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王国最大のヤンデレ軍事イベント、開幕前夜

**王国最大の軍事イベント、開幕前夜**


王国の王城、その豪華絢爛な玉座の間。


王座に腰掛けた国王は、頭を抱えて深い溜息をついていた。


「はあ……どうしたものか」


近頃の王国は激動の連続だった。


主人公の「股間消滅」による世界規模の無能力場騒動に始まり、武闘派たちの暴力的なまでの治安維持、そして極め付きはあの『伝説の英雄・主人公の軌跡』の動画配信大ブームである。


国民たちは「孤高の英雄の純愛」に涙し、街の活気は戻ったものの、王国の最高権力者である国王の立場からすれば頭の痛い問題が山積みだった。


「最近、国民の娯楽がヤンデレたちの配信動画に偏りすぎておる……。このままでは王国の政治への関心が薄れ、すべてが『主人公様の愛の物語』に染まってしまうぞ」


何か、国民の目を政治に向けさせ、あるいは王国の威信を示すような「大規模で健全なイベント」を開催しなければならない。


国王は重い頭を悩ませながら、独り言のように呟いた。


「ううむ……国民が心から喜び、国の結束を示せるような、素晴らしいイベントはないものか……。大々的なパレードか? いや、それとも大規模な感謝祭か……」


その時だった。


重厚な玉座の間の大扉が、実にスムーズに開いた。


「お疲れ様ですわ〜」


「あ、魔導様! 本日の指導もお待ちしております!」


「ええ、また後でね♡」


警備兵たちと親しげに挨拶を交わしながら、廊下を普通に歩いて入ってきた女性が一人。


魔導のヤンデレである。


いつものように武闘派たちが兵士指導で城に出入りしているため、警備兵たちにとって彼女たちはもはや「指導教官の身内」であり、最奥の玉座の間であっても顔パス同然で通されていた。


「――お悩みですのね、国王陛下♡」


「ひっ……!?」


国王が驚愕して跳び上がった。


声がした方を見ると、玉座のすぐ手前で魔導が優雅に佇んでいた。手にはお馴染みの魔導書と、妖しく微笑む美しい唇がある。


「な、なんだお前は!? 警備はどうした! ここは王城の最奥だぞ!」


国王が怯えながら叫ぶと、魔導はふふっと上品に笑った。


「警備でしたら、普通に通してくださいましたわ。ご安心くださいませ♡」


「安心できるか! なぜ我が城の近衛兵がそこまで毒されているんだ!」


冷や汗を流す国王を無視して、魔導は一歩前に出た。


彼女の瞳には、狂気と、しかし異常に高度な「ビジネスの企み」が宿っている。


「国民を喜ばせるイベントがしたい、とおっしゃいましたわね?」


「あ、ああ……国を一つにまとめるような、素晴らしい祭りがだな……」


「でしたら、すべて私たちにお任せくださいませ♡」


「は?」


国王が間抜けな声を漏らす。


魔導は満足げにうなずき、懐から一枚の分厚い計画書を取り出して見せた。


「ちょうどいい機会ですわ。動画配信サービスのさらなるプロモーションも兼ねて、『主人公様と行く、愛の地上大試練(サバイバル)パレード&公開挙式付きフェスティバル』を企画いたしましたの♡」


「なんだその不穏すぎる名前は!! 健全な祭りじゃなくて完全に地獄の連行行事じゃないか!!」


「何を言っていらっしゃるのですか。国民は主人公様の勇姿を見られて歓喜し、私たちは愛を深められ、王国は経済効果で潤う。まさに一石三鳥の最高のマリアージュですわ♡」


「絶対に嫌だ! そんな危険なイベントを我が国でやったら首都が消滅する!」


国王が必死に首を横に振る。


しかし、魔導の笑顔は一ミリも揺るがなかった。


「ふふっ……ご意見番として聞いて差し上げましたが、相談ではありませんのよ。すでに王国全土への告知魔術は発動済みですわ♡」


「なっ……!?」


窓の外から、突如として空を揺るがすような巨大な魔導ホログラムが展開された。


そこには、イケメン加工された主人公の巨大な顔と、『今週末開催決定! 主人公様公開お披露目&愛の十字架(デス)パレード』の文字がド派手に踊っている。


街のあちこちから、国民たちの歓声が聞こえてきた。


『おおっ! 主人公様のパレードだって!』『絶対見に行くぞー!』『愛は勝ったわよー!』


「ば、馬鹿な……勝手に話を……!」


国王はあまりの絶望感に、膝から崩れ落ちた。


魔導はそんな国王を見下ろし、くるりと背筋を伸ばすと、軽やかに手を振った。


「それでは、準備がありますので失礼いたしますわね♡ チャオ♡」


「チャオ♡」と残して、彼女は普通に歩いて廊下へと出て行った。


去り際に「あ、警備兵さん、のど飴どうぞ♡」「ありがとうございます魔導様!」という和やかな会話まで聞こえてくる。


「待て! 行くな! 返せ私の平和な王国をああああああっ!!!」


国王の絶叫が、広大な玉座の間に悲痛に響き渡った。


残されたのは、膝から崩れ落ちた国王と、全土に響き渡るお祭りムードの狂騒曲だけだった。


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