王国祭2 福笑い大会――完璧な顔を作るヤンデレたち♡
**王国祭・福笑い編**
雪合戦の熱狂が落ち着いた翌日。
王国祭の第2競技は、至って普通の「福笑い」だった。
顔の輪郭が描かれた大きな紙に、目隠しをした状態で目・鼻・口・眉などのパーツを置いていく。位置がずれて変な顔になるのをみんなで笑って楽しむ、古典的な正月遊びである。ただし顔は主人公の顔である。
「まあいいさ。普通の遊びなら歓迎だ。壊すなよ、壊すなよ」
主人公は半ばあきらめた様子で言った。腕を組む。鋼の精神が、すでに「普通」を疑っている。
審査員はヤンデレ10人と主人公。
各自が、各チームの作品をそれぞれ10点満点で採点する。
参加チームは国王軍の6部隊に、特殊枠のゲイバーのお兄さんを加えた全7チーム。
- 魔導師隊チーム
- 衛生兵チーム
- 工兵隊チーム
- 白兵戦部隊チーム
- 盾兵チーム
- 偵察部隊チーム
- ゲイバーのお兄さん(特殊枠)
会場中央に大きな展示台が用意され、観客席はすでに埋め尽くされていた。
嫉妬のヤンデレが実況マイクを握り、明るい声を響かせる。両手を振る。
「みなさまこんにちはっ♡ 王国祭第2競技、福笑いの実況を務めます嫉妬です!
ルールはシンプル。目隠しでパーツを置いて、完成した顔を審査員が採点!
各審査員はすべての作品に点数をつけます。果たしてどのチームが優勝するのかしら? 主人公様も楽しんでくださいね♡ 両方応援しますわ! それでは始めていきましょう!」
監視特化がカメラを各所に配置し、全世界配信も同時スタートした。録画ランプが点灯する。
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**魔導師隊――愛する者は、完璧でなければなりませんわ♡**
最初の登場は魔導師隊チーム。
魔導師たちが目隠しを装着する直前、魔導は主人公の顔をじっと見つめていた。扇子で口元を隠す。目が深い。
(主人公様のお顔を、紙切れ一枚で再現する……。なんて素晴らしい催しなのでしょう♡ 愛を込めて、完璧に整えて差し上げますわ)
(目の角度、鼻筋、唇の形……。すべてが完璧でなくてはなりませんわ。少しでも歪んでいたら、それは主人公様への冒涜ですもの♡ わたくし以外の不完全な再現など、許しませんわ)
魔導は扇子で口元を隠し、うっとりと微笑んだ。こざかしさが、優雅に滲む。
「皆様、心配はいりませんわ♡ 主人公様の魅力を正しく理解している私が、完璧な設計図をお渡ししますもの。愛の設計図ですわ」
「それ、福笑いの意味なくないか? 普通に目隠しでやれよ」
主人公の指摘を、魔導は聞こえなかったことにした。優雅に首を傾げる。
「さあ、皆様♡ 主人公様への愛を、作品に込めてくださいませ! わたくしが導きますわ」
魔導師たちは一斉に敬礼した。目が本気だ。
「「「はっ! 主人公様の美貌を、寸分違わず再現いたします!」」」
(ああ……♡ 主人公様がこの顔をご覧になったら、きっとご自分の魅力を再認識してくださいますわね♡ そして、わたくしの愛に気づいてくださいますわ)
主人公は、完成前からすでに嫌な予感がしていた。額を押さえる。
「……嫌な予感しかしねえ。普通にやってくれ」
目隠しを装着した魔導師たちが、紙の前に立つ。
普通なら手探りでパーツを置くはずだった。
しかし――。
「……見えていますわね♡」
魔導のヤンデレが、優雅に杖を振る。こざかしさが、光る。
目隠しをしたまま、魔導師たちの脳裏に「完璧なイケメンの顔の配置図」が直接送り込まれた。魔法の指示だ。
「主人公様を、最高に美しく整えて差し上げるのです♡ 愛を、正確に」
魔導師たちは目隠しをしているという設定を完全に無視し、魔法で正確な位置を把握しながらパーツを置いていく。
目は切れ長で凛々しく、鼻筋は通り、口元はわずかに微笑を含ませた、まさに「伝説の英雄」そのものの顔が完成した。完璧すぎる。
嫉妬が実況する。目が輝く。
「おおっ! 魔導師隊チーム、目隠ししているはずなのに動きがスムーズすぎますわね!? 完成した顔、めちゃくちゃイケメン……! これ、主人公様本人より整ってませんか!? 素敵!」
観客席からどよめきと歓声が上がる。
主人公は呆れたように呟く。
「……福笑いじゃねえ。整形だ。俺の顔を勝手にアップデートするな」
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**衛生兵――愛とは、欠点を治療すること♡**
次に衛生兵チーム。
衛生兵チームの準備を見守る慈愛は、主人公の顔の輪郭をそっと撫でた。手が優しい。
「主人公様……。普段はお疲れでしょう? この機会に、私たちが心身ともに癒やして差し上げますわ♡ 愛の治療ですわ」
「いや、福笑いで癒やされる予定はないんだが。普通に遊べ」
「ご遠慮なさらず♡ 目の位置が少しずれたとしても、鼻が曲がったとしても、私たちがきちんと整えて差し上げますから。愛を込めて」
「それはもう福笑いじゃなくて整形手術だろ! 病院行け!」
慈愛は、困ったように首を傾げた。目が純粋だ。
(主人公様は、ご自分の欠点を受け入れすぎていらっしゃるのですね……。いけませんわ。愛する者が欠点を抱えているのなら、周囲が支えてあげなくては♡ 私が治しますわ)
彼女は衛生兵たちに優しく語りかけた。声が聖母のようだ。
「皆さん。大切なのは、主人公様を傷つけないことです。たとえ失敗しても、決して責めてはいけませんわ。愛で包みますわ」
「「「はっ!」」」
「そして、完成した顔に問題があれば、私が責任を持って修正します♡ フルヒールの要領で」
主人公は額を押さえた。
(最初から修正する気満々じゃねえか……。俺の顔を実験台にするな)
慈愛のヤンデレが、事前に彼らと綿密な打ち合わせを済ませていた。愛の準備だ。
「パーツは、顔の正しい位置に自然と整うように……♡ 私が予め『整える』お手伝いをしておきましたわ。安心ですわ」
衛生兵たちは目隠しをしながらも、慈愛の指示通りの感覚でパーツを置いていく。
完成した顔は、優しく整った、どこか聖母のような穏やかな表情だった。癒し系だ。
「衛生兵チーム、完成! すごくバランスがいいですわね♡ 慈愛さんの事前準備が光ってます! 応援してましたわ!」
主人公は呟く。
「……治療完了か。俺は病人じゃねえぞ」
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**工兵隊・白兵戦部隊・盾兵――気合と根性の福笑い**
工兵隊の作業台の前で、腰振りが腕を組んだ。腰がすでに揺れている。
「いいか、お前ら! 工事も福笑いも同じだ! 重要なのは、勢いと腰の入り方だ! 完璧や!」
「「「おおおおおっ!!」」」
「目の位置がずれた? 問題ねえ! 鼻が額に乗った? それも味だ! 迷ったら腰を振れ! 衝撃波で決めろ!」
兵士たちはなぜか納得し、全力でパーツを置き始めた。腰が揺れる。
一方、白兵戦部隊では格闘特化が拳を握り締めていた。熱血だ。
「福笑いだからって手を抜くな! パーツ一枚一枚に魂を込めろ! お前らの拳は何のためにある!?」
「「「敵を倒すためです!!」」」
「違う! 今は顔を作るためだ!! だが、魂の込め方は同じだァァァ!! 正拳で置け!」
「「「うおおおおおっ!!」」」
その隣では、盾兵たちが慎重にパーツを置いていた。
拷問特化は、彼らの手元をじっと観察している。短く、実務的だ。
「焦るな。目を置くときは、位置を確かめてから静かに置け。いい出来だ」
「はい!」
「鼻も同じだ。勢いで置けば、取り返しがつかなくなる。覚悟を決めろ」
兵士たちは真剣な顔で頷いた。
「……そして、一度置いたものを簡単に動かすな。崩れないようにな。いい出来になる」
「「「はっ!!」」」
(なるほど、これは精神を鍛える訓練にもなる……。いい出来だ)
拷問特化は、福笑いを完全に精神修行として捉えていた。愛の修行だ。
その様子を見た主人公は、少しだけ安心した。
(あいつらは、少なくとも魔法で顔を整えたり、薬を使ったりはしていないらしい……。普通に近え)
しかし、完成した作品を見た瞬間、その安心は確信へと変わった。
(……こいつら、本当に何も考えてなかったんだな。最高だ)
工兵隊、白兵戦部隊、盾兵の3チームは、対照的だった。
腰振りが工兵隊に気合を入れる。
「気合で乗り切れ! 腰を入れて置けばなんとかなるだろ! 完璧や!」
格闘特化が白兵戦部隊を鼓舞する。
「迷うな! 拳で決めろ! お前らの魂をパーツに込めろ! うおおおっ!」
拷問特化が盾兵に短く告げる。
「……しっかり置け。崩れないようにな。いい出来だ」
結果、3チームの完成した顔は、目が極端に寄っていたり、口が斜めになっていたり、鼻が額付近に鎮座していたりと、典型的な「福笑いあるある」の崩壊顔となった。完璧に普通だ。
主人公はそれを見て、なぜか安堵の息を吐いた。肩の力が抜ける。
「……ああ。福笑いって、こういうもんだよな。安心する。俺の『普通』だ」
嫉妬が笑いを込めて実況する。手を叩く。
「工兵隊・白兵戦・盾兵の皆さま、完成! これが本来の福笑いですわね♡ ずれてて可愛い! 主人公様も安心したお顔をされています! 素敵!」
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**偵察部隊――完璧な誘導の裏側**
偵察部隊の背後では、潜入特化と監視特化が小声で通信していた。声が冷静だ。
「右へ二ミリ。そこで止めてくださいませ♡ 記録します」
「目の角度、もう少し内側ですわ。そう、その位置です。確認しました」
兵士たちは目隠しをしたまま、寸分の狂いもなくパーツを配置していく。精密だ。
監視特化は、全員の手元をカメラで確認しながら満足げに微笑んだ。録画中だ。
(どの隊員が、どの指示に、何秒で反応したのか……。すべて記録しておりますわ♡ 主人公様に関わる任務ですもの。情報収集、分析、伝達、実行……。一切の無駄は許されません。愛の記録ですわ)
潜入特化も、静かに頷いた。先回りが得意だ。
(主人公様の顔を正確に再現できれば、変装や潜入任務にも応用できますわね……♡ すでに計画中ですわ)
「潜入さん。今回の成果をもとに、主人公様そっくりの精巧な変装用マスクを開発してはいかがでしょう? データ上、有効ですわ」
「素晴らしい案ですわ♡ 本人と見分けがつかない精度を目指しましょう。愛の変装ですわ」
その会話を偶然聞いてしまった主人公が、勢いよく振り返った。声が大きい。
「待て! 何に使うつもりだ!? 俺の顔を量産するな! 普通に遊べ!」
二人は、満面の笑みで答えた。愛が、重い。
「もちろん、主人公様をお守りするためですわ♡ 安全対策ですわ」
「その説明で安心できるか!! 絶対に使うな! 俺の平和を守れ!」
偵察部隊チームは、極めて精密だった。
潜入特化と監視特化が、各隊員の耳に仕込んだ超小型マイクからリアルタイムで指示を送る。完璧な連携だ。
「右に三ミリ……いいえ、二ミリ戻して。眉はもう少し外側。……完璧ですわ♡ 記録完了です」
目隠しをした偵察部隊は、耳からの精密誘導だけでパーツを正確に配置。
完成した顔は、魔導師隊に負けず劣らず整った、知的でシャープなイケメン顔となった。データ通りだ。
「偵察部隊、完成! 耳元からの誘導、神がかってますわね! これも完璧な仕上がりです! 応援してましたわ♡」
主人公は呟く。
「……誘導か。俺の顔がマニュアルになってる」
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**ゲイバーのお兄さん――普通に遊ぶということ**
最後に、特殊枠のゲイバーのお兄さん。
ゲイバーのお兄さんは、目隠しをつけると、パーツを一つ手に取った。動作が淡々だ。
彼は本当に普通に目隠しをし、手探りでパーツを置いていった。考える隙がない。
「さてと。こういうのは考えすぎても仕方ないからな。普通にやるだけだ」
彼は手探りで目を置き、鼻を置き、最後に口を置いた。ずれている。
「はい、終わり。こんなもんだろ」
完成した顔は、少しだけ歪んでいた。目が少し大きめで口元がゆるい、親しみやすい普通の顔。
どこか彼自身の雰囲気に似ていた。
お兄さんは淡々と目隠しを外し、自分の作品を眺めて肩をすくめた。毒舌が準備される。
(誰かに褒められるためでも、勝つためでもない。こういうのは、みんなで笑えればそれでいいんだよ。お前ら、普通を忘れすぎだ)
彼は周囲を見渡した。
魔導師隊は完璧な顔を誇り、衛生兵は修正の準備を進め、偵察部隊は精度を競っている。工兵隊たちはなぜか腰を振り、白兵戦部隊は完成した顔に拳を突き上げ、盾兵は作品の安定性を検証していた。
「……まあ、あいつらが楽しそうならいいか。俺の店の売上には関係ねえしな。顔面崩壊パフェ、追加注文入ってるし」
お兄さんは肩をすくめ、屋台の売上帳を確認した。切れがいい。
「ところで、福笑い限定メニューでも出すかね。顔面崩壊パフェとか。お前らの顔見てると、売れる気がする」
主人公が、すぐさま振り向いた。目が輝く。
「お兄さん! 俺にも一つくれ! 普通の味だ!」
「はいよ。審査が終わったらな。お前の顔、ちゃんと崩壊してるから特別サービスだ」
(……この人だけが、まともだ。俺のオアシスだ)
主人公は心の底からそう思った。鋼の精神が、少しだけ休まる。
嫉妬が優しく実況する。手を振る。
「ゲイバーのお兄さん、完成! 普通にやってくれました……! これが一番『福笑い』らしいかもしれませんわね♡ 素敵! 応援してましたわ!」
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## 審査――十人十色の愛情と欲望
審査の時間となった。
ヤンデレ10人と主人公が、すべての作品をそれぞれ10点満点で採点していく。ペンが走る。
魔導は、魔導師隊の作品を満足げに眺めてから、採点表にペンを走らせた。こざかしさが、微笑みに乗る。
魔導師隊に10点、衛生兵に6点、工兵隊に2点、白兵戦に2点、盾兵に2点、偵察部隊に8点、ゲイバーのお兄さんに3点。
「私が導いた完璧なイケメンが一番ですわ♡ 他も一応つけますけれど。愛の差ですわ」
(主人公様のお顔を正しく再現できるのは、私の愛情と魔法があってこそですもの♡ わたくし以外の再現など、半分以下で十分ですわ)
魔導は、偵察部隊の作品に目を向けた。扇子で隠す。
(確かに整ってはいますけれど、主人公様への愛情が足りませんわね。わたくしの愛が、一番ですわ)
一方、森羅万象は作品を一つずつ眺め、全体のバランスを確認していた。優雅だ。
魔導師隊に9点、衛生兵に7点、工兵隊に3点、白兵戦に3点、盾兵に3点、偵察部隊に9点、ゲイバーのお兄さんに4点。
「きちんと『整って』いるものが好ましいですわ。整えましたわ♡」
(形の整合性、配置の均衡、全体の調和……。やはり、整っているものには価値がありますわね♡ 次回は、すべての作品を理想的な形に整えて差し上げましょう。愛の整頓ですわ)
科学は採点表と作品を交互に見比べていた。数字が正確だ。
魔導師隊に8点、衛生兵に7点、工兵隊に2点、白兵戦に2点、盾兵に2点、偵察部隊に10点、ゲイバーのお兄さんに3点。
「誘導精度と再現性が最も高いですわね。データ上、優秀です」
科学は偵察部隊の作品を指さした。
「指示への追従性、パーツの配置精度、完成品の再現性。どれを取っても優秀ですわ。次はセンサーを導入すれば、さらに誤差を減らせますわね。愛のデータですわ」
薬学は衛生兵チームの作品を見て、満足そうに微笑んだ。世話焼きだ。
魔導師隊に7点、衛生兵に9点、工兵隊に3点、白兵戦に3点、盾兵に3点、偵察部隊に8点、ゲイバーのお兄さんに4点。
「清潔感とバランスを重視しましたわ。回復のサイクルに近いですわ」
(優しい表情……。見ているだけで心が落ち着きますわね♡ ただ、もう少し表情筋の配置を調整すれば、さらに自然な笑顔になるはず……。お薬で整えられますわ)
監視は、偵察部隊の作品と記録映像を見比べながら採点していた。淡々だ。
魔導師隊に7点、衛生兵に6点、工兵隊に2点、白兵戦に2点、盾兵に2点、偵察部隊に10点、ゲイバーのお兄さんに3点。
「私たちの完璧なサポートの成果ですもの♡ 記録します」
(指示の伝達から作業の進捗まで、すべて記録済みですわ。主人公様に関わる映像ですもの、もちろん永久保存ですわね♡ 視線回数もカウント済みです)
潜入も、偵察部隊の作品を見て満足げに頷いた。静かだ。
魔導師隊に7点、衛生兵に6点、工兵隊に2点、白兵戦に2点、盾兵に2点、偵察部隊に10点、ゲイバーのお兄さんに3点。
「精密誘導の成果ですわ♡ 先回りしました」
(この精度なら、主人公様そっくりの変装用マスクも作れそうですわね……♡ すでに侵入経路を確保済みですわ)
「待て。何に使うつもりだ? 俺の顔を量産するな! 普通に採点しろ!」
主人公が横から口を挟む。声が大きい。
監視と潜入は、満面の笑みで答えた。愛が、重い。
「もちろん、主人公様をお守りするためですわ♡ 安全対策ですわ」
「その説明で安心できるか!! 絶対に使うな! 俺の『普通』を返せ!」
慈愛は、衛生兵チームの作品を愛おしそうに見つめていた。手が優しい。
魔導師隊に6点、衛生兵に10点、工兵隊に4点、白兵戦に4点、盾兵に4点、偵察部隊に7点、ゲイバーのお兄さんに5点。
「事前に整えてあげた甲斐がありましたわ♡ フルヒールの成果ですわ」
(皆さん、よく頑張りましたわね。主人公様を大切に思う気持ちが伝わってきます♡ 多少の欠点があっても、私が治して差し上げればいいのですもの。愛の回復ですわ)
主人公は、その言葉を聞いて額を押さえた。
「だから、それじゃ福笑いの意味がないんだって……。治療すんな!」
嫉妬は、各チームの作品を見比べながら楽しそうに採点していた。目が輝く。
魔導師隊に8点、衛生兵に7点、工兵隊に5点、白兵戦に5点、盾兵に5点、偵察部隊に8点、ゲイバーのお兄さんに7点。
「どれも素敵だったわ! 特に普通のものが新鮮で♡ 両方応援してました!」
(主人公様がどの作品を気に入るのかしら? もし私以外のチームを褒めたら、少し妬いてしまいそうですわね♡ ……でも、応援は続けますわ!)
その隣では、格闘特化が白兵戦部隊の作品を見て豪快に笑っていた。熱血だ。
魔導師隊に4点、衛生兵に5点、工兵隊に6点、白兵戦に9点、盾兵に7点、偵察部隊に5点、ゲイバーのお兄さんに4点。
「気合が入ってたのを評価する。うおおおっ!」
「いいじゃねえか! この顔の歪み! 気合が入ってる証拠だ! 魂だァァァ!」
(整っているだけが強さじゃねえ。魂がこもってりゃ、それでいいんだよ! 愛の拳だ!)
腰振りは、工兵隊の作品を見て豪快に笑った。腰が揺れる。
魔導師隊に4点、衛生兵に5点、工兵隊に9点、白兵戦に6点、盾兵に5点、偵察部隊に5点、ゲイバーのお兄さんに4点。
「腰を入れた成果だろ。完璧や!」
「最高だ! この鼻の位置! 腰の入り方が違うぜ! 衝撃波級だ!」
(やっぱり勢いだな。細かいことを気にしてちゃ、何も始まらねえ! 愛の腰だ!)
拷問特化は、盾兵の作品をじっと見つめていた。短く、実務的だ。
魔導師隊に3点、衛生兵に5点、工兵隊に5点、白兵戦に6点、盾兵に9点、偵察部隊に4点、ゲイバーのお兄さんに3点。
「崩れないものを評価する。いい出来だ」
「……パーツはしっかり固定されている。悪くない。いい出来だ」
(乱れた状況でも形を維持する。それもまた、強さだ。愛の拘束だ)
そして、最後に主人公の採点となった。
主人公は、各チームの作品をもう一度見渡した。目が真剣だ。
魔導師隊は完璧な顔を作り上げ、衛生兵は慈愛の名のもとに修正を施し、偵察部隊は精密な誘導によって正確な顔を再現した。
工兵隊、白兵戦部隊、盾兵の作品は、見事なまでに崩れている。最高の普通だ。
そして、ゲイバーのお兄さんの作品は、少し歪んでいるものの、普通の福笑いらしい顔に仕上がっていた。オアシスだ。
主人公は採点表にペンを走らせた。手が早い。
魔導師隊に2点、衛生兵に3点、工兵隊に8点、白兵戦に8点、盾兵に8点、偵察部隊に2点、ゲイバーのお兄さんに9点。
「……これが福笑いだ。俺はこっちでいい。普通が一番だ」
その言葉を聞いた魔導が、勢いよく振り向いた。扇子が止まる。こざかしさが、揺れる。
「主人公様? 私たちの作品には、何点をおつけになったのですか? 愛を込めたのですよ?」
「……二点。完璧すぎて福笑いじゃねえ」
「に、二点!? わたくしの愛が、二点……?」
魔導の笑顔が固まった。すぐに、こざかしく再解釈する。
「どうしてですの!? あれほど完璧に整えて差し上げましたのに! 主人公様への愛が足りないとでも!?」
「だからだよ! 福笑いで完璧にしてどうするんだ! ずれろ! 普通にずれろ!」
「まあ……♡ 主人公様は、私たちの愛情が大きすぎて受け止めきれないのですね♡ わたくしの愛が、重すぎたのですわ」
「違う!! 重さの問題じゃねえ! 福笑いの問題だ!」
魔導は、なぜか嬉しそうに頬を染めた。意地悪さが、優雅に混じる。
「でしたら、次はもっと大きな愛情を込めて差し上げますわ♡ 完璧を超えた完璧を。チャオ♡」
「次がある前提で話すな!! 俺の平和を前提にしろ!」
会場には笑い声が響き渡り、監視のヤンデレはそのやり取りを全世界に配信していた。コメントが流れる。
『魔導さん、安定の解釈違いで草』
『主人公の二点が一番正直』
『ゲイバーのお兄さんが唯一の良心』
『魔導の「愛が重すぎた」解釈、天才』
コメント欄は大いに盛り上がった。
ゲイバーのお兄さんは、その様子を眺めながら肩をすくめた。毒舌が鋭い。
「……まあ、みんな楽しそうならいいか。お前ら、普通の遊び方忘れてんじゃねえか? 俺の店で反省会でもやるか? 顔面崩壊パフェ付きでな」
そして、屋台の売上帳を確認する。切れがいい。
「ところで、福笑い限定メニューの『顔面崩壊パフェ』、思ったより売れたな。お前らの顔見てると、追加注文が止まらねえ。主人公、お前の顔もメニューに入れるか?」
「お兄さん! 俺にも一つくれ! 普通の味で頼む!」
「はいよ。審査が終わったらな。お前の『二点』評価、気に入ったぜ。まともだ」
主人公は、心の底から思った。
(……この人だけが、まともだ。俺の唯一のオアシスだ)
だが、そんな主人公の願いとは裏腹に、嫉妬はすでに次の催しについて考え始めていた。目が輝く。
「次は何をしましょうかしら♡ 主人公様がもっと楽しめるものがいいですわね♡ 両方応援しますわ!」
「頼むから、次こそ普通の競技をやらせてくれ!! 福笑いで十分だ!」
もちろん、その願いが叶うことはなかった。愛が、次を呼ぶ。
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合計点が集計された。
- 魔導師隊チーム:75点
- 衛生兵チーム:76点
- 工兵隊チーム:43点
- 白兵戦部隊チーム:52点
- 盾兵チーム:44点
- 偵察部隊チーム:86点
- ゲイバーのお兄さん:52点
優勝は、偵察部隊チーム。
嫉妬がマイクに向かって大声で告げる。手を振る。
「優勝は――偵察部隊チームですっ! 潜入さんと監視さんの精密誘導が光りましたね♡
僅差で衛生兵チーム、次いで魔導師隊のイケメン修正!
崩壊顔の3チームと普通枠のお兄さんも、それぞれ味があって会場を和ませてくれましたわ! みんな素敵! 応援してました!」
観客席から大きな拍手が起こる。
兵士たちは自分たちの師匠の評価に一喜一憂し、国王は特等席で「健全な遊び……のはずだったのだが。余の平和はどこじゃ」と遠い目をしていた。
主人公は、崩壊顔の作品を改めて眺めて小さく笑った。肩の力が抜ける。
「……やっぱり、福笑いってこういうのがいいんだよな。俺の『普通』だ」
その横で、魔導が不満げに唇を尖らせる。すぐにこざかしく切り替える。
「もっとイケメンに点をくれてもよかったのですけれど……。まあ、主人公様の愛がまだ足りない証拠ですわね♡ 次はわたくしが直接整えて差し上げますわ。チャオ♡」
「直接すんな! 俺の顔を触るな!」
森羅万象が静かにフォローする。優雅だ。
「整っているものが評価された結果ですわ。次はもっと『完璧に整えて』みせましょう♡ 空間ごと整えられますわ」
「空間ごとすんな! 普通の紙でやれ!」
ゲイバーのお兄さんは、自分の点数を見て肩をすくめた。毒舌が締める。
「まあ、普通にやっただけだろ。別にいいさ。お前ら、完璧狙いすぎて福笑いの楽しさ忘れてんじゃねえか? 俺の店で『普通の福笑い教室』でも開くか? 売上になるしな」
会場の端では、すでに次の出店準備を始めている彼の姿があった。普通のオアシスだ。
こうして王国祭第2競技・福笑いは、偵察部隊の優勝で幕を閉じた。
ヤンデレたちはすべての作品に点数をつけ、それぞれの好みを反映させ、兵士たちは師匠の評価に燃え、主人公は「普通」の崩壊顔とお兄さんの作品にだけ、わずかな安心を見出した。
そして今日も、王国は賑やかに、主人公の「普通」を遠ざける祭りを続けていくのであった。
(……次こそ、普通の競技にしてくれ。頼む。愛はわかった。普通が欲しい)
誰も、普通には答えなかった。
ただ、優しい微笑みと、こざかしい扇子の音だけが、静かに彼を囲んでいく。




