カラ「ヒロヨシ」
「なあカラちゃん、どっか遊びにでもいこうよ、僕良い場所見つけたんだ、見晴らしがよくて花がたくさん咲いている場所、カラちゃんも一緒に行こう、なあ!」
少年がカラの仕事を手伝うようになってから一週間がたっていた。
少年がカラに約束した事は本当の事であり、現に少年がカラの仕事を毎日キチンと手伝い、それも手抜きなど一切せず、カラに対しての悪愚痴など一切言わずに、献身的にカラにつくしたのであった。
「…うん」
そんな調子の少年に、カラはなんだか心が澄み渡ってきたようにうなずく、前まではこの少年の事を信用できずにいたカラであったが、一週間ものこの少年による絶え間ない努力はカラの心を開かせるのに十分であった。
もともとカラの性格は例のパンツの所為か、明るく可愛いい少女であり、暗く、そこまで他人を拒絶する様な性格でなかったのも一因なのではないかと思える。
そんな性格の彼女にとってこの誘いは断る要素が一つもなかった物であった。
「あっ…ありがとう、じゃあさっそく仕事が終わったら一緒に行こうぜ」
少年がハキハキとした嬉しそうな顔でカラにそう言う。
「うん、楽しみ」
カラもまたそう言い、また話をしようともったのか、少年の顔をもう一度見つめた。
「…どうしたの?」
しかし、少年の顔は先ほどまであったはずの嬉しそうな顔はまるで煙のように突然消えていたのであった。
「ごめんカラあいつ等が来る、すまん」
そういって少年はカラに精いっぱいの謝罪の言葉を述べながらも、即座に走って逃げだした。
「…」
もちろんカラも彼を止める気にはならなかった、カラもまた、遠くから聞こえてくる複数人の足音を察知したからである。
そして、これから受けるにはすでに慣れており、それにもし彼が自分の傍にいたら、どのような事になるのか、カラにでも想像に難しくないからであった。
「やほォォオオ、ゴブリンじゃねえか」
「青ゴブリンが現れたぞ!!」
少年の姿が見えなくなった瞬間、突然わっと、まるであまいお菓子に群がる蟻のように、ニヤニヤ顔のいじめっ子の連中の姿が見えて来たのであった。
「青ゴブリンをやっつけろお!!」
わあわあわあと、10人程のいじめっ子の連中はカラを取り囲み、カラを執拗に殴り始めたのであった。
もちろん手加減なし、もちろんそんな事をされればひ弱な少女であるカラの体など、あっと言う間に体中傷だらけになり、鼻からは血がタラタラと流れ始めだした。
「あっそう言えば今日あの人たちがやってくる日じゃなかったけ?」
「あの人たち?ああ!…ええ?あの人たちがやってくるの?」
「あの僕達にお菓子を配ってくる人たち?」
「本当?じゃあ早く行こうぜ、もうこいつにも飽きて来たしよ」
「おう行こうぜ行こうぜ」
突然思い出したかのようにある事を思い出すと、まるで何もなかったかのように殴っていたカラを突き飛ばして、すぐさまあの人が来るとおもわしき場所に小走りで走って行った。
突き飛ばした拍子でカラは頭を撃って頭から血を流し始めたが、彼らにとってその現象はアリでも踏みつぶしてしまった感覚でしかなかった。
「…」
カラは目を伏せ、そっと血が流れ出ている頭へと右手を置いた、右手が血にぬれる、しかしカラはそんな事なれっこであり、そのまま泣き崩れるのでなく、すぐさま立ちあがったのであった。
「ねえ、大丈夫カラ?」
ふとカラは気がつくと、すぐ傍にいままで物陰に隠れていた少年が心配そうな目で自分を見ている事に気が付いた、どうやら頭をうった拍子で少年の存在に気づけなかったようである。
「ごめん…カラ本当にごめん、僕がひ弱だからいけないんだ、こんなんだから、僕は…君がこんな目に会うのを分かってて逃げちゃうんだ、本当ごめんよ、ごめんよカラ」
悔しそうにその言葉をはきながら、少年は遂に耐えきれなくなったのか、嗚咽を流し始めた、あのいじめっ子の連中にされるがままで、なにも出来ない自分にくやしく、そして憤りを感じたのであろう。
「…別にいいよ」
カラは少年が目を擦っている腕を止める。
「貴方は悪くなんてない、悪いのはあの人たち、貴方が自分を責めるのは癪に合わないわ、それよりも、貴方のお気に入りの場所に連れて言って、そこで一杯色んな事喋ろう、あいつ等の愚痴でも言おう」
「…」
少年は涙でかすむ目を擦りながら、カラの言葉にうなずいた。
最近此処一週間、俺が見るに、カラの身に今までなかった事がらが確認できた。
まあ…一言で言うのであれば、カラの身にようやく友達ができたと言う事だ、しかも男の子だ、ボーイフレンドじゃないか、うんうんよかった本当に良かった、カラに友達ができて本当に良かった。
さて、さっそくカラの頭に先ほどできた傷を直さなくては、もっともあんまりに早く直すと少年のカラに対する印象が悪化しそうだから緩めにしとこ、カラにはすまんがな…
それにしても俺最近空気だよな、俺よりもなんだか少年の方がキャラたってるし、カラに貢献してるし、ぶっちゃけ俺いらなくね?
いや…そんなこともないか、ないよな?
まあそれはとりあえず置いておいて、この少年の名前を考えてみようか、こうやって接してくる以上味方である上、それも長い付き合いになりそうだしそんな少年を、いつまでも少年少年って言ってちゃあ人間的にだめだしさ、名前で言わなくちゃ。…パンツとか言わない。デジャブとか言わない。
そうだな…廣義なんてどうだ?
かっこいいし、助けてくれたこの少年にぴったりだ。
仲間の軍オタが言ってた零戦のエースパイロットの名前だっけ?他の人たちの名前もおぼえてたけどうる覚えだな、この廣義さんっていう人の苗字忘れたし、だけどなんかこんな忘れ方普通しないよな、パンツだからか?
まあそれはともかく、どうしてこんな名前にしたかと言うと、単に思いつかなかったことと、もしかしたらこうやって大日本帝国に関連する名前を付けることで、俺をこの世界に転生させた祖父に対する謝意的な物になれるかな?って感じだ、こう息子は立派に国を愛しているっていうって感じになって、チートもらえるとかそんなん…
それはないか。
「ねえ」
カラは少年からもらったこの世界特有の包帯モドキを頭に巻きつけながら、横を歩く少年に言う。
「え…どうしたの?」
少年はいままでカラから話し変えて来た事はあまりなかったため、ちょっと驚きながらもカラに言った。
「あなたに…仇名つけちゃっていいかな」
カラはなんだか恥ずかしいそうに言った。
「…」
少年はちょっと驚いた様な顔をしたあと、すぐに体勢を立て直して言い返した。
「なんだよ突然」
「なんだか頭にふっとわいてきたというか、そんな衝動にかかれたたとか、そんな感じ、ねえ…つけていいかな」
カラは少年の顔をじっと見ながらそう言う。
「あぁ…別に良いけど、といって相手を侮辱するのはダメだよ」
少年はぼそぼそとカラにそう言う、彼には別にそのカラの提案に断る理由なんてなく、むしろこれによってもっとカラと仲良くなれるかもしれないと踏んだからこそ、この言葉が出たのかもしれない。
「そう!ありがとう…えっと貴方の仇名はね」
「うん」
「ヒロヨシ」




