番外編11 三匹の子豚――三国を制圧されても、主人公だけは勝負すらさせてもらえない
ある日、ヤンデレたちは三人の男を豚に変えることにした。
一人目は主人公。魔導のヤンデレによって、あっという間に豚の姿へと変えられてしまった。
「ブヒィィィィ!? おい、何しやがる!」
「ご主人様、豚さんもかわいいですね♡」
「かわいいじゃねえよ! 元に戻せ!」
しかし、ヤンデレたちは主人公の抗議を聞き流していた。
二人目は、いつものようにゲイバーで過ごしていたお兄さんだった。森羅万象のヤンデレは彼を連れ去ると、何のためらいもなく豚に変えてしまった。
「ブヒッ!? なんで俺まで豚にされるんだよ!」
「あなたも物語に必要ですから♡」
そして三人目は、ある国の国王だった。
森羅万象のヤンデレは国王のもとにも現れ、彼を豚に変えてしまった。
「ブヒィィィ!? 余を誰だと思っている!」
「国王様ですよね♡ でも、今は豚さんです♡」
こうして三匹の子豚が誕生した。
ところが、三人とも豚の姿でおとなしくしているつもりはなかった。
主人公の豚は、ヤンデレたちの隙を突いて逃走した。
目指したのは、黒鉄帝国。
ゲイバーのお兄さんの豚は、白銀王国へと逃げ込んだ。
そして国王の豚は、黄金諸侯連盟へと逃げ込んだ。
三匹はそれぞれ別の国へと逃げ延びたのである。
しかし、ヤンデレたちは三匹を逃がしたつもりなどなかった。
これは、彼女たちが用意した新しい遊びの始まりにすぎなかったのだ。
## 第一の国・黒鉄帝国
主人公の豚が逃げ込んだ黒鉄帝国。
その国に、股間のスペシャリストの男のヤンデレが現れた。
「ご主人様がいらっしゃる国ですね♡ では、制圧しましょう♡」
彼は一人だった。
兵士たちは武器を構え、帝国の軍勢が一斉に押し寄せた。
「敵襲だ! 迎撃しろ!」
しかし、股間のスペシャリストはまったく動じなかった。
彼は腰を振った。
ただ、それだけだった。
ドゴォォォォォォン!!
強烈な衝撃波が発生し、押し寄せてきた兵士たちがまとめて吹き飛ばされた。
「な、なんだ今の攻撃は!?」
「腰を振っただけだと!?」
帝国軍は次々と攻撃を仕掛けたが、結果は変わらなかった。
彼が腰を振るたびに衝撃波が発生し、兵士たちはなすすべもなく吹き飛ばされていく。
やがて帝国軍は壊滅し、城へと追い詰められた。
だが、股間のスペシャリストはそこで戦いを終わらせなかった。
「さて、ご主人様へのお土産を用意しましょう♡」
彼は城の前でスクワットを始めた。
一回。
城が縮んだ。
二回。
さらに縮んだ。
三回。
また縮んだ。
スクワットを繰り返すたびに、巨大な城がどんどん小さくなっていく。
最後には、手のひらに乗るほどの大きさになってしまった。
「よし、これなら持ち運べますね♡」
彼は小さくなった城を手に取った。
「ご主人様へのお土産です♡ きっと喜んでくださいますね♡」
こうして、股間のスペシャリストは黒鉄帝国を単独で制圧した。
一方、主人公の豚はというと、国が陥落したことを知って逃走を開始していた。
「ブヒィィィィ!! なんで俺が逃げ込んだ国ばかり狙われるんだよ!」
主人公の豚は、次の逃げ場所を求めて走り続けた。
そして、白銀王国へとたどり着いた。
## 第二の国・白銀王国
白銀王国に逃げ込んだ主人公の豚。
しかし、そこにもヤンデレが現れた。
今度は、格闘特化の男のヤンデレだった。
「ご主人様がこちらに逃げ込んだのですね♡ では、ここも制圧しましょう♡」
彼は武器を持たなかった。
魔法も使わなかった。
ただ、自分の鍛え上げた肉体だけを武器にした。
白銀王国の兵士たちが一斉に襲いかかる。
格闘特化の男のヤンデレは、最初の兵士の攻撃をかわし、拳を叩き込んだ。
次の兵士には蹴りを放ち、その後ろから迫る兵士には肘打ちを浴びせた。
一撃一撃が強烈だった。
兵士たちは次々と倒れていく。
「囲め! 一人に何を手こずっている!」
王国軍は数を頼みに押し寄せたが、格闘特化の男のヤンデレは一歩も引かなかった。
拳、蹴り、投げ技。
鍛え抜かれた格闘技術によって、兵士たちは次々と戦闘不能になっていった。
最後には、王国の精鋭部隊も倒された。
「これで制圧完了ですね♡」
格闘特化の男のヤンデレは、静かに拳を下ろした。
こうして白銀王国も、たった一人のヤンデレによって陥落した。
そのころ、主人公の豚はまたしても逃走していた。
「ブヒィィィィ!! もう嫌だ! 俺が逃げ込む先を狙うのはやめろ!」
しかし、逃げなければ捕まってしまう。
主人公の豚は必死に走り、黄金諸侯連盟へとたどり着いた。
## 第三の国・黄金諸侯連盟
黄金諸侯連盟。
そこに逃げ込んでいたのは、主人公の豚だけではなかった。
国王の豚もまた、この国にいたのである。
だが、二匹が安心していられる時間は長くなかった。
森羅万象のヤンデレが現れたからだ。
「ご主人様も、国王様も、こちらにいらっしゃるのですね♡」
彼女は楽しそうに微笑んだ。
「では、この国も制圧しましょう♡」
黄金諸侯連盟の兵士たちは、迫り来る脅威に立ち向かった。
しかし、相手は森羅万象のヤンデレだった。
彼女が力を振るうと、重力が変化した。
兵士たちは地面に押しつけられ、身動きが取れなくなる。
別の場所では、兵士たちの足元から大地がせり上がり、進軍を阻んだ。
軍勢が攻撃を仕掛けても、彼女は空間を自在に操り、攻撃をことごとく無力化していく。
「な、なんだこの化け物は……!」
「化け物ではありませんよ♡ ご主人様をお迎えに来ただけです♡」
彼女にとって、国を一つ制圧することなど、ごく簡単な作業にすぎなかった。
黄金諸侯連盟の軍勢は敗北し、国は彼女の手に落ちた。
こうして、黒鉄帝国、白銀王国、黄金諸侯連盟の三国すべてが、たった一人ずつのヤンデレによって制圧された。
そして森羅万象のヤンデレは、ついに主人公の豚を見つけた。
「ご主人様、見つけましたよ♡」
「ブヒィィィィ!!」
主人公の豚は逃げようとした。
しかし、森羅万象のヤンデレが指を動かした瞬間、主人公の身体はふわりと浮き上がった。
「逃がしませんよ♡」
「またかよおおおおお!!」
三匹の子豚の逃走劇は、ここで終わりを迎えた。
## 最後の勝負
三国を制圧したヤンデレたちは、三匹の豚を集めた。
そして、魔導のヤンデレが魔法を使い、三匹を元の人間の姿に戻した。
主人公、ゲイバーのお兄さん、国王。
三人はようやく人間の姿を取り戻した。
主人公は、これでようやく解放されるのかと思った。
しかし、ヤンデレたちが告げたのは、さらなる試練だった。
「皆さんには、最後のチャンスを差し上げます♡」
森羅万象のヤンデレが微笑んだ。
「私たち十人全員と戦って、勝つことができたら自由にして差し上げます♡」
「十人全員だと!?」
「はい♡ 頑張ってくださいね♡」
主人公は拳を握った。
今度こそ、自分の力を証明して自由を勝ち取ってやる。
そう考えていた。
だが、勝負が始まる前に、ヤンデレたちは主人公を連れていこうとした。
「……え?」
「ご主人様はお帰りですよ♡」
「待て! 俺も勝負するんだろうが!」
「いいえ?」
「なんでだよ!」
「ご主人様には、今回、勝負する権利がありませんから♡」
「豚にされてたのは俺も同じだろうが!」
「はい♡ ですから、元の姿に戻して差し上げました」
「そういう問題じゃねえ!」
主人公が抗議している間にも、ヤンデレたちは彼を取り囲んでいた。
「さあ、ご主人様。お帰りの時間ですよ♡」
「待て! 自由を懸けた勝負はどうなったんだよ!?」
「ご主人様は最初から、私たちと一緒に帰る予定ですよ?」
「そんな予定はねえええええええええ!!」
森羅万象のヤンデレが指を動かすと、主人公の身体がふわりと浮き上がった。
「それでは、皆さん。撤収しましょう♡」
「おい! 俺の意思は!?」
主人公は抗議したが、ヤンデレたちはまったく気にしていなかった。
こうして主人公は、勝負に参加することすら許されず、連れ去られてしまった。
残されたのは、ゲイバーのお兄さんと国王の二人だった。
「……あの二人、俺たちのことを忘れてないか?」
「余にもわからぬ……」
二人は顔を見合わせた。
そして、最後の勝負が始まった。
## 第一戦・ゲイバーのお兄さん対股間のスペシャリスト
最初に名乗りを上げたのは、ゲイバーのお兄さんだった。
彼はかつて、性技のスペシャリストのヤンデレに敗北し、搾り取られて干物のような姿にされたことがあった。
あのときの自分は、あまりにも無力だった。
何もできず、一方的に敗北した。
その悔しさが、彼を変えた。
彼は鍛えた。
ひたすら鍛えた。
自分の腰振りを極限まで磨き上げ、いつかあの屈辱を乗り越えるために。
そして今、彼は股間のスペシャリストの男のヤンデレと向き合っていた。
「俺は、あのときの俺とは違う!」
ゲイバーのお兄さんは腰を振った。
ドゴォォォォォン!!
強烈な衝撃波が発生する。
股間のスペシャリストも腰を振った。
ドゴォォォォォン!!
二つの衝撃波が正面からぶつかり合い、周囲の地面を揺るがした。
「ほう……!」
股間のスペシャリストは感心した。
「なかなかやりますね♡」
ゲイバーのお兄さんは、さらに腰を振った。
衝撃波が連続して放たれ、互いの攻撃がぶつかり合う。
その実力は、確かに互角に見えた。
「どうだ! 俺だって、ここまで強くなったんだ!」
ゲイバーのお兄さんは叫んだ。
しかし、その瞬間だった。
股間のスペシャリストが、ゆっくりと姿勢を変えた。
「では、そろそろ本気を出しましょうか♡」
「……何?」
股間のスペシャリストの身体から、凄まじい力があふれ出した。
第二形態。
今までの姿は、ほんの遊びにすぎなかったのだ。
ゲイバーのお兄さんは、その圧倒的な気配に息をのんだ。
「ま、まだ本気じゃなかったのか……!」
股間のスペシャリストは、静かに腰を引いた。
そして、一度だけ腰を振った。
ドゴォォォォォォォォォォォォン!!
凄まじい衝撃波が発生した。
ゲイバーのお兄さんは抵抗することすらできなかった。
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
彼の身体は彼方へと吹き飛ばされ、空の向こうへ消えていった。
一撃だった。
股間のスペシャリストは、飛んでいった方向を眺めながらつぶやいた。
「いい戦いでした。ですが、まだ私には届きませんでしたね♡」
ゲイバーのお兄さん、敗北。
## 第二戦・国王対格闘特化の男のヤンデレ
次に前へ出たのは、国王だった。
「次は余が相手をしよう」
対戦相手として指名したのは、格闘特化の男のヤンデレだった。
「あなたが相手ですか。楽しみですね♡」
国王は静かに目を閉じた。
そして、禁断の技を発動した。
「全盛回帰!」
その瞬間、国王の身体が変化した。
衰えた肉体が若返り、全盛期の姿を取り戻していく。
筋肉が張り、動きが鋭くなり、かつての力がよみがえった。
しかし、この技には欠点があった。
身体は若返っても、体力までは戻らないのだ。
それでも、国王は構えた。
「参る!」
二人が同時に踏み込んだ。
拳と拳がぶつかり合い、衝撃が周囲に広がる。
国王の攻撃は鋭かった。
格闘特化の男のヤンデレも、それを正面から受け止め、反撃を繰り出す。
互いに譲らない攻防が続いた。
「素晴らしい動きですね♡」
「当然だ! 余を誰だと思っている!」
国王は全盛期の肉体を存分に使い、相手を追い詰めていった。
しかし、時間が経つにつれて、少しずつ異変が現れ始めた。
息が上がる。
腕が重くなる。
足の動きが鈍くなる。
身体は全盛期でも、体力はそうではなかった。
「くっ……!」
国王は歯を食いしばった。
このままでは負ける。
ならば、もう一つの禁断の技を使うしかない。
「王覇気功!」
国王の身体から、凄まじい気が立ち上った。
自らの生命力を燃やし、戦闘力を倍増させる技。
使えば使うほど、命を削る。
だが、今の国王に迷いはなかった。
「三倍!」
国王の力が跳ね上がった。
格闘特化の男のヤンデレが防御する。
しかし、その防御を国王の拳が打ち破った。
「五倍!」
さらに力が増す。
拳が叩き込まれ、蹴りが炸裂する。
格闘特化の男のヤンデレは、次第に押され始めた。
「これは……!」
「まだだ!」
国王は叫んだ。
「十倍だああああああああ!!」
凄まじい力が爆発した。
国王の攻撃が連続して叩き込まれる。
格闘特化の男のヤンデレは防御しきれず、何度も吹き飛ばされた。
身体は傷だらけになり、立っているのもやっとだった。
それでも国王は止まらなかった。
命を燃やし、最後の力を振り絞って攻め続けた。
ついに、格闘特化の男のヤンデレが膝をついた。
「あと一撃……!」
国王は拳を握りしめた。
「これで終わりだああああああああ!!」
国王は最後の一撃を放とうとした。
しかし、その瞬間。
ぷつりと、意識が途切れた。
国王は気絶した。
だが、倒れなかった。
拳を握りしめたまま、立った姿勢を保っていた。
まるで、今にも最後の一撃を放つかのように。
格闘特化の男のヤンデレは、傷だらけの身体を起こした。
「……見事な方でした。あと一撃で、私は負けていたでしょう」
彼は国王を見つめ、心からその実力を認めた。
国王は意識を失っていた。
しかし、その姿は最後まで王としての誇りを失っていなかった。
## 三匹の子豚、自由になれず
その様子を見ていた主人公は、拳を握った。
「だったら、次は俺が――」
「え?」
ヤンデレ十人が一斉に主人公を見た。
「ご主人様、何をおっしゃっているのですか?」
「いや、だから次は俺が戦うんだよ!」
森羅万象のヤンデレが、不思議そうに首を傾げた。
「ご主人様に勝負する権利はありませんよ?」
「……は?」
「今回の勝負は、私たちが用意した最後のチャンスです。参加するのは、豚になってしまった三人。ご主人様はそのうちの一人ですが、そもそもご主人様を自由にするための勝負ではありませんから」
「いや、俺も豚になってただろうが!」
「はい♡ ですから、元の姿に戻して差し上げました」
「そういう問題じゃねえ!」
慈愛のヤンデレが、にこやかに主人公の腕を取った。
「さあ、ご主人様。お帰りの時間ですよ」
「待て! 国王はまだ気絶してるし、ゲイバーのお兄さんは彼方に吹き飛ばされたままだろうが!」
「お二人とも、あとで回収して差し上げます♡」
「回収って言い方をするな!」
森羅万象のヤンデレが指を動かすと、主人公の身体がふわりと浮き上がった。
「それでは、皆さん。撤収しましょう」
「おい! 俺の意思は!? 自由を懸けた勝負はどうなったんだよ!?」
「ご主人様は最初から、私たちと一緒に帰る予定ですよ?」
「そんな予定はねえええええええええ!!」
こうして主人公は、勝負に参加することすら許されず、ヤンデレ十人に連れ去られた。
ゲイバーのお兄さんは遥か彼方で気絶し、国王は拳を握りしめたまま立ち尽くしていた。
そしてヤンデレたちは、主人公を連れて楽しそうに帰路についた。
三匹の子豚の物語は、三人のうち一人も自由になれないまま幕を閉じた。




