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神羅万象 魔道のヤンデレは病気です 直しましょう4

**番外編――魔導更生計画、四大精霊との契約(帰還編)**


*


【主人公の屋敷・地下作戦室】


「――以上が、今回の旅で得られた成果ですわ♡」


魔導は満面の笑みを浮かべ、作戦室の中央に立っていた。


その隣にはエンジェルがバインダーを抱え、少し離れた場所で主人公が腕を組んで深いため息をついている。


リリムも同席していた。


「……本当に、ろくなことがなかったわね」


「何をおっしゃいますの、リリムさん♡ 大変有意義な旅でしたわ!」


「あなた、朝から主人公様を簀巻きにして連れ出したんですよ?」


「そのおかげで四大精霊との契約が成立したのですから、結果オーライですわ♡」


「過程を無視するな!!」


主人公とリリムの声が重なった。


魔導は涼しい顔で聞き流し、並んでいるヤンデレたちへ向き直る。


森羅万象、科学、薬学、慈愛、嫉妬、監視特化、潜入特化。


全員が、微妙な表情で魔導を見つめていた。


「炎の精霊、水の精霊、風の精霊、土の精霊。四大精霊すべてとの契約を成立させましたわ!」


「……四大精霊、すべて?」


森羅万象の眉が、わずかに動いた。


「ええ!」


魔導は胸を張った。


「炎の精霊とは正面から魔力をぶつけ合い、水の精霊には私の心の内を見透かされ、風の精霊には散々逃げ回られ、土の精霊には何日も待たされましたわ!」


「…………」


「ですが、最後には全員が私を認めてくださいましたの! これで私の魔術は、以前とは比べものにならないほど強力になりましたわ♡」


魔導が手を軽く掲げると、炎・水・風・土の四色の光が彼女の周囲に渦巻いた。


作戦室の空気が、明らかに重くなる。


科学が眼鏡を直した。


「……データ上、魔力出力が以前の数倍に達しています」


薬学が冷や汗を一筋流す。


「この安定感……ただの契約では説明がつきませんね」


慈愛が心配そうに手を合わせる。


「魔導さん、お顔がとても生き生きしています……」


嫉妬が小さく呟く。


「なんか……前より怖い」


監視特化が端末を見つめたまま言った。


「脅威度、再計算が必要です」


潜入特化が静かに一歩下がる。


「先回りしても、止められる気がしません」


魔導はさらに嬉しそうに続けた。


「それから、今回の旅で大切なことも学びましたの!」


「……ほう」


森羅万象が、引きつった笑顔で促す。


「相手の意思を尊重すること。信頼を積み重ねること。そして、愛する相手を自分の思いどおりにすることと、相手を幸せにすることは別だということですわ!」


一瞬、作戦室が静まった。


リリムが目を細める。


「……それ、ちゃんと理解したうえで、主人公様を簀巻きにしたの?」


「はい♡」


「…………」


主人公が天を仰いだ。


「理解してないだろ、絶対」


森羅万象はゆっくりと目を閉じ、深呼吸した。


そして、冷や汗を浮かべながら口を開いた。


「……そうですか」


「はい!」


「つまり、魔導さんはそれらを理解したうえで、四大精霊とも意気投合し、さらに強くなって戻ってこられた、と」


「ええ♡ 皆様も以前、『あなたに比べればマシ』とおっしゃっていましたものね」


その言葉に、全員の肩がびくりと震えた。


科学が眼鏡の奥で視線を逸らす。


「……相対評価は、状況によって変動しますから」


薬学が喉を鳴らす。


「重症度の基準を、見直す必要がありそうです」


慈愛が慌てて手を振る。


「わ、私たちはあくまでご主人様の安全を……!」


嫉妬が小声で。


「魔導さんの方が、目立たなくなってきたかも……」


監視特化が記録を止めた。


「……比較対象として不適切でした」


潜入特化が結論を出す。


「先回りの優先順位を変更します」


森羅万象が、優雅さを保ったまま、しかし明らかに冷や汗をだらだらと流しながら言った。


「……やはり、魔導さんが特に重症だというのは、わたくしたちの勘違いだったようですわね」


「まあ♡」


魔導が目を輝かせる。


「やはりそうでしたか!」


「ええ。わたくしたちの方が……まだまだ、ですわ」


「素晴らしい気づきですわね♡」


リリムが即座に突っ込んだ。


「何が素晴らしいのよ! 今のみなさん、明らかにビビってるじゃない!」


「ビビっておりませんわ。正当な再評価です」


「冷や汗だらだらの正当な再評価って何よ!!」


主人公も続いた。


「お前ら、自分が棚に上げて説教したこと、もう忘れたのか!?」


「忘れてはいません。ただ、基準が変わっただけですわ」


「基準を都合よく変えるな!!」


エンジェルが淡々とバインダーに書き込む。


「記録。四大精霊契約により魔導の魔力大幅向上。同席したヤンデレ陣、冷や汗を流しつつ『魔導が特に重症という認識は勘違いだった』と結論。主人公様およびリリム様、強く抗議♡」


「その記録、残すな!!」


魔導は自分の手を見下ろし、四色の光を纏った指先を見つめた。


「……そうですわ」


口元が、ゆっくりと吊り上がる。


「これだけの力があれば……」


「おい」


「以前は波動砲の威力が少々足りませんでしたけれど……」


「待て、魔導」


「今度は四大精霊の力を融合させた、特別製の波動砲ですわ♡」


「安心できる要素が一つもない!!」


魔導は優雅に一礼した。


「それでは、天界まで行ってまいりますわ! ドミニオンズ様へのご報告も兼ねて♡」


「行くなあああああ!!」


「報告じゃないわよそれ!!」


しかし、魔導はすでに転移魔術を発動させていた。


炎が燃え上がり、水が渦巻き、風が吹き抜け、大地の魔力が足元に集まる。


四つの属性が一つに重なり、巨大な魔力が収束していく。


「四大精霊融合型――超波動砲♡」


次の瞬間、魔導の姿は消えていた。


作戦室に残された面々は、しばらく沈黙した。


森羅万象が、冷や汗を拭いながら呟く。


「……わたくしたちも、もう少し成長しなければいけませんわね」


科学が虚ろな目で。


「成長の方向性が、完全に間違っています」


リリムが両手で顔を覆った。


「結局、誰も更生してない……」


主人公は深く、深く息を吐いた。


「俺の平和は、また遠ざかったな……」


遠くの空から、天界の悲鳴がかすかに聞こえてきた。


――魔導の更生計画は、名目上の成功を収めた。


そして、周囲のヤンデレたちだけが、本気で冷や汗をかくことになったのである。

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