↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
34/54

第34話 ゲームなら二十人いた

四門迷宮の最深部には、広大な円形の広間があった。


天井は見えない。周囲には、崩れかけた柱が二十本以上並んでいる。中央の床には巨大な紋章が描かれ、その上に黒い鎧をまとった巨人が立っていた。


巨人の身長は、レオンの三倍近い。両手には大剣を一本ずつ持ち、頭部には顔の代わりに青白い炎が燃えている。


「あれがボスか」


レオンがつぶやいた。


「そう。ゲームなら二十人くらいで戦う」


「二十人?」


「まあ、普通はな」


セリアはすぐに踵を返した。


「帰りませんか?」


「でも、三人用の攻略法があるぞ」


「なぜ最初にそれを言わないのですか」


クロウは広間を見渡した。


ゲームでは、二十人のプレイヤーが役割分担をして戦うボスだった。正面で耐える盾役。攻撃を担当する者。回復役。装置を操作する者。一定時間ごとに移動し、分散し、また集まる。


正面から戦えば、三人では足りない。


だが、周囲の柱とボスの攻撃を利用すれば話は変わる。


「まず、あいつの攻撃で封印柱を壊させる」


「自分で壊すのではなく?」


「ボスが壊した方が早い。柱が減ると、胸の防御が下がる」


「それは、かなり危険ではないか?」


「危険だ。だから順番に動く」


クロウは二人へ指示を出した。


「レオンは俺と一緒にボスを誘導する。セリアは柱の魔力を確認して、壊される順番を教えてくれ。安全地帯は、あの青い線の内側」


「分かりました」


「それから、ボスが両手を上げたら絶対に中央へ来るな。広範囲攻撃だ」


レオンが剣を構える。


「失敗したら?」


「その時は逃げる」


「逃げられるのか?」


「入口までは戻れる。たぶん」


「最後だけ不安だな」


巨人の青白い炎が揺れた。


戦闘が始まる。


最初の一撃は、クロウが誘った。巨人の大剣が床を叩き、衝撃波が広間を走る。クロウは青い線の内側へ逃げ、レオンが巨人の横を通り抜けた。


「こっちだ!」


レオンが声を上げる。


巨人が振り向き、大剣を横へ薙いだ。狙いはレオンだが、剣の軌道の先には封印柱がある。


「そのまま!」


クロウが叫ぶ。


大剣が柱へ命中した。石柱が大きく揺れ、内部の光がひび割れる。


「一番目、破損しました。次は右から二本目!」


セリアが叫ぶ。


クロウはボスの足元へ魔法を放った。巨人がよろめき、続けて右腕を振り上げる。レオンが走り、二本目の柱の前へ立つ。


「レオン、三歩だけ下がれ!」


大剣が振り下ろされた。


レオンが避け、剣が柱を砕いた。


巨人の胸の装甲がわずかに開く。内部に黒い核が見えた。


「今は攻撃しない。まだ早い」


クロウはすぐに止めた。


「核が見えたのに?」


「装甲が開く時間は短い。次の柱を壊してからだ」


ゲームなら、ここで攻撃役が一斉に核へ攻撃を入れる。しかし三人しかいない今、無理に欲張れば反撃を受ける。


クロウは、ゲームでの最速攻略よりも安全を選んだ。


巨人が両手を上げる。


「中央から離れろ!」


三人が青い線の内側へ散った。直後、広間全体へ黒い炎が降り注ぐ。柱の影が次々と燃え上がり、床に描かれた紋章が赤く染まった。


セリアが周囲を確認する。


「安全地帯が変わります! 次は北側です!」


「レオン、北へ!」


レオンが走る。クロウが後ろから追い、セリアが支援魔法を重ねる。


安全地帯を移動しながら、巨人の攻撃を柱へ誘導する。柱が一本ずつ崩れるたび、巨人の動きが鈍くなった。


だが、残り四本になったところで、巨人の鎧が赤く染まった。


「暴走状態です!」


「分かってる」


巨人の攻撃速度が上がる。大剣が床をえぐり、飛び散った石が壁へ突き刺さった。レオンが一撃を受け流したが、腕が大きく弾かれる。


「レオン、十秒だけ持たせて!」


「十秒だな!」


クロウは残った柱を見た。暴走中に柱を壊すと、ボスの攻撃範囲が広がる。だが、すべての柱が崩れれば、核の防御は完全に消える。


ゲームでは、ここを二十人で一気に押し切る。


今は三人だ。


クロウは自分の魔力を高め、巨人の足元へ走った。レオンが大剣を受け、セリアが敵の次の動きを読む。


「左腕が上がります!」


クロウが右へ飛ぶ。大剣が空を切り、残った柱へ食い込んだ。


「あと一本!」


セリアが叫ぶ。


レオンが巨人の正面へ出た。


「クロウ、今だ!」


巨人の視線がレオンへ向いた。クロウは背後から最後の柱へ魔力を叩き込む。


柱が砕けた。


広間のすべての明かりが消える。巨人の胸が開き、黒い核が露出した。


「三人で行く!」


クロウが叫ぶ。


レオンが正面から斬り込み、巨人の腕を止める。セリアが二人へ最大の支援魔法をかけた。クロウは核へ刃を突き立てる。


黒い核に、細いひびが入った。


巨人が最後の咆哮を上げる。


「もう一度!」


レオンの剣が核へ届く。セリアの魔力が周囲の攻撃を押し返し、クロウが短剣をさらに深く突き入れた。


核が砕けた。


巨人は崩れ、広間を覆っていた魔力が一気に消えていく。


クロウは大きく息を吐いた。


「やっぱりレイドは楽しいな」


「これを楽しいと言えるお前が分からん」


レオンが剣を下ろした。


セリアは周囲を見た。迷宮の魔力が収まり、外から聞こえていた魔物の気配も減っている。最深部へ続く扉の向こうに、地上へ抜ける旧街道がある。


「迷宮の魔力が、周囲の魔物を引き寄せていたようです」


「じゃあ、攻略したから減るな」


「はい。これで、長く閉鎖されていた街道も使えるかもしれません」


クロウは床へ落ちた戦利品を拾った。


「この素材、五十台後半の装備に使える。いいものが手に入ったな」


セリアは地図を見て、頭を抱えた。


迷宮の魔物が減った。旧街道が開いた。これまで分断されていた二つの地域が、直接つながる。商人が動き、人が増え、レオンとセリアの管理すべき範囲は、さらに広がるだろう。


クロウはそんなことを気にせず、手に入れた素材の性能を確認していた。


「これで、次の装備が作れるな」


攻略は成功した。


そして、三人の知らないところで、二つの地方を隔てていた道が、再び開き始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。