王国祭4 (十種競技)デカスロンがまともに進むわけがない♡
**王国祭・第4競技**
『第1回・王国公式デカスロン(十種競技)大会』
雪合戦と福笑い、サイバー魔王ショー(ルシファーは魔導によって元の姿に戻され「もう俺を巻き込むな!」と涙目で転送されて帰っていった)で会場が半ば焼け野原と化した後、森羅万象が優雅に指を鳴らした。
「整えましたわ♡ 安全な競技場ですわ」
一瞬で競技場が広大な陸上トラックとフィールドに生まれ変わる。ただし、地面には薄く油が塗られ、スタート地点付近には怪しげな導火線が這っていた。愛の整備だ。
特等席の国王が目を輝かせる。机から顔を上げる。
「おおっ! ついに健全なスポーツ大会だな! 余は国王として、正々堂々たる競技を心待ちにしておるぞ! 普通の陸上だ!」
その言葉を、監視のカメラが全世界に配信し、潜入が冷静にアナウンスを始める。声が淡々だ。
「それでは、王国祭第4競技『デカスロン』を開催いたします。参加者は主人公様、十人の特化部隊、魔導師隊、白兵戦部隊、偵察部隊、そして特別枠の勇者様とゲイバーのお兄さんです。
なお、各競技の得点は上位3位までとし、1位10点・2位7点・3位5点を加算します。総合得点で最終順位を決定いたします。記録します」
嫉妬が解説席で両手を合わせて満面の笑みを浮かべた。目が太陽のようだ。
「みなさまーっ! 今回はみんなの得意分野が活きる十種競技ですわよ! 主人公さんも頑張って! みんなも頑張って! どっちが勝っても素敵ですわーっ! 私、もう胸が熱いです!! 両方応援しますわ♡」
主人公の顔が青ざめる。額を押さえる。
「……なんで俺が強制参加なんだよ。普通に飯食って寝たいだけなのに。俺の平和はどこだ」
お兄さんが塩おにぎりの袋を片手に、ため息をついた。毒舌が準備される。
「……巻き込まれた。またか。お前ら、普通のスポーツのやり方忘れてんじゃねえか? 俺の店、開けねえだろ」
勇者は腕を組んで鼻を鳴らす。自信満々だ。
「フン、この程度の競技、俺がトップを取ってみせるさ。英雄の実力を思い知れ」
潜入がマイクに口を寄せ、淡々と補足する。
「……念のため申し上げますが、今回のルールは『できるだけ普通に』とのことです。が、過去の例からしてその保証はできません。すでに経路封鎖の準備は完了しています」
---
**第1種目:100m走**
潜入のアナウンスが響く。声が冷静だ。
「ルール追加です。スタートから2秒後、スタートラインに火が放たれます。競技場は油塗りですので、立ち止まると燃え上がります。ご注意を。愛の炎ですわ」
「はあ!? 普通の100m走だろ! 火つけるな!」と主人公が叫ぶ間もなく、ピストルが鳴った。
格闘特化が音速の正拳を応用した加速で飛び出し、「うおおおっ! 俺の勝ちだァ!!」と叫びながら先頭を走る。主人公の身勝手の極意がわずかに遅れる。2秒後、背後で炎が爆発。油の上を皆が必死に駆けた。炎が追う。
何人かの白兵戦部隊と偵察部隊の兵士が炎に追いつかれ、火傷を負って転倒する。
「うぐっ……熱いっ! 師匠、助けて!」
そこへ慈愛のヤンデレが聖母のような笑顔で駆けつける。手が優しい。
「大丈夫ですわ♡ 《フルヒール》しますね。痛くないように、丁寧に。愛を込めて回復しますわ」
柔らかな光が傷を修復し、兵士たちは即座に完治した。再開ボタンだ。
「あ、ありがとうございます、師匠……! また走れます!」
兵士たちが頭を下げる中、主人公がトラックの上から遠くを見て呟く。息が切れる。
「……いや、マッチポンプだろ。火放ったのそっち側だろ。回復してまた走らせるな。俺の『普通』を燃やつな」
嫉妬が解説席で目を潤ませながら叫ぶ。マイクを握りしめる。
「慈愛さんの優しさ……! そして兵士さんたちの感謝……! 最高のシーンですわーっ! 主人公さんのツッコミも愛があります! 両方素敵!」
潜入が静かに続ける。
「……怪我人は全員回復済み。競技は続行可能です。1位は格闘特化(10点)、2位主人公(7点)、3位勇者(5点)。記録完了です」
格闘特化が胸を突き出す。熱血が爆発する。
「おれの勝ちだァ!! 音速の正拳、完璧だぜ! うおおおっ!」
お兄さんは「普通に走りたくねえ……。炎の中で塩おにぎり食えるかよ」とぼやきながら中位。魔導師隊は炎に追われて転び、白兵戦部隊は気合だけで中団を維持した。「魂で走れェェェ!!」と叫びながら。
---
**第2種目:走り幅跳び**
腰振りスペシャリストが助走をつけて、後ろ向きに構えた。腰がすでに危険だ。
「後ろ向き衝撃波推進だァァァ!! これで大会新記録を狙うぜ☆ 完璧や! 国滅級で飛ぶぞ!」
ドゴォォォン!!
衝撃波が自身を後方から強烈に押し出し、砂場を通り越して競技場の外へ、さらに遠方の空へと飛んでいく。制御が効いていない。
「……行きすぎた。ちょっと腰が入りすぎたぜ」
記録は「計測不能・行方不明」。愛の飛びすぎだ。
森羅万象が再び指を鳴らす。紅茶を傾ける。
「整えましたわ♡ ……少し、やりすぎですわね。安全な空域に戻しますわ」
嫉妬が手を叩いて喜ぶ。目がハートだ。
「腰振りさんのチャレンジ精神、素晴らしいですわーっ! どこかに飛んでいっても、きっと無事です! 応援してます! 両方応援!」
潜入が淡々と。
「……現在、腰振りスペシャリストの位置を衛星で追跡中です。競技場から約12キロ北東。得点なし。先回りして回収経路を確保します」
---
**第3種目:砲丸投げ**
拷問特化が国防新素材製の超重量鉄球を前に、腕を組んで唸った。短く、実務的だ。
「……いい出来だが、重すぎる。持ち上がらん。いい出来すぎた」
一般兵が三人でかり出されても動かず、結局「記録なし」で終了。愛の重さだ。
そこに、先ほどの飛距離から奇跡的に戻ってきた腰振りが現れる。腰がまだ揺れている。
「砲丸未使用はもったいないぜ☆ 俺の衝撃波で飛ばす! 完璧や!」
ドゴォォォン!!
衝撃波が鉄球を打ち上げ、遠方の山を一つ丸ごと吹き飛ばした。山が消える。
拷問特化が満足げに頷く。目が細くなる。
「……役に立ってよかった。いい出来だったな。愛の鉄球だ」
嫉妬が解説を入れる。手を合わせる。
「無駄にしない精神……! 腰振りさんと拷問さんの息もぴったりですわ! 山がなくなってしまいましたが、素敵な連携です!! 応援してました!」
潜入が。
「……山の消滅を確認。森羅万象さん、修復をお願いします。得点なし。記録します」
「整えましたわ♡ 山を戻しましたわ。次は控えてくださいましね」
---
**第4種目:高跳び**
森羅万象が紅茶を啜りながら、退屈そうに視線を泳がせる。優雅に飽きた。
「……会場設備、少し飽きてきましたわ。整えすぎましたわね」
パチン。
空間が歪み、適当に選ばれた偵察部隊の兵士一人が、記録を大幅に更新して1位にされてしまう。本人は「えっ、おれが? 飛んでないのに?」と困惑していた。愛の強制1位だ。
嫉妬が優しくフォローする。マイクを向ける。
「兵士さん、おめでとうございます! 運命の跳躍でしたわね! みんなの可能性を感じます!! 素敵!」
潜入が。
「……1位・偵察部隊兵士(10点)。他、計測不能。空間改変を記録します」
主人公が遠くから叫ぶ。
「空間で飛ばすな! 普通に跳べ! 俺の『普通』を空間ごと消すな!」
---
**第5種目:やり投げ**
魔導が優雅に手を振る。扇子を閉じ、こざかしさが光る。
「魔法槍、生成しますわ♡ チャオ♡ 愛を込めて、完璧に飛ばしますわ」
生み出された槍が光を纏って飛び、競技場のゴールポストを貫通、さらに遠方の山を削った。競技として完全に成立せず、森羅がため息混じりに修復する。
「整えましたわ♡ 魔導、少し控えてくださいましね。やりすぎですわ」
魔導は扇子で口元を隠し、うっとりと微笑む。意地悪さが優雅だ。
「あら、控えませんわ。主人公様の記録を更新して差し上げただけですもの♡ わたくしの愛が、一番遠くまで届きましたわね」
潜入が冷静に。
「……やり投げの記録は『山脈改変』として処理します。得点なし。魔導さんの愛の飛距離を記録します」
主人公が叫ぶ。
「槍で山削るな! 普通のやり投げだろ! 俺の平和を山ごと飛ばすな!」
---
**第6種目:400m走**
ここから本格的に殺意(愛)が芽生える。
薬学がこざかしく微笑み、瓶を複数抱える。狡さが滲む。
「あの二人の脚力には勝てませんわ……最初に潰しましょう♡ データ上、脚を緩めればいいだけですもの。愛の弛緩ですわ。負担を軽減して差し上げますね」
スタート直後、科学が無効化フィールドの小型版を投下し、薬学が足に効く弛緩剤入りの煙を散布。煙が甘い匂いを放つ。監視が精密誘導で「転びやすいポイント」を実況し、潜入が経路を先回りして障害物を設置。魔導師隊が炎と氷の壁を生成し、白兵戦部隊が人間バリケードを組む。「うおおおっ! 止めるぜェェェ!!」と叫びながら。偵察部隊は罠を次々と起動させた。
主人公は身勝手の極意と四身の拳を駆使してすべての攻撃をかわし、逃げ切って1位。「俺の平和を守れ! 普通に走らせろ!」と叫びながら。格闘特化が執念で2位。「おれも負けねえェェェ!!」
そして3位に、姿を消す魔法で攻撃に一切参加せず、ゴール直前でふわっと現れた魔導が着いた。扇子を優雅に開く。
「ふふっ……お付き合いいただき、ありがとうございましたわ♡ チャオ♡ わたくしは最初から、愛のタイミングを計っていただけですもの」
主人公が叫ぶ。息が切れる。
「お前だけちゃっかりしてるだろ!! 最初から隠れてたろ! 卑怯者!」
魔導はこざかしく微笑む。意地悪さが愛に包まれる。
「ルールに『隠れてはいけない』とは書いてありませんでしたもの♡ ご主人様の奮闘、美しかったですわ。愛を感じましたわ」
嫉妬が両手を合わせる。目が潤む。
「魔導さんの知恵……! 主人公さんの回避能力……! どちらも素晴らしいですわーっ! 両方応援してました!」
潜入が。
「1位・主人公(10点)、2位・格闘特化(7点)、3位・魔導(5点)。ちゃっかりポイントを記録します」
---
**第7種目:ハードル**
格闘特化がハードルを蹴り壊しながら独走するかと思いきや、「うおおおっ! 壊しながら行くぜェェェ!!」と叫びつつ、科学が「軽量化スーツ+推進ブースター」を密かに装着。接戦の末、ほぼ同時ゴール。計測の結果、科学が0.01秒差で勝利。
「データ上、私の勝ちですわ♡ 数値的に見て、完璧です。愛の計算ですわ」
嫉妬が。
「科学さんの努力と工夫! 格闘さんの豪快さ! どちらも応援してしまいます!! 素敵!」
潜入が。
「1位・科学(10点)、2位・格闘特化(7点)、3位・主人公(5点)。0.01秒の差を記録します」
主人公がぼやく。
「0.01秒って何だよ。普通に計測しろ。俺の『普通』を小数点で弄ぶな」
---
**第8種目:円盤投げ**
拷問・格闘・腰振りが力自慢で有利かと思われたが、魔導が「加速魔法」、科学が「磁気誘導ディスク」、薬学が「一時的筋力増強剤」を投入。薬学がこざかしく瓶を振る。
「筋力、少しだけ上げて差し上げますわ♡ 負担は後で回収しますね。愛の増強ですわ。データが取れますもの」
記録が桁違いに伸び、フィールドが再び半壊した。愛の破壊だ。
潜入が。
「計測不能のため、上位3名に暫定点を配分します。破壊規模を記録します」
お兄さんが遠くから叫ぶ。
「フィールド壊すな! 俺の店の売上に影響するだろ! 普通に投げろ!」
---
**第9種目:棒高跳び**
さすがに棒一本の純粋競技。格闘特化と主人公の独壇場となり、両者とも会場の屋根を超えそうな高さで競い合う。「うおおおっ! もっと高くェェェ!!」と格闘が叫び、主人公が「普通に跳べばいいんだよ!」と返しながら。最終的に主人公がわずかに上回った。
嫉妬が涙ぐむ。マイクを震わせる。
「二人だけの世界……! 純粋な勝負、感動ですわ……! 両方素敵! 応援してました!」
潜入が。
「1位・主人公(10点)、2位・格闘特化(7点)、3位なし。純粋ポイントを記録します」
---
**第10種目:1500m走**
最終種目。ルールは「攻撃何でもあり」。愛の解禁だ。
スタートと同時に、十人+部隊全員が主人公を標的に狩りを開始する。
科学は冷静に現状の総合得点を頭の中で計算していた。数字が回る。
(……このままでは私の総合優勝は不可能。データ上、主人公と格闘が上位を独占する確率は92%。ならば――愛のデータ改ざんも、勝利のためなら)
科学が真っ先に複数の誘導ミサイルを斉射。精密誘導で拷問特化を直撃させ、彼を場外へ吹き飛ばした。
「データ上、脅威排除完了ですわ♡ 数値的に見て、最適です」
拷問特化が飛んでいきながら短く呟く。「……いい出来のミサイルだったな」
薬学はコース各所に強化薬・弛緩薬・幻覚薬のトラップを仕掛けるのに夢中になりすぎていた。瓶を並べながら、こざかしく微笑む。狡さが全開だ。
(ふふっ……主人公様の足を緩めれば、みんなが追いつけますわ。負担を軽減して、愛を深く刻みますね。データがたくさん取れますもの♡ 少しだけ意地悪ですけれど、愛ですわ)
後ろから近づく気配に気づかず、次のトラップを調整しているところを格闘特化の手刀で後頭部を打たれ、その場で気絶。失格となる。
「うおおおっ! 邪魔だァ!!」と格闘特化が短く呟く。熱血が勝つ。
腰振りが大きく腰を回し、無差別衝撃波を放つ。「完璧や! みんなまとめて飛ばすぜ☆」完全にとばっちりで、お兄さんが「おれ関係ねえだろ!! 塩おにぎり落としたじゃねえか! 普通に走れ!」と叫びながらホームラン、勇者も「なぜ俺が!! 英雄を巻き込むな!」と飛び、魔導すら「あら、優雅に飛ばされますわね」と優雅に場外へ運ばれていく。
残った格闘特化が主人公の前に立ちはだかり、拳を構えて煽る。熱血が爆発する。
「おい、お前とタイマンだ! 今ここで勝敗をつけようぜ!! うおおおっ! 正拳で決めろ!」
なぜかそこで二人は走りを忘れ、激しい殴り合いを始めてしまった。「俺の平和を拳で守る!」「おれの勝ちだァ!!」と叫び合いながら。
実況席で嫉妬がマイクを握りしめ、珍しく一喝する。
(ああ、二人とも熱くなって……でもそれがいいんです! でもルールはルール……! 愛の熱さですわ!)
「バトルしてないで走りなさい!! ここは1500m走ですわよ!? 二人ともコースに戻ってくださいましーっ!! 両方応援してるから走って!」
潜入が隣で静かに付け加える。
(……予想通りの展開。私闘が発生する確率は87%でした。減点を記録します。先回り済みです)
「……規則上、競技中の私闘は減点対象です。早く走ってください。愛の減点ですわ」
二人は慌てて走り出す。「走りながら殴るぜェェェ!」「普通に走れよ!」腰振りも復帰して加わった。「俺も混ぜろ☆」
しかし腰振りは他の二人より足が遅い。このままでは負けると判断し、後ろ向きになって衝撃波で自身にブーストをかける。腰が危険だ。
「後ろ向き推進ブーストだァァァ☆ 完璧や! 国滅級で追い抜くぞ!」
勢いがつきすぎて曲がり切れず、会場の外壁に激突。失格。
「……やりすぎた。腰が入りすぎたぜ」
主人公と格闘特化が熱戦を繰り広げ、ゴール手前で必死に抜きつ抜かれつしているその瞬間——
場外に飛ばされていたはずの魔導が、ふわりと空間を歪ませてゴールラインの直前にワープして現れた。扇子を優雅に開く。
「ふふっ……お先に失礼いたしますわね♡ チャオ♡ わたくしは最初から、愛のワープタイミングを計っていただけですもの。ルールに『ワープ禁止』とは書いてありませんでしたわ」
そのまま悠々とゴールを駆け抜け、1位となる。意地悪さが、愛に包まれて輝く。
主人公「えええええええ!! 今のワープだろ!? 卑怯すぎるだろ!! 普通に走れ!」
格闘特化「おれたちが必死に殴り合ってる間にちゃっかりトップ取るなァァァ!! うおおおっ! やり直しだ!」
魔導は優雅に一礼する。微笑みが深い。
「ルールに『ワープ禁止』とは書いてありませんでしたもの♡ お付き合いいただき、ありがとうございましたわ。ご主人様の熱戦、美しかったですわ。愛を感じましたわ。夜はしっかりと『特別クールダウン』をご用意しておりますのよ」
科学はゴール直後、手元の端末を操作した。数字が点滅する。
(……総合得点を書き換えれば、まだ間に合う。私の勝利データを上書きします。愛のデータなら、許されますわ)
しかし潜入が即座にそれを察知し、マイクに向かって淡々と指摘する。
(……データ改ざんを検知。改変ログが残っています。先回りしていました)
「科学特化、得点データの不正改ざんを確認しました。反則行為により失格です。記録します」
科学が小さく舌打ちをする。冷静さが揺れる。
「……計算外でしたわ。残念です。次はもっと精密に愛を計算しますわ」
嫉妬が実況を続ける。マイクを震わせる。
(魔導さんのちゃっかり具合……! 主人公さんと格闘さんの熱戦も素敵でしたが、知恵の勝利ですわね! 胸が熱いです! 両方応援してよかった!)
「みなさまーっ! 魔導さんが見事1位でゴールですわーっ! 素晴らしい判断力! 主人公さんと格闘さんも最後まで熱く競い合いました! 薬学さんは残念でしたが、トラップへの情熱は立派でした! 科学さんは……次に期待ですわね!! みんな素敵!」
潜入が淡々と補足する。
(……薬学の失格タイミングは最適でした。科学の改ざんも迅速に処理できました。魔導のワープは規則上問題なしです。結果として競技が早期に収束したのは幸運です。すべて記録済みです)
「……総合得点により、最終順位は1位・魔導、2位・主人公、3位・格闘特化です。愛の順位ですわ」
開始からわずか5分で競技場は再び半壊。国王が机に突っ伏す。白目が少し見える。
「健全なスポーツ大会になるはずでは……余は国王だぞ……。普通の陸上がしたかっただけじゃ……」
監視の配信コメントは爆発し、嫉妬がマイクに向かって叫ぶ。
(みんなの頑張りが画面越しにも伝わっています……! 私、この瞬間が大好きです! 愛が溢れてますわ!)
「みなさまーっ! 最高のデカスロンでしたわ! みんなよく頑張りました! 主人公さんもお疲れさまですわーっ! 腰振りさんのチャレンジも、科学さんの戦略も、格闘さんの熱血も、薬学さんのトラップ愛も、全部大好きです!! 両方応援してました!」
潜入が最後に淡々と締める。
(……次も同じパターンになる確率は高い。記録は残します。先回りして準備します)
「……会場の修復は森羅万象さんに一任します。次回の競技まで、しばらくお待ちください。整えをお願いします」
ステージ袖で魔導が扇子を閉じ、ニヤリと笑う。こざかしさが、夜を予告する。
「ふふっ……良い汗をかかれましたわね、ご主人様♡ 夜はしっかりと『特別クールダウン』をご用意しておりますのよ。わたくしの愛で、しっかりと整えて差し上げますわ。チャオ♡」
主人公が遠い目をする。肩が落ちる。
「……またか。普通の陸上競技がしたかっただけなのに。ていうか今のワープ絶対ずるいだろ。俺の平和をワープで奪うな」
お兄さんが塩おにぎりを差し出しながら呟いた(場外から徒歩で戻ってきた)。毒舌が締める。
「……まあ、光ってないだけマシだろ。帰れ。店開けねえと。お前ら、普通のスポーツのルールブック、一回読め。俺の塩おにぎり、炎と衝撃波で味が変わったじゃねえか」
こうして王国祭第4競技は、いつものように「逃げ失敗→夜のお持ち帰り」の予兆と共に幕を閉じるのだった。
(……次こそ、普通の競技にしてくれ。頼む。愛はわかった。普通が欲しい)
誰も、普通には答えなかった。
ただ、優しい微笑みと、こざかしい扇子の音、そして熱血の「うおおおっ!」だけが、静かに彼を囲んでいく。




