敵将を説得しようとすると拗ねてやらかすヤンデレたち
**各国の敵将の問題 /第三章 敵将より怖い味方**
*
各章には、主人公たちの前に立ちはだかる敵将がいた。
敵将を倒し、説得すれば仲間にできることもある。
ところが、敵将を主人公が説得しようとすると、魔導が突然、敵将を吹き飛ばす。
*
その日。主人公は戦場にいた。
「頼むから今日は静かにしててくれ……。普通に話し合いで終わらせたいだけなんだ……」
今回の敵は北方連合軍総司令・黒狼将軍バルド。悪人ではない。話せば分かる。
「主人公様♡」
背後から魔導が現れた。
「約束しろ。敵将を消し飛ばすな。説得するから」
「心外ですわ♡ わたくしがいつ敵将を消し飛ばしましたの?」
「前回。前々回。その前も」
「証拠は?」
「敵将がいない」
「偶然ですわ♡ チャオ♡」
主人公は頭を抱えた。
「今回は本当に頼む。彼は仲間になれる男だ」
「お任せくださいませ♡ ご主人公様のためですわ」
「それが怖いんだよ……」
*
戦闘が始まった。
格闘特化が城壁を拳で吹き飛ばし、腰振りが衝撃波で敵兵を飛ばす。
「加減しろぉぉぉ!!」
主人公が叫ぶ。戦場はいつも通りだった。
やがて主人公は敵将と対峙した。
「来たか、英雄」
「戦争を終わらせに来た。お前は悪人じゃない。仲間になってほしい」
数十合の激突の末、主人公が斧を弾き落とす。
「もうやめろ」
「……殺さないのか」
「できれば仲間になってほしい」
「俺は疲れた。もう戦はいらん」
主人公が手を差し出す。黒狼将軍も手を伸ばす。
その瞬間だった。
魔導の心の中で、何かが切れた。
(ご主人公様の手が、あの男に触れようとしている……許せませんわ)
空から巨大魔法陣が展開される。
「お任せくださいませ♡ 波動砲♡」
主人公「は?」
敵将「は?」
ドゴォォォォォォォン!!
敵将が吹っ飛んだ。戦場も少し吹き飛んだ。
主人公はゆっくり振り返る。
魔導がいた。満面の笑顔で。
「問題解決ですわ♡」
「何やってんだぁぁぁぁぁ!!」
「敵将を排除しましたの♡ ご主人公様の視線が、あの方へ向いておりましたもの。困りますわ♡」
「説得するところだったんだよ!!」
「仲良くなりそうでしたわ♡ ですから、わたくしが代わって差し上げましたの。ご主人公様のためですわ♡ チャオ♡」
周囲では科学が「データ上、完璧な排除ですわ」、監視が「綺麗に撮れましたわ♡」、嫉妬が「魔導さん素敵ですわー♡」と肯定していた。
主人公だけが叫んでいた。
「完璧じゃねえよ!! また一人、救えたかもしれない相手を……!」
*
戦争は終結した。国王は大喜びだった。
屋敷に戻る馬車の中。
魔導が主人公の隣に座り、そっと腕に触れた。
「ご主人公様♡ 今日は特別に、わたくしが夜のご奉仕をいたしますわ。あの敵将の件で、少しご不満がおありでしょう? わたくしがすべて癒やして差し上げますのよ♡」
「……お前が吹き飛ばしたんだろ」
「ふふっ……ご主人公様のためですもの♡ ご主人公様の視線も、声も、手も、全部わたくしのもの。今夜は、わたくしだけを見ていてくださいませ。チャオ♡」
彼女の笑顔は希望に満ちたまま、完全に逃げ場を塞いでいた。
主人公は空を見上げた。
「敵より味方の方が怖いってどういうことだ……。普通に飯を食って、普通に寝たいだけなのに」




