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ヤンデレたちに邪悪龍を任せたら、世界より先に俺の股間が危機に陥った

翌朝。


主人公が目を覚ますと、魔道のヤンデレがベッドのそばに立っていた。


「ご主人様♡ おはようございますわ♡」


「……何だよ。朝っぱらから」


「少々、確認していただきたいことがありますの♡」


魔道のヤンデレは、いつになく真剣な表情を浮かべていた。


その様子を見て、主人公は嫌な予感を覚えた。


「……まさか、また面倒なことが起きたのか?」


「ええ……。おそらく、重大な問題ですわ」


そこへ、監視特化のヤンデレ、化学特化のヤンデレ、薬物専門のヤンデレもやってきた。


三人は主人公の股間をじっと見つめた。


「……おい。何を見てるんだ?」


監視特化のヤンデレが、慎重に指を差した。


「ご主人様……股間に、ヒビが入っていますわ」


「…………は?」


主人公は自分の股間を見た。


そこには、細かな亀裂が走っていた。


まるで、何かの表面に長年負荷がかかり続けた結果、ひび割れが生じたかのようだった。


「……何だよ、これ」


主人公の顔が引きつった。


「おい。俺の身体に、こんなものができる理由があるのか?」


誰も答えられなかった。


化学特化のヤンデレが分析を始めた。


「通常の損傷ではありませんわ……。表面だけではなく、内部にも異常が発生しています」


薬物専門のヤンデレも顔を曇らせた。


「魔力の流れも不安定ですわ。まるで、長期間にわたって負荷を受け続けたかのようです……」


魔道のヤンデレは、主人公の股間を見つめたまま呟いた。


「……まさか」


主人公は、ゆっくりとヤンデレたちを振り返った。


「……お前ら」


その声は低かった。


「今まで何回、俺の股間から龍を召喚した?」


「ええと……」


「国王を若返らせたとき!」


「はい♡」


「十傑を蘇らせたとき!」


「はい♡」


「その出来事をなかったことにしたとき!」


「はい♡」


「その他にも、散々やったよな!?」


「はい♡」


主人公は頭を抱えた。


「やっぱりお前らじゃねえかああああああああ!!」


その瞬間だった。


**ピシッ。**


股間に刻まれた亀裂が、わずかに広がった。


黄金色の光が、ヒビの隙間から漏れ出す。


「……え?」


魔道のヤンデレが息をのんだ。


**ピシッ、ピシピシッ。**


亀裂が増えていく。


化学特化のヤンデレは、慌てて測定器を確認した。


「そんな……! 内部のエネルギーが急激に上昇していますわ!」


薬物専門のヤンデレが叫んだ。


「このままでは、何かが外へ出てしまいます!」


「何かって何だよおおおおおおお!!」


主人公の叫びが響いた。


そして――。


**ピシィィィッ!!**


ひときわ大きな亀裂が走った。


股間から、黒い煙が噴き出した。


煙は天井を突き破り、空高く昇っていく。


屋敷の外では、空が急速に暗くなり始めていた。


「な、何ですの、これは……!」


森羅万象のヤンデレでさえ、笑顔を失った。


黒煙は渦を巻き、巨大な龍の姿を形作っていった。


しかし、その姿はいつもの龍とは違っていた。


全身から漂う、邪悪な気配。


濁りきったエネルギー。


世界そのものを脅かすほどの、圧倒的な存在感。


龍はゆっくりと眼下を見下ろした。


「……ようやく、外へ出られたか」


主人公は顔面蒼白になった。


「……おい。まさか、今までのツケが回ってきたのか?」


龍は答えた。


「そのとおりだ」


その瞬間、龍の身体が激しく震えた。


黒煙が七つに分裂し、それぞれが異なる姿へと変化していく。


炎をまとった龍。


氷のような冷気を放つ龍。


毒々しい霧をまとう龍。


電撃を帯びた龍。


風を操る龍。


大地を揺るがす龍。


そして、ほかの六体をも圧倒する、禍々しい気配を放つ龍。


七体の邪悪龍が、空に出現した。


魔道のヤンデレは、呆然と空を見上げた。


「……そんな。まさか、本当に……」


森羅万象のヤンデレも、初めて言葉を失った。


主人公は震える指で空を指した。


「お前ら……」


十人のヤンデレたちが、主人公を振り返った。


「俺の股間を、何だと思ってるんだああああああああああああ!!」


主人公の叫び声が、七体の邪悪龍の咆哮にかき消された。


ヤンデレたちが何度も龍を召喚し、願いを叶えさせてきた、その代償。


ついに、それが形となって現れたのだ。


こうして翌朝、ヤンデレたちの予想をはるかに超える災厄が幕を開けた。


## 邪悪龍編――空から降る波動砲


主人公の股間から出現した七体の邪悪龍は、世界各地へと散っていった。


それぞれが異なる力を持ち、世界を混乱に陥れようとしていた。


しかし、彼らは知らなかった。


この世界には、彼ら以上に理不尽な存在がいることを。


### 第一の災厄――毒の龍


ある荒野。


二星龍は、毒々しい霧を周囲にまき散らしていた。


「フハハハハ! この毒の霧で、世界を汚染してやる!」


大地は汚れ、草木は枯れ、空気までもが濁っていく。


二星龍は満足そうに笑った。


その瞬間だった。


空が光った。


「……ん?」


二星龍が顔を上げた。


雲の上から、巨大な光の柱が降ってきた。


「な、何だあれは――」


ドゴオオオオオオオオオオオオオン!!


波動砲が荒野を直撃した。


毒の霧も、大地も、二星龍も、すべてが光に飲み込まれた。


光が消えたとき、そこには巨大なクレーターだけが残っていた。


二星龍は消滅した。


### 第二の災厄――電撃の龍


別の場所。


五星龍は、電気を吸収して力を増していた。


「ククク……電気があればあるほど、俺は強くなる!」


全身から電撃を放ち、周囲を破壊していく。


しかし、そのときだった。


雲一つない空から、突然光が降ってきた。


「……は?」


ドゴオオオオオオオオオオオオオン!!


「な、何だあああああああ!?」


五星龍は電撃を放つ暇すらなかった。


波動砲は大地を貫き、五星龍を跡形もなく吹き飛ばした。


電気を吸収する能力も、突然空から降ってくる攻撃には何の役にも立たなかった。


五星龍、消滅。


### 第三の災厄――竜巻の龍


海沿いの街。


六星龍は風を操り、巨大な竜巻を発生させていた。


「さあ、私の力で街ごと吹き飛ばして差し上げますわ!」


竜巻が建物を巻き上げ、海面が荒れ狂う。


六星龍は優雅に空を舞った。


そのとき。


上空が光り輝いた。


「……え?」


六星龍が振り返る。


空から、極太の波動砲が垂直に落下してきた。


「ちょ、ちょっと待ちなさい! 話が――」


ドゴオオオオオオオオオオオオオン!!


竜巻ごと、六星龍が光に包まれた。


波動砲は海面を貫き、巨大な水柱を上げた。


やがて波が引いたとき、六星龍の姿はどこにもなかった。


### 第四の災厄――大地の龍


山岳地帯。


七星龍は地中を掘り進み、地震を引き起こしていた。


「ハハハハ! 大地は俺のものだ! 誰にも止められん!」


地割れが走り、山が崩れていく。


七星龍は地中から地上へ飛び出し、勝ち誇ったように吠えた。


その瞬間。


空が光った。


「またか!?」


七星龍は慌てて地中へ潜ろうとした。


しかし、間に合わなかった。


ドゴオオオオオオオオオオオオオン!!


山そのものが消し飛んだ。


地面の下まで貫通した波動砲は、七星龍を逃がさなかった。


「ぐおおおおおおおおおっ!!」


叫び声は、轟音の中に消えた。


七星龍、消滅。


### 第五の災厄――炎の龍


最後の場所。


四星龍が、灼熱の炎をまとっていた。


「この熱量の前では、何者も近づけまい!」


全身から凄まじい熱が放たれ、周囲の岩石が赤く溶け始める。


四星龍は空を見上げた。


「ほかの邪悪龍たちも、今頃は世界を支配し始めているはずだ」


そのとき、雲の向こうに光が見えた。


「……何だ?」


光が、みるみる大きくなる。


四星龍は身構えた。


「まさか……攻撃か!?」


ドゴオオオオオオオオオオオオオン!!


波動砲が降り注いだ。


四星龍は炎を放って迎撃しようとしたが、波動砲は炎ごとすべてを飲み込んだ。


「バカな……この俺が……こんなところで……!」


四星龍の姿も、光の中に消えていった。


### そして、五体が消えた


こうして、世界各地に散った五体の邪悪龍が、わずかな時間のうちに消滅した。


毒の龍も、電撃の龍も、竜巻の龍も、大地の龍も、炎の龍も。


彼らは、何が起きたのか理解することすらできなかった。


共通していたのは、ただ一つ。


**空から突然、波動砲が降ってきたこと。**


そして、その攻撃を放った張本人は――。


主人公の屋敷で、魔道のヤンデレが満足そうに手を下ろしていた。


「ふふ♡ やっぱり、波動砲は最高ですわね♡」


主人公は窓の外を見つめ、ゆっくりと振り返った。


「……お前、今、世界中に波動砲を撃ったのか?」


「はい♡ 五体ほど消し飛ばしましたわ♡」


「ほど、じゃねえええええええええ!!」


魔道のヤンデレは、きょとんとした。


「でも、ご主人様のお屋敷に被害はありませんわよ♡」


「そういう問題じゃねえ!!」


彼女は嬉しそうに微笑んだ。


「ご主人様♡ 残り二体も、波動砲でお片付けいたしましょうか?」


主人公は頭を抱えた。


すると、魔道のヤンデレは、何かを思いついたように手を叩いた。


「あら♡ いいことを思いつきましたわ!」


「……今度は何だよ」


「邪悪龍が現れるたびに片付ければ、また龍を呼べるじゃありませんの♡」


「…………は?」


魔道のヤンデレは、名案を思いついたとばかりに目を輝かせた。


「邪悪龍を倒して、また龍を召喚して、お願いを叶えてもらうのですわ♡ そして、また邪悪龍が現れたら片付ければいいのです♡ これなら永久に龍を呼び続けられますわね♡」


「お前、反省という言葉を知らねえのかあああああああ!!」


「まあ♡ ご主人様ったら、そんなに怒らなくても♡」


「そもそも、その邪悪龍が生まれた原因を考えろおおおおおお!!」


魔道のヤンデレは首を傾げた。


「……あら?」


そして、満面の笑みを浮かべた。


「では、邪悪龍を片付ける担当は私にお任せくださいませ♡」


「そういう問題じゃねええええええええ!!」


邪悪龍が世界を滅ぼす前に、魔道のヤンデレが五体を消滅させた。


そして今、彼女はその出来事から何も学ばず、次の龍を呼ぶための計画を立てていた。


残る邪悪龍は、あと二体。


しかし主人公は、それ以上に恐ろしい未来を想像していた。


「……頼むから、もう二度と俺の股間から龍を呼ぶなあああああああ!!」


一星龍と三星龍だった。


第六の災厄――三星龍、突然の説教


世界各地に散った邪悪龍のうち、五体は魔道のヤンデレが放った波動砲によって消滅した。


残る邪悪龍は、三星龍と一星龍。


その頃、三星龍は自分の縄張りで、冷気を放ちながら周囲を凍らせていた。


「さて……ほかの邪悪龍たちはどうなったのでしょうか。五体も突然消滅した以上、慎重に行動する必要がありますね」


三星龍は周囲を見渡した。


「まずは、この場所を拠点にして、状況を――」


その瞬間だった。


「……ん?」


身体が浮いた。


「……は?」


次の瞬間、三星龍の身体は凄まじい力で空へ引きずり上げられた。


「な、何ですかこれは!?」


三星龍は冷気を放ち、地面にしがみつこうとした。


しかし、無駄だった。


見えない力が身体全体を包み込み、強引に引っ張っていく。


「ちょ、ちょっと待ちなさい! 私はまだ何もしていませんよ!?」


抵抗もむなしく、三星龍は空を飛び、山を越え、雲を突き抜けていった。


そして――。


ドゴッ!


主人公の自宅に到着した。


「……一体、何が起きたのですか?」


三星龍は床に転がりながら、周囲を見回した。


目の前には主人公。


その周囲には、十人のヤンデレたち。


そして、三星龍の身体には、見えない重力がかかっていた。


「……え?」


森羅万象のヤンデレが、にっこりと微笑んだ。


「いらっしゃいませ♡」


「……いや、どちら様ですか?」


「正座してくださいませ♡」


「……はい?」


重力が強まった。


「ぐっ……!」


三星龍の身体は無理やり床に押しつけられ、両脚を揃えた正座の姿勢に固定された。


「ちょ、ちょっと待ちなさい! 何なのですか、あなた方は!? 私は何もしていませんよ!」


森羅万象のヤンデレは、主人公のほうを振り返った。


「ご主人様♡ 連れてまいりましたわ♡」


「……何でだよ」


主人公は頭を抱えた。


「何で、そこら辺にいた邪悪龍を勝手に連れてくるんだよ……」


「だって、ご主人様の股間に迷惑をかけた原因の一つですもの♡」


「原因の一つって何だよ!」


森羅万象のヤンデレは、三星龍に向き直った。


「さて、三星龍さん♡」


「……何でしょうか?」


「ご主人様の股間にヒビが入った件について、説明していただきますわ♡」


「…………は?」


三星龍は目を見開いた。


「いや、待ってください。私は今日、ここに来たのが初めてですよ? そもそも、あなた方の股間がどうなろうと、私には――」


「正座ですわ♡」


「もう正座していますよ!?」


森羅万象のヤンデレは、穏やかな声で説教を始めた。


「よろしいですか? ご主人様の股間から龍が何度も召喚され、そのたびに世界が改変され、死者が蘇り、さらに出来事そのものがなかったことにされましたの♡」


「……それは、私のせいではないのでは?」


「ところが、あなたも邪悪龍の一体ですわ♡」


「その理屈はおかしいでしょう!?」


「邪悪龍が現れたせいで、ご主人様は大変なご迷惑を被っているのです♡」


「私はまだ何もしていません!」


「ご主人様の股間にヒビが入っているのですよ?」


「それと私に何の関係があるのですかああああああ!!」


三星龍の悲鳴が、屋敷に響き渡った。


森羅万象のヤンデレは、少しも動じなかった。


「反省してくださいませ♡」


「何を反省しろというのですか!?」


「ご主人様の股間に迷惑をかけたことですわ♡」


「だから、私は関係ないでしょう!?」


「口答えですか?」


重力が、さらに強まった。


「ぐおおおおおおおおおっ!!」


三星龍は床に押しつけられた。


「わ、分かりました! 分かりましたから! 少しは話を聞いてください!」


森羅万象のヤンデレは、満足そうに頷いた。


「よろしいですわ♡ それでは、今後は主人公様の股間に迷惑をかけないよう、気をつけてくださいませ♡」


「……だから、私は何もしていないのですが」


「返事は?」


「……はい」


「もっと元気よく♡」


「はいっ!!」


「よろしいですわ♡」


主人公は、その光景を呆然と見つめていた。


「……何なんだよ、この時間」


三星龍は正座させられたまま、主人公を見た。


そして、静かに言った。


「……あなたも大変ですね」


「お前もな……」


奇妙な連帯感が生まれた、その瞬間。


森羅万象のヤンデレが、二人の肩に手を置いた。


「まあ♡ お二人とも、すっかり仲良しですわね♡」


「「誰のせいだと思っているんだ!!」」


二人の叫び声が、屋敷中に響き渡った。


しかし、三星龍はまだ知らなかった。


森羅万象のヤンデレが、ずっと重力をかけ続けていることを。


時間が経つにつれて、圧力は少しずつ強くなっていた。


「……ぐっ、そろそろ……限界です……!」


三星龍は必死に耐えた。


しかし、邪悪龍の身体も、無限に重力に耐えられるわけではなかった。


「ちょっと……待ちなさい……! 私は……本当に……何も……!」


「まあ♡ まだ反省が足りませんわね♡」


森羅万象のヤンデレは、さらに重力を強めた。


「ぐおおおおおおおおおおおおっ!!」


ついに、三星龍の身体は重力に耐えられなくなった。


その姿が歪み、光の粒子となって崩れていく。


「そ、そんな……私が……こんな……ところで……!」


そして、三星龍は消滅した。


「まあ♡ これで一件落着ですわね♡」


森羅万象のヤンデレは、満足そうに微笑んだ。


主人公は頭を抱えた。


「……説教してただけなのに、邪悪龍を消滅させるなああああああ!!」


こうして、三星龍もまた、主人公の股間に迷惑をかけたという理不尽な理由で、この世から姿を消した。


残る邪悪龍は、あと一体。


一星龍だけだった。


「……そういえば」


森羅万象のヤンデレが、主人公を振り返った。


「最近、主人公様の活躍を見ていませんわ♡」


「……は?」


「ここ最近は、国王様と十傑の戦いだの、邪悪龍のお片付けだの、私たちばかり活躍しているではありませんか♡」


「お前らが勝手に始めたんだろうが!」


「ですから、そろそろ主人公様にも活躍していただきたいのですわ♡」


その瞬間、遠くの空が黒く染まった。


残された最後の邪悪龍、一星龍が姿を現したのだ。


「……ほう。俺以外の邪悪龍を、ほとんど消し去ったというのは貴様らか」


一星龍は、冷酷な眼差しでヤンデレたちを見渡した。


「だが、俺はほかの邪悪龍とは違う。貴様らの遊びも、ここまでだ」


森羅万象のヤンデレは、ぱっと顔を輝かせた。


「あら♡ ちょうどよかったですわ♡」


彼女は主人公の背中を、ぽんと叩いた。


「主人公様♡ あちらの方と、遊んできてくださいませ♡」


「……は?」


「最近、活躍していらっしゃいませんもの♡」


「いや待て! あいつは邪悪龍の親玉だろうが!」


「ええ♡ ですから、活躍のしがいがありますわね♡」


「そういう問題じゃねええええええええ!!」


一星龍は、主人公をじっと見つめた。


「……貴様が俺の相手だと?」


主人公は頭を抱えた。


「なんでこうなるんだよ……」


森羅万象のヤンデレは、楽しそうに手を叩いた。


「それでは、一星龍さん♡ 主人公様の活躍を、たっぷり見せていただきましょう♡」


こうして主人公は、本人の意思とは関係なく、邪悪龍編の最終決戦へと放り込まれる


ことになった。


## 邪悪龍編――股間封印!主人公、まさかの必殺技封じ


「……そういえば」


森羅万象のヤンデレが、主人公を見つめた。


「最近、主人公様の活躍を見ていませんわ♡」


「……は?」


「国王様と十傑の戦いも、邪悪龍のお片付けも、私たちばかり活躍しているではありませんか♡」


「お前らが勝手にやったことだろうが!」


森羅万象のヤンデレは、楽しそうに手を叩いた。


「あら♡ ちょうどよいところに、最後の邪悪龍が残っていますわね♡」


その視線の先には、一星龍がいた。


五体の邪悪龍は魔道のヤンデレの波動砲で消滅し、三星龍も森羅万象のヤンデレに重力で押し潰されて消滅した。


残る邪悪龍は、あと一体。


七体の頂点に立つ、一星龍だった。


「……貴様が、最後の邪悪龍か」


一星龍は冷酷な目で主人公を見た。


「ほかの邪悪龍を消し去った者たちの仲間というわけか。ならば、貴様から始末してやろう」


森羅万象のヤンデレは、主人公の背中をぽんと叩いた。


「さあ、主人公様♡ 頑張ってくださいませ♡」


「……待て」


主人公は、自分の股間に視線を落とした。


そこには、まだ亀裂が入っていた。


「……俺、股間にヒビが入ってるんだけど」


「はい♡」


「ムスコクラッシュ、使えないじゃん」


「そうですわね♡」


「ムスコエナジーも使えないじゃん」


「そうですわね♡」


「『俺が股間になることだ』も、できないじゃん!」


「まあ♡ 大変ですわね♡」


「他人事みたいに言うなあああああああ!!」


主人公は森羅万象のヤンデレに詰め寄った。


「そもそも、このヒビはお前らが龍を何度も召喚したせいだろうが!」


「ですが、ご主人様♡」


森羅万象のヤンデレは、にっこりと微笑んだ。


「必殺技が使えなくても、主人公様には素晴らしい身体能力がありますわ♡」


「そういう問題じゃねえ!」


「さあ♡ 世界中の皆様に、主人公様の活躍を見せて差し上げましょう♡」


監視特化のヤンデレが、すでに配信を開始していた。


『緊急生中継! 主人公様対邪悪龍・一星龍!』


「勝手に配信するなああああああ!!」


一星龍は、目の前のやり取りを見ていた。


そして、鼻で笑った。


「……なるほど。貴様、自慢の技が使えないのか」


主人公の顔が引きつった。


「……聞こえてたのかよ」


「フン。ならば話は早い。貴様を倒し、この世界を我がものにしてくれる!」


一星龍が踏み込んだ。


その瞬間、地面が砕けた。


「うおっ!」


主人公は紙一重で拳をかわした。


一星龍の拳が背後の岩山に直撃する。


轟音。


巨大な岩山が、粉々に砕け散った。


「……なるほど。こいつ、相当強いな」


主人公は拳を構えた。


「だが、必殺技が使えなくても、俺には普通の戦闘能力がある!」


主人公は一星龍へ突進した。


拳を放つ。


一星龍は腕で受け止めた。


衝撃波が走り、周囲の木々が吹き飛ぶ。


主人公は続けざまに蹴りを放ち、一星龍の腹部を狙った。


しかし、一星龍は後方へ跳んで回避した。


「ほう……。股間の技が使えずとも、この程度の力は残っているか」


「当たり前だ!」


主人公は再び踏み込んだ。


拳と拳が激突する。


一撃。


二撃。


三撃。


主人公は決して弱くなかった。


魔王ルシファーを倒し、大天使ミカエルとも戦い、次元に穴を開けた男である。


股間の必殺技が封じられた程度で、簡単に倒れる主人公ではない。


だが、一星龍はそれを上回っていた。


主人公の拳を受け流し、鋭い蹴りを叩き込む。


「ぐっ!」


主人公の身体が吹き飛んだ。


地面を転がり、何とか立ち上がる。


「……強えな、お前」


「当然だ。俺は邪悪龍の頂点に立つ存在だからな!」


一星龍が両手を広げた。


凄まじい負のエネルギーが集束していく。


「これで終わりだ!」


黒いエネルギー弾が放たれた。


主人公は横へ跳び、直撃を避けた。


だが、爆発の余波で地面がえぐれ、主人公の身体が再び吹き飛ばされた。


「ぐあああああっ!」


主人公は地面に片膝をついた。


その様子を見て、森羅万象のヤンデレは目を輝かせた。


「まあ♡ 主人公様、頑張っていらっしゃいますわ♡」


「頑張ってる場合かああああああ!!」


主人公は叫んだ。


「お前ら、少しは助けろ!」


「ええ♡ でも、主人公様の活躍を見たいのですもの♡」


「今まさに負けそうなんだよ!」


魔道のヤンデレが、楽しそうに提案した。


「ご主人様♡ どうしても困ったら、私が波動砲で援護して差し上げますわ♡」


「お前は五体の邪悪龍を吹き飛ばしただろうが! 今度は俺まで吹き飛ばす気か!」


「まあ♡ それは困りますわね♡」


「困るなら撃つなよ!」


一星龍は、そんな主人公たちを見ていた。


そして、呆れたように呟いた。


「……貴様ら、本当に世界を救う気があるのか?」


「ない!」


主人公は即答した。


「俺はただ、平穏な生活を取り戻したいだけなんだよ!」


森羅万象のヤンデレが、嬉しそうに微笑んだ。


「まあ♡ 主人公様ったら、照れ屋さんですわね♡」


「照れてねえええええええ!!」


一星龍は額を押さえた。


「……もういい。貴様らまとめて消し去ってくれる!」


再び、黒いエネルギーが集束する。


主人公は立ち上がり、拳を握りしめた。


股間の必殺技は使えない。


ムスコクラッシュも、ムスコエナジーも、「俺が股間になることだ」も封印されている。


それでも、戦うしかなかった。


「……くそっ!」


主人公は一星龍へ突進した。


「必殺技が使えなくても、俺は俺だあああああああ!!」


その姿を見て、森羅万象のヤンデレは感激した。


「素晴らしいですわ♡ やはり主人公様は最高ですわ♡」


監視特化のヤンデレは、配信画面に向かって告げた。


『皆様、ご覧ください! 主人公様が必殺技を封じられながらも、邪悪龍の頂点に挑んでいます!』


「実況するなあああああああ!!」


主人公の叫びが、戦場に響き渡った。


そして一星龍は、心底うんざりした顔をしていた。


「……俺は、世界を滅ぼすために生まれたはずなのだが?」


森羅万象のヤンデレは、にっこりと微笑んだ。


「ええ♡ ですが、まずは主人公様の活躍を見届けてくださいませ♡」


「知るかあああああああ!!」


こうして、邪悪龍編最後の戦いは始まった。


主人公は必殺技を封じられ、一星龍は理解不能なヤンデレたちに囲まれ、森羅万象の


ヤンデレは観戦を楽しんでいた。


## 邪悪龍編――一星龍、必死の逃走


主人公と一星龍の戦いは、激しさを増していた。


主人公は股間の必殺技を封じられていたが、それでも圧倒的な戦闘能力を誇っていた。


一方、一星龍もまた、七体の邪悪龍の頂点に立つ存在だった。


「思い上がるな、人間!」


一星龍が腕を振るった。


瞬間、凄まじいマイナスエネルギーが爆発した。


大地が裂け、山が崩れ、衝撃波が周囲の地形を一瞬で吹き飛ばす。


主人公は間一髪で回避した。


「うおっ! なんつう威力だ!」


「どうした! その程度か!」


一星龍は主人公を追撃した。


拳がぶつかり合うたびに、空気が震え、地面に巨大な亀裂が走る。


主人公も負けてはいなかった。


鋭い蹴りを叩き込み、一星龍の身体を後方へ押し戻す。


しかし、一星龍はすぐに体勢を立て直した。


「この程度の攻撃で、俺を倒せると思うな!」


一星龍の身体から、黒いエネルギーが噴き上がった。


彼は両手を広げ、周囲のマイナスエネルギーを吸収し始めた。


大地から、空から、周囲に漂う邪悪な力が一星龍の身体へと集まっていく。


その巨体が、さらに禍々しいエネルギーをまとった。


「見せてやろう……邪悪龍の頂点に立つ者の力を!」


一星龍が腕を振り下ろした。


巨大な黒いエネルギー弾が、主人公めがけて放たれた。


主人公は横へ飛び退いた。


直撃を免れたエネルギー弾は、そのまま彼方の山脈へと飛んでいった。


次の瞬間、山脈が消し飛んだ。


「……おいおい。あんなの食らったら、さすがにまずいぞ!」


そのときだった。


主人公は、一星龍の懐へ踏み込んだ。


そして、その耳元で小さく囁いた。


「……おい。一つ忠告しておく」


「何だ?」


「俺と互角に戦って、戦闘が長引いた場合……お前は森羅万象のヤンデレに消されるぞ」


一星龍の動きが止まった。


「……何?」


主人公は、ヤンデレたちに聞こえないよう声を潜めた。


「あたりを見渡してみろ。あいつらにとって、この戦いは遊びなんだ。俺が本気で戦っている姿を見たいだけで、お前の命なんかどうでもいい」


一星龍は、ゆっくりと周囲を見渡した。


森羅万象のヤンデレは、頬に手を当てながら二人の戦いを眺めていた。


「まあ♡ 主人公様ったら、とても頑張っていらっしゃいますわね♡」


魔道のヤンデレは、すでに両手に魔力を集めていた。


「いつでも波動砲を撃てますわよ♡」


慈悲のヤンデレは、笑顔で手を振っていた。


「傷ついても、何度でも治して差し上げますわ♡」


さらに監視特化のヤンデレは、戦闘の様子を世界中に配信していた。


『主人公様対一星龍! 世紀の決戦、絶賛配信中ですわ♡』


一星龍の顔が引きつった。


「……何だ、こいつらは」


「分かったか?」


主人公は小声で続けた。


「お前がどれほど強くても、あいつらにとってはただの遊び道具だ。俺と互角に戦えば戦うほど、戦闘が長引く。そうなれば、あいつらは退屈して、お前を消す」


一星龍は、ヤンデレたちを見つめた。


森羅万象のヤンデレと目が合った。


彼女は、にっこりと微笑んだ。


「一星龍さん♡ 頑張ってくださいませ♡」


一星龍の背筋に、これまで感じたことのない悪寒が走った。


今まで、彼は自分こそが絶対的な存在だと思っていた。


世界を破壊し、悟空を圧倒し、ほかの邪悪龍さえも従える力。


しかし、目の前の十人は違う。


彼女たちは、自分の戦闘力を測っているのではない。


どれだけ自分が強いかなど、最初から興味がないのだ。


彼女たちが見ているのは、主人公の活躍だけだった。


一星龍は、ようやく理解した。


「……冗談ではない」


その声は、かすかに震えていた。


「俺は世界を支配するために生まれたのだ。こんな場所で、くだらぬ遊びに付き合っていられるか!」


主人公は頷いた。


「分かったなら、話は早い」


主人公は拳を握りしめた。


「今から俺がお前を殴る。お前は盛大に吹き飛べ」


「……何?」


「いいから、合わせろ!」


主人公の拳が、一星龍の顔面に叩き込まれた。


「ぐおおおおおおおおおっ!!」


一星龍の巨体が、猛烈な勢いで吹き飛んだ。


しかし、彼はただ吹き飛ばされただけではなかった。


空中で身体をひねり、凄まじいマイナスエネルギーを噴射する。


その推進力で体勢を立て直すと、さらに空を蹴るように加速した。


「さらばだ! 俺はもう二度と戻らんぞ!」


一星龍は全速力で飛び去った。


その速度は、先ほどまでの戦闘とは比較にならなかった。


雲を突き破り、山脈を越え、地平線の彼方へと一気に駆け抜けていく。


「は、速えええええええ!!」


主人公は思わず叫んだ。


一星龍は、逃げることに全力を注いでいた。


背後から迫る気配を警戒し、何度も進路を変え、マイナスエネルギーを爆発させて加速する。


「冗談ではない! 俺は邪悪龍の頂点だぞ! こんなところで、あのような連中の遊び相手になってたまるか!」


一星龍は歯を食いしばった。


「まずは距離を取る! その後、宇宙の果てまで逃げれば――!」


その瞬間だった。


「……あら?」


魔道のヤンデレが、首を傾げた。


「一星龍さん、どこへ行かれるのですか?」


「知るかあああああああ!!」


一星龍は振り返り、さらに加速した。


その全身から黒いエネルギーが噴き出し、空間が歪むほどの速度で飛び続ける。


しかし、魔道のヤンデレは慌てなかった。


「せっかく主人公様が活躍なさったのに、逃げるなんてもったいないですわ♡」


彼女は両手を掲げた。


膨大な魔力が一点に集束していく。


主人公の顔が青ざめた。


「……おい、待て」


極太の光線が形成される。


「お前、まさか――」


「波動砲ですわ♡」


ドゴオオオオオオオオオオオオオン!!


地形を吹き飛ばすほどの威力を持つ波動砲が、一星龍へ向かって放たれた。


一星龍は、背後から迫る光を感知した。


「なっ!?」


彼は即座に急旋回した。


波動砲が、ほんのわずかな差で脇を通り過ぎた。


しかし、その余波だけで、遠くの山々が消し飛んだ。


「なんという威力だ……!」


一星龍は息をのんだ。


「だが、直撃さえ避ければ――」


第二射が放たれた。


「なにっ!?」


一星龍は身体をひねり、黒いエネルギーの盾を展開した。


波動砲が盾に直撃する。


凄まじい衝撃が発生し、空が白く染まった。


一星龍は全力でマイナスエネルギーを注ぎ込み、波動砲を押し返そうとした。


「ぐおおおおおおおおおっ!!」


黒い盾が、少しずつひび割れていく。


「この俺が……こんな攻撃に……!」


第三射。


一星龍は盾を捨て、全速力で横へ飛んだ。


波動砲が空を貫き、雲を消し飛ばす。


第四射。


一星龍は急降下し、海面すれすれを飛んだ。


波動砲が海を割り、巨大な水柱が立ち上った。


第五射。


第六射。


第七射。


波動砲は、一星龍を追い詰めるように連射された。


一星龍は必死に飛び回った。


急旋回し、急降下し、急上昇する。


そのたびに波動砲が背後をかすめ、山を消し、海を割り、大地をえぐっていく。


一星龍は、これまでの戦いで見せた余裕を完全に失っていた。


「なぜだ……! なぜ、これほどの攻撃を連射できるのだ!?」


第八射。


一星龍の左腕を光線がかすめた。


「ぐおっ!」


黒いエネルギーが飛び散る。


第九射。


今度は背後から迫った波動砲が、一星龍の逃げ道を塞いだ。


彼は最後の力を振り絞り、マイナスエネルギーを爆発させた。


身体が一気に加速する。


「俺は……俺は邪悪龍の頂点だあああああああ!!」


第十射。


ついに、一星龍の進路を波動砲が捉えた。


「しまっ――!」


ドゴオオオオオオオオオオオオオン!!


波動砲が直撃した。


一星龍は全身を黒いエネルギーで覆い、必死に耐えた。


彼の力は、決して弱くなかった。


光線の中で何度も反撃を試み、マイナスエネルギーを爆発させて脱出しようとした。


しかし、波動砲は止まらなかった。


大地を吹き飛ばすほどの光線が、一星龍の抵抗を押し潰していく。


「バカな……! 俺が……俺がああああああああ!!」


ついに、一星龍のエネルギーが限界を迎えた。


光が空を覆い尽くした。


そして、すべてが静まり返った。


一星龍の姿は、どこにもなかった。


空には、巨大な光の残滓だけが漂っていた。


魔道のヤンデレは、満足そうに手を下ろした。


「汚い花火ですね♡」


主人公は、呆然と空を見上げていた。


「……お前、今、邪悪龍の頂点を倒したんだぞ」


「はい♡ ご主人様の活躍を邪魔しないよう、少しだけお手伝いしましたわ♡」


「少しだけじゃねええええええええ!!」


森羅万象のヤンデレが、嬉しそうに拍手した。


「まあ♡ 主人公様、一星龍を倒しましたわね♡ 素晴らしいご活躍でしたわ♡」


「俺、最後はほとんど何もしてねえだろうが!!」


「そんなことありませんわ♡ 最初に吹き飛ばしたのは主人公様ですもの♡」


監視特化のヤンデレが、配信画面に向かって告げた。


『主人公様、一星龍を撃破! 邪悪龍編、ついに決着ですわ♡』


主人公は頭を抱えた。


一星龍は強かった。


本当に強かった。


だからこそ、自分の命を守るために全力で逃げた。


それでも最後には、魔道のヤンデレの波動砲から逃れられなかった。


そして主人公は、またしてもヤンデレたちの遊びに巻き込まれた。


「……もう二度と戦わねええええええええ!!」


主人公の悲鳴が、晴れ渡った空に響き渡った。

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