三日間だけ自由になりたい俺、ヤンデレ10人の恋愛スタンプラリーに巻き込まれる
主人公は、疲れ果てていた。
十人のヤンデレたちによる、連日の宴。
体力は限界を超え、もはや干物のような状態である。
「もう嫌だ……。頼むから、三日間だけでいい。一人にしてくれ……」
主人公は魔導特化のヤンデレと科学特化のヤンデレの前で、土下座した。
「魔法でも科学でも、俺の居場所を絶対に特定できない道具を作ってくれ! 頼む!」
二人は顔を見合わせた。
「分かりましたわ♡」
「主人公様のお願いですものね♡」
こうして二人は、魔法による探知も科学技術による監視も完全に回避できる道具を作り上げた。
主人公はそれを受け取ると、涙を流して喜んだ。
「ありがとう……! 本当にありがとう……!」
こうして、主人公の三日間の逃避行が始まった。
しかし、主人公は知らなかった。
十人のヤンデレたちが、すでに裏で計画を進めていたことを。
その名も、
「主人公様・三日間の自由恋愛体験スタンプラリー」
監視のヤンデレが作成したチェックリストには、十人それぞれの担当と遭遇予定場所が記されていた。
十人は互いに協力し、主人公に気づかれないよう、それぞれ別人に変装して接触することにしたのだ。
もちろん、十人の仲は良好である。
誰一人として嫉妬したり、出し抜こうとしたりする者はいない。
全員が、主人公との偶然の出会いを心待ちにしていた。
主人公が街へ出ていった直後。
ビルの屋上では、監視特化型のヤンデレが大型のビデオカメラを構えていた。
高解像度レンズに、望遠撮影用の機材、長時間録画に対応した記録装置。さらに、撮影データを保存するための専用ストレージまで用意されている。
「ふふふ♡ 主人公様の三日間の自由恋愛体験……最初から最後まで、余すところなく記録いたしますわ♡」
彼女はカメラの設定を確認した。
「魔法でも科学でも居場所を特定できない道具、ですか……。さすがは主人公様。対策が完璧ですわね♡」
主人公の居場所を直接探知することはできない。
しかし、十人はあらかじめ主人公が立ち寄りそうな場所を予測し、各自の担当場所で待機する計画を立てていた。
「居場所を探知できなくても、偶然の出会いを記録することはできますもの♡」
監視特化型は、録画ボタンを押した。
「ゲイバーでの出会い、教会での懺悔、公園での交流、そして高級フランス料理店でのお食事……。すべて保存用動画にまとめますわ♡」
彼女は撮影機材を手に、次の撮影地点へ移動を始めた。
「主人公様の貴重な三日間ですもの。永久保存版にしなくては♡」
## 1.別のゲイバー
主人公は、いつも通っているゲイバーとは別の店に入った。
「今日は、誰にも邪魔されずに酒を飲みたい……」
カウンターに座ると、隣に筋骨隆々の男性がやってきた。
「兄さん、元気がないな。何かあったのか?」
男は気さくに話しかけてきた。
主人公は、これまでの苦労を語り始めた。
十人のヤンデレたちに振り回され、休む間もなく、毎日のように体力を搾り取られること。
逃げようとしても、結局は捕まってしまうこと。
どれだけ訴えても、彼女たちは愛情表現の一環だと思っていること。
「俺だって……普通に暮らしたいんだよ……」
主人公の目から涙がこぼれた。
男性は黙って話を聞いていた。
彼の正体は、格闘専門の男ヤンデレである。
もちろん、主人公はそんなことを知る由もない。
(主人公様……! ようやく私たちの愛の深さを理解してくださったのですね……!)
男も感極まって涙を流した。
「兄さん……分かるぞ。つらかったんだな……!」
「ううっ……! ありがとう……!」
二人は酒場で肩を並べ、涙を流した。
ただし、二人の涙の意味は、まったく違っていた。
主人公は、自分の苦しみを理解してくれる人に出会えたと思っていた。
一方、格闘専門のヤンデレは、主人公がようやく自分たちの愛を受け入れてくれたのだと思っていた。
その後、二人は酒を飲み交わした。
主人公にとっては、久しぶりに心が安らぐ時間だった。
## 2.教会の懺悔室
ゲイバーを出た主人公は、街を歩きながら考えた。
「……もしかして、俺には何か罪があるんじゃないか?」
別に、何か悪いことをした覚えがあるわけではない。
しかし、これほどまでに苦しい日々が続くのなら、自分の知らないところに何か原因があるのかもしれない。
「一度、懺悔でもしてみるか……」
主人公は近くの教会に入った。
そして、懺悔室に座ると、神父にこれまでの出来事を語り始めた。
ウマ娘の育成レースで地獄のような訓練を受けたこと。
デレステのアイドル活動に強制参加させられたこと。
ピンク色の衣装を着せられ、世界中の巨大スクリーンで踊らされたこと。
そして、最後には黄金の龍に頼んで、世界中の人々の記憶や記録を消去したこと。
主人公は一通り話し終えると、静かに尋ねた。
「俺のどこに罪があったのか、教えてください」
その瞬間だった。
「喝ッ!!」
懺悔室に、神父の声が響き渡った。
「愛が足りないのです!」
主人公は驚いて顔を上げた。
神父の正体は、慈愛のヤンデレだった。
「ウマ娘の育成も、デレステのアイドル活動も、すべては主人公様への愛ゆえに行われたこと!」
「愛とは、ときに厳しいもの! 主人公様を限界まで追い込み、世界中の記憶さえ消し去ることもあるのです!」
神父は涙ながらに説いた。
「主人公様。あなたは、私たちの愛をまだ理解していなかったのですね……!」
主人公は、しばらく黙っていた。
そして、ゆっくりとうなずいた。
「……そうだったんですね」
「分かりました」
慈愛のヤンデレは、感動のあまり涙を流した。
(主人公様……! ついに、愛の本質を理解してくださったのですね……!)
主人公は懺悔室を出た。
「……なんだか、余計に分からなくなった気もするけど……」
それでも、少しだけ気持ちが軽くなったような気がした。
## 3.公園の犬
教会を出た主人公は、近くの公園に向かった。
ベンチに腰を下ろし、空を見上げる。
「……疲れたなあ」
そのとき、一匹の犬が近づいてきた。
犬は主人公の足元に寄り添い、じっと見上げている。
「お前、どうしたんだ?」
主人公は犬の頭を優しく撫でた。
犬は嬉しそうに尻尾を振った。
「……そうか。お前も一人なのか!」
主人公は、どこか親近感を覚えた。
「分かるぞ。俺も今だけは一人なんだよ」
犬は主人公の隣に座った。
二人はしばらく、何も言わずに過ごした。
主人公は犬の背中を撫でながら、ぽつりとつぶやいた。
「……お前がいてくれてよかったよ」
「ワンッ♡」
犬の正体は、嫉妬のヤンデレだった。
(主人公様……! 私のことを、こんなにも愛してくださるなんて……!)
主人公は、犬が何を考えているのか知らない。
ただ、孤独な自分に寄り添ってくれる存在がいることが嬉しかった。
犬もまた、主人公から愛されていると信じ、幸せいっぱいだった。
こうして、二人は穏やかな時間を過ごした。
## 4.無料の占い
公園を出た主人公は、腹が減っていることに気づいた。
「そろそろ飯にするか……。牛丼でも食べよう」
財布の中身を確認しながら歩いていると、道端に座っていた占い師が声をかけてきた。
「そこのお兄さん。無料で占って差し上げますわ♡」
「無料?」
「ええ、無料ですわ♡」
主人公は少し迷ったが、せっかくなので占ってもらうことにした。
占い師は水晶玉を覗き込み、厳かな声で告げた。
「あなたは今、牛丼屋に向かおうとしていますわね?」
「えっ!? なんで分かったんだ!?」
主人公は驚いた。
占い師は満足そうにうなずいた。
「しかし、あなたの本当の運命は違いますわ」
「本当の運命?」
「あなたが向かうべき場所は……高級フランス料理店ですわ!」
占い師は、懐から一枚のチケットを取り出した。
「こちらをどうぞ。無料のお食事券ですわ♡」
「えっ、いいのか!?」
「もちろんですわ♡ あなたには、幸せになる権利がありますもの♡」
主人公は大喜びした。
「ありがとう! 今日は本当にいい日だな!」
占い師の正体は、潜入のプロであるヤンデレだった。
(主人公様……! 私の用意したお食事を召し上がってくださるのですね……!)
主人公は、まさか自分がスタンプラリーの次の目的地へ誘導されているとは思いもしなかった。
彼はチケットを握りしめ、意気揚々とフランス料理店へ向かった。
一方、その頃。
潜入特化型のヤンデレは、喫茶店の隅でノートパソコンを開いていた。
画面には、すでに文書ファイルが作成されている。
**『主人公様・三日間の自由恋愛体験記』**
「さて……最初の出会いは、別のゲイバーですわね♡」
彼女は、監視特化型から共有された映像と、現場で得た情報をもとに、主人公の言葉や行動を丁寧に文章へ起こしていった。
『主人公様は、筋骨隆々の男性と出会い、これまでの苦労を涙ながらに語られた。男性もまた、感極まった様子で涙を流していた』
「まあ……主人公様ったら。初対面の方にまで、そんなに心を開いてくださるなんて♡」
彼女は嬉しそうに続きを打ち込んだ。
教会での懺悔、公園での犬との交流、無料占い師との出会い。
主人公が移動するたびに、新しい記述が増えていく。
「次は高級フランス料理店ですわね♡ どんな素敵な出来事が待っているのでしょう?」
彼女は保存ボタンを押した。
「この三日間を、主人公様の人生に残る物語にして差し上げますわ♡」
なお、彼女が書いているのは、主人公が自由を求めて逃げ出した記録である。
しかし、タイトルにも本文にも、主人公の苦悩を理解しようとする姿勢はほとんど見られなかった。
## 5.高級フランス料理店
厨房では、二人のヤンデレが最後の準備を進めていた。
一人は薬学特化型のヤンデレ。
もう一人は、科学特化型のヤンデレだった。
薬学特化型は、主人公の体調や栄養状態を考慮した料理の献立表を確認していた。
「主人公様は、連日の宴でお疲れですもの♡ 栄養バランスを整え、体力を回復できるお食事をご用意いたしましたわ♡」
テーブルには、食材の品質や栄養価を細かく分析した資料が並んでいる。
「こちらが栄養管理の計画書ですわ。主人公様のお身体を第一に考え、精力剤によるフルバフも組み込んであります♡」
その隣では、科学特化型が別の資料を確認していた。
「こちらは睡眠薬の管理計画です♡ 主人公様の逃避行を終わらせるため、食後に眠っていただく段取りを整えましたわ♡」
薬学特化型は、料理の仕上がりを確認しながら微笑んだ。
「お食事の栄養管理は私が担当いたしますわ♡」
「では、睡眠薬に関する計画と管理は私が担当いたします♡」
二人は、互いの担当を確認してうなずいた。
「これで主人公様も、ゆっくりお休みになれますわね♡」
「ええ♡ 私たちの連携は完璧ですわ♡」
店に入ると、主人公は豪華な内装に圧倒された。
「す、すごいな……。本当に俺が入っていいのか?」
案内された席に座ると、次々と料理が運ばれてきた。
前菜、スープ、魚料理、肉料理。
どれも見た目からして美しく、香りも素晴らしい。
「うわあ……!」
主人公は目を輝かせた。
「いただきます!」
一口食べる。
「うまい!」
思わず声が出た。
厨房では、料理長がその様子を確認していた。
彼女の正体は、薬学のヤンデレである。
主人公の体調を徹底的に分析し、栄養バランスを考え抜いた特製料理を用意していた。
そして、その料理には精力剤によるフルバフと睡眠薬が仕込まれていた。
「主人公様に、最高のお食事を楽しんでいただきますわ♡」
給仕を担当しているのは、性技のヤンデレとヒップスラストのヤンデレ。
二人は交代で料理を運びながら、主人公の様子を見守っていた。
(主人公様、とてもおいしそうに召し上がっていますわ♡)
(これでスタンプも一つ獲得ですわね♡)
一方、隣のテーブルには、十人のヤンデレたちが美しいドレス姿で座っていた。
森羅万象のヤンデレも含め、全員が別々の女性客に変装している。
彼女たちは互いに目配せしながら、主人公が食事を楽しむ姿を見つめていた。
「……いいなあ」
主人公は、隣のテーブルをちらりと見た。
そこには、美しい女性たちが楽しそうに食事をしている光景があった。
「俺も、あんな美人たちと食事できたら、人生変わるだろうな……」
ヤンデレたちは、その言葉を聞き逃さなかった。
(主人公様……! 私たちと一緒に食事をしたいと思ってくださっているのですね……!)
十人は互いに微笑み合った。
(よかったですわね♡)
(ええ、次はもっと素敵なお食事会を開きましょう♡)
彼女たちは、主人公の願いをかなえる方法を考え始めていた。
その間も、主人公は料理を食べ続けていた。
「いやあ、本当にうまいなあ……。こんな日がずっと続けばいいのに……」
しかし、次第に様子がおかしくなってきた。
「……あれ?」
急に、まぶたが重くなってきたのだ。
主人公は目をこすった。
「なんだ……? 急に眠く……」
せっかくの高級フランス料理だ。
デザートまで食べずに帰るなんてもったいない。
主人公は必死に目を開けようとした。
「いや、待て……。まだ……食べ……」
ガシャン。
主人公の手からフォークが落ちた。
そのまま彼は、テーブルに突っ伏してしまった。
「……すぅ……」
睡眠薬の効果によって、主人公は食事の途中で気絶してしまったのだ。
店内の空気が、一瞬で変わった。
給仕をしていた性技のヤンデレとヒップスラストのヤンデレが、素早く主人公のそばに駆け寄る。
薬学のヤンデレも厨房から姿を現した。
「計画どおりですわ♡」
「主人公様、たくさん召し上がってくださいましたわね♡」
「これで、ゆっくりお休みになれますわ♡」
隣のテーブルに座っていた十人のヤンデレたちも、次々と立ち上がった。
全員が主人公を見つめ、幸せそうに微笑んでいる。
「まあ……本当にかわいらしい寝顔ですわ♡」
「お疲れだったのでしょうね♡」
「今夜は私たちが、ずっとそばにいて差し上げますわ♡」
彼女たちは主人公を優しく抱きかかえた。
その顔には、誰一人として悪意など浮かんでいなかった。
ただただ、愛する主人公を休ませてあげたい。
それだけだった。
一方、主人公の意識は、すでに深い眠りの底へと沈んでいた。
彼は知らない。
自分が手に入れたはずの三日間の自由が、こうして終わりを迎えようとしていることを。
ヤンデレたちは主人公を囲み、楽しそうに歩き始めた。
「さあ、主人公様。お持ち帰りですわ♡」
翌日
主人公が目を覚ますと、そこは自宅の寝室だった。
「…………ん?」
体を起こそうとした瞬間、主人公は自分の手足がベッドに拘束されていることに気づいた。
「おい! これはどういうことだ!」
ベッドの周囲には、十人のヤンデレたちが勢ぞろいしていた。
「お前ら! 俺を自由にしてくれるんじゃなかったのか! 俺は三日間の自由を楽しむために出かけたんだぞ!」
「まあ、主人公様。私たちから逃げたいだなんて……」
森羅万象のヤンデレが、目に涙を浮かべた。
「ひどいですわ……。私たちがどれほど主人公様を愛しているか、ご存じでしょう?」
彼女は両手で顔を覆い、しくしくと泣き始めた。
「うっ……主人公様に嫌われてしまうなんて……。私たち、こんなにも主人公様を愛していますのに……!」
もちろん、ウソ泣きだった。
「違う! 俺はただ、一人で自由に過ごしたかっただけだ!」
「つまり、私たちの愛が足りなかったということですわね……」
「なんでそうなるんだよ!」
森羅万象のヤンデレは涙を拭うと、にっこりと微笑んだ。
「……仕方ありませんわね」
「何がだよ!」
「主人公様には、お仕置きが必要ですわね♡」
「待て! 何をするつもりだ!」
ヤンデレたちは、互いに顔を見合わせた。
「今回の件で、私たちは改めて思いましたの。主人公様には、もっとたくさんの愛情を注いで差し上げる必要がある、と♡」
「俺の話を聞けぇぇぇ!」
「ですから、今夜は夜の生活のレパートリーを増やしましょう♡」
「なんでそうなるんだぁぁぁ!」
こうして主人公の三日間の自由恋愛体験は、開始から一日も経たずに終了した。
逃亡先で出会った相手がヤンデレたちだったことに、主人公は最後まで気づかなかった。
そして、その逃亡劇はヤンデレたちによって、**夜の生活のレパートリーの一部**として活用されることになった。
「次はどんな愛情表現を試しましょうか♡」
「もう逃げないから、頼むから普通に愛してくれぇぇぇ!」




