めに終わらせる」


三人は、竜骨砦の前に広がる王国軍を見た。


クロウにとっては、次の攻略へ進む前に発生した面倒なイベントだった。レオンとセリアにとっては、これまで守ってきた人々と、王国の軍事力が正面から向き合う瞬間だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。