逃亡者の覚醒と愛の檻 2
### 人間への愛を捨てる
主人公は考えた。
人間の女性との関わりを諦めれば、ヤンデレたちも自分に幻滅するのではないか。
そこで彼は、怪物や生き物を相手にする姿を見せれば、さすがの彼女たちも気持ち悪がって離れていくだろうと考えた。
まず、彼は木の穴を使って試みた。
「うおおおおおおおおお!! 痛い痛い痛い!!」
股間を血まみれにしてしまい、主人公は地面に転がって絶叫した。
その瞬間だった。
「大変ですわ♡」
なぜか背後から、慈愛のヤンデレが現れた。
「な、なんでここに……!?」
「ご主人様の痛みを感じたのですわ♡」
彼女は慌てて駆け寄り、淡い光を放った。
傷は瞬時に消え、痛みも完全になくなった。
「治してくれて……ありがとう。でも、なんでいつもすぐそばにいるんだよ……!」
主人公は感謝しつつも、背筋に凍るような恐怖を覚えた。
慈愛は優しく微笑んだ。
(ご主人様が傷つくなんて……絶対に許せませんわ。どこにいても、すぐに駆けつけます。私がいないと、また無理をしてしまいますもの♡ だから、いつも近くにいなきゃ……♡ ご主人様の体は、私がすべて管理します。痛みも、傷も、私が消してあげる。誰にも触れさせないわ♡)
「走れるようになって良かったですわ♡ 次は無理をなさらないでくださいね。私がずっと、そばにいますから」
主人公は何とか逃げ出した。
だが、神にまでなったヤンデレから逃げられたところで、状況が好転するわけではなかった。
### 通販で注文した美少女フィギュア
次に主人公は、インターネット通販で美少女フィギュアを大量に注文した。
「たくさん集めれば、あいつらだって引くだろう……」
そう作戦を立てたのだ。
翌日、段ボールが四つ届いた。
フィギュアにしては大きすぎ、そして重すぎる。
一つあたり四十キロ前後ある。
「俺、こんな大きいの頼んでないんだけど……?」
主人公は困惑しながらも、部屋へ運び込んだ。
そして開封すると、出てきたのは魔導、科学、潜入、薬学の四人だった。
「フィギュア頼んだだけなんですけどー!!」
主人公がツッコミを入れる間にも、四人は満面の笑みで彼を取り囲んだ。
「お届けに参りましたわ♡」
「ご注文ありがとうございます♡」
「すぐに夜の生活の準備を整えましょう♡」
「データ収集も兼ねて♡」
魔導は杖を軽く振りながら、甘く囁いた。
(ご主人様がフィギュアを欲しがるなんて……本当は私たちが欲しかったのでしょう?♡ 魔法で箱を用意して、すぐに駆けつけましたわ。もう、ご主人様の部屋から一歩も出さないようにします♡)
科学は眼鏡を押し上げ、データを確認するように目を細めた。
(注文履歴をすべて把握していましたわ♡ ご主人様の趣味を分析して、私たちを届けたのです。このデータは完璧。次はもっと精密に、ご主人様のすべてを管理しますわ♡)
潜入は影のように寄り添い、静かに微笑んだ。
(段ボールの中でじっとしているのも、慣れていますもの♡ ご主人様が開封する瞬間を、ずっと待っていました。これで、また近くにいられますわね……永遠に♡)
薬学は小瓶を握りしめ、夢見心地で言った。
(フィギュアより、私たちを選んでくださって……♡ 調合した安定剤で、今夜はゆっくりと。ご主人様の体を、私の薬で満たしてあげますわ♡)
主人公は抵抗する暇もなく、夜の生活に連行されてしまった。
### 海辺の作戦
主人公は海へ向かった。
「さすがに海の潮の満ち引きで下半身が反応するようでは、あいつらもドン引きするだろう……」
そう考えて波打ち際に立った。
ところが、そこへ魔導、薬学、科学の三人が現れた。
「ご主人様♡ 海がお望みなのですね♡」
魔導が杖を振る。
「海水を利用すれば、すぐに用意できますわ♡」
科学が眼鏡を光らせる。
「高性能化の調整、任せてください♡」
薬学が小瓶を取り出す。
「安定剤と感度調整剤も完璧ですわ♡」
三人は瞬く間に、海水を利用して人間型超高性能女性型スライムを作り上げた。
魔導が召喚し、科学と薬学が調整を施し、完璧に仕上げたものだった。
「違うー! そういうのじゃないー!!」
主人公は叫んだが、三人に優しく回収され、今回はスライムも追加で夜の生活に巻き込まれてしまった。
三人の内心は、熱を帯びていた。
魔導:(ご主人様が海を選んだのですから、最高のものを用意しなければ……♡ 魔法で永遠に残しますわ。このスライムも、ご主人様専用に調整して、絶対に離しません♡)
科学:(このスライムのデータは革命的です……♡ ご主人様の反応をすべて記録して、次に活かさなければ。海辺も私たちの領域にしますわ。逃げ場所など、どこにもありませんもの♡)
薬学:(調合の成果が完璧に出ましたわ♡ ご主人様が満足してくださるなら、何度でも作ります……薬で体を繋ぎ止めて、永遠にこの海で一緒にいましょう♡)
慈愛の神、王の側近、魔法の達人、科学の権威、薬学の専門家。
逃げようとするたびに、ヤンデレたちは社会的地位も能力も上昇していく。そして主人公への愛情は一向に減らない。
むしろ増していた。
森羅万象のヤンデレは遠くから重力を微調整しながら、優しく呟いた。
(ご主人様がどこへ行っても、地面があなたを支えますわ♡ 逃げても、すぐに引き戻してあげますからね……)
監視のヤンデレは衛星カメラを通じて、すべてを録画していた。
(今日のすべてを、永久保存しますわ♡ ご主人様の逃げ回る姿も、私たちに満たされる姿も、全部私のもの……)
主人公は夕日を見上げた。
「自由って何だっけ……」
その呟きに答えられる者はいない。
ただ、十人のヤンデレだけが、幸せそうに主人公を見つめていた。
そして、主人公の長い逃亡の日々は、まだ始まったばかりだった。
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