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魔導のお悩み相談ラジオ

番外編――魔導のお悩み相談ラジオ♡ 


【王国全土・ラジオ放送中】


『皆さま、こんばんは♡ パーソナリティーの魔導ですわ♡ チャオ♡』


魔導は満面の笑みでマイクに向かい、優雅に手を振った。


その隣では、主人公が特製の椅子にがっちりと固定されている。


両腕と両脚は魔法繊維の縄で拘束され、口には剥がれにくい特製ガムテープ。首の固定具によって、動かせるのは左右だけだった。


放送室の奥では、監視特化がポテチをつまみながらコンソールを操作している。


「全国配信、正常。音声記録も映像記録も問題ないわ。主人公の首振り角度と速度も数値化できてる」


「映像は放送していないのに、そこまで記録なさるのですか?」


「後日の検証用よ。本人の否定を客観的なデータとして残しておくの」


「まあ♡ さすが監視特化ですわね♡」


その隣で、エンジェルが丁寧にノートを開いた。


「記録係エンジェル、報告を開始します♡ 本日の主人公さんは、放送開始前から首を横に振っております。魔導さんへの照れ隠しと推定されます♡ 愛ですから♡」


主人公は即座に首を振る。


ぶんぶんぶんぶん!!


「訂正の必要はありません♡ 記録は以上です♡」


違う!!


主人公の心の叫びは、誰にも届かなかった。


『それでは、最初のお便りをご紹介しますわね♡』


魔導は一枚の紙を取り出した。


『ラジオネーム、匿名希望主人公さんからですわ♡』


『ヤンデレのことが大好きなのに、みんなを愛せてなくて困っています。どうしたらいいでしょうか?』


主人公は激しく首を横に振った。


「んんーっ!! んんんんーっ!!」


監視特化がディスプレイを確認する。


「首振り速度が上昇。否定の意思表示と推定されるわ。心拍数も上がってる」


「まあ……! 皆さんを幸せにしたいのに、自分の愛が足りないと悩んでいらっしゃるのですね♡」


魔導は胸元で両手を組み、うっとりと微笑んだ。


「なんて健気なのでしょう♡ 愛せるようになるまで、わたくしたちと一緒に暮らせばいいのですわ♡」


主人公はさらに首を振る。固定具がきしんだ。


「記録更新です♡」


エンジェルは嬉しそうに全国へ報告する。


「主人公さんは現在、感情を抑えきれないご様子です♡ 魔導さんとの同居提案に対し、激しい反応を示しております♡」


王国中から感動のメッセージが届き始めた。


違う! 同居なんて一言も言ってない!!


『続いてのお便りですわ♡』


『ラジオネーム、匿名希望主人公さんからですわ♡』


『特に魔導さんのことが好きで好きでたまりません。どうしたらいいでしょうか?』


主人公は首がもげそうな勢いで横に振った。


「んんんんんーっ!!」


監視特化が画面を見たまま告げる。


「首振りの累計回数、三十七回。愛情表現の変化を比較するには十分なデータね」


「必要なのか、それ……」


主人公は心の中で突っ込んだ。


「もちろん必要よ」


監視特化はポテチを一枚口に放り込んだ。


「後日、本人の愛情表現がどう変化したか検証するから」


「まああああああっ♡♡♡」


魔導が両手で頰を挟む。


「わたくしのことが好きで好きでたまらない……! もう絶対に離してあげられませんわ♡♡♡ チャオ♡」


「報告します♡ 主人公さんは首振りによって喜びを表現しているものと断定されます♡」


「断定するな!!」


声にならない抗議を続ける主人公をよそに、魔導は三枚目の便箋を取り出した。


『ラジオネーム、匿名希望主人公さんからですわ♡』


『私はもう逃げたり隠れたりしません。皆さんのことを平等に愛します。毎日、エンジェルが国民の皆様にそう報告します』


主人公は、これまで以上の勢いで首を横に振った。


「んんんんんんーっ!!」


監視特化が一瞬だけ画面から目を離した。


「……今のは、明確な拒否反応ね」


「記録します♡」


エンジェルは即座にペンを走らせた。


「主人公さん、ついに逃亡をやめ、全員を平等に愛する決意を固めました♡ そして、その決意を毎日、国民の皆様に報告してほしいとのことです♡ 歴史的瞬間です♡」


「どうしてそうなるんだ!!」


主人公の心の中で、何かが崩れ落ちた。


王国中のリスナーからは、祝福のメッセージが殺到していた。


『皆さま、主人公さんの決意を一緒に応援してあげましょうね♡』


魔導は嬉しそうに手を振った。


『それでは、最後のお便りですわ♡』


『ラジオネーム、匿名希望主人公さんからですわ♡』


『ヤンデレたちの作る手料理は最高です。毎日食べたいです』


主人公は椅子ごと暴れた。


「んんんんんーっ!!」


監視特化が眉を上げる。


「全身の筋肉活動が急上昇。さっきまでとは明らかに反応が違うわね」


「料理への期待が最高潮に達したのですわね♡」


魔導は満面の笑みで立ち上がった。


「あら♡ それなら今夜は、わたくし特製の煮込み料理を作りますわ♡ 隠し味には惚れ薬を少々……いえ、多めに♡」


主人公は力の限り首を横に振った。


監視特化が冷静に分析する。


「強い拒否反応ね。瞳孔の変化からは、諦めの兆候も見られるわ」


「報告します♡ 主人公さんは、魔導さんの特製料理を想像して感極まっているご様子です♡ 涙腺も反応しております♡」


「違う!! 絶対に食いたくない!!」


もちろん、ガムテープのせいで声にはならなかった。


『それでは、皆さま♡ 本日のお悩み相談はここまでですわ♡』


魔導は最後まで笑顔を崩さなかった。


『次回も主人公さんと一緒に、愛について考えていきましょうね♡ チャオ♡』


監視特化が配信終了ボタンを押す。


「全国配信、終了。全記録は永久保存済みよ」


エンジェルはノートを閉じ、満足げに頷いた。


「本日の報告をまとめます♡ 主人公さんは全員を平等に愛する決意を固め、魔導さんへの特別な愛を表明し、手料理を毎日食べたいと希望しました♡ 愛ですから♡」


その瞬間だった。


主人公の全身に、わずかな魔力が一気に奔流した。


拘束椅子がきしみ、魔法繊維の縄が限界を超えて断裂する。


バキィィィッ!!


椅子が粉々に砕け散った。


主人公は床に転がり、ガムテープを引き剥がすと、荒い息を吐きながら立ち上がった。


「ふざけんなお前らァァァッ!!」


放送室に怒声が轟いた。


監視特化はポテチを口に運ぶ手を止めた。


「あら。予想より早く拘束を破ったわね。データとしては貴重よ」


「記録します♡ 主人公さん、ついに愛の告白を大声でなさりました♡ 『ふざけんなお前ら』は、親愛の情が爆発した際の慣用句と解釈されます♡」


エンジェルは嬉しそうにペンを走らせる。


「違う! これは拒絶だ! 抗議だ! 絶対に違う!!」


魔導は優雅に拍手した。


「素晴らしいですわ♡ これほど情熱的に愛を叫んでくださるなんて……わたくし、感動で胸がいっぱいですわ♡ チャオ♡」


主人公は出口へ向かって駆け出した。


だが、扉は開かなかった。


いつの間にか、森羅万象の「整え」によって、放送室の空間ごと封鎖されていたのだ。


「逃げ道はありませんわよ♡」


魔導がにこやかに近づいてくる。


「今夜は約束通り、わたくし特製の煮込み料理を召し上がっていただきますわ♡ 隠し味は多めに入れておきましたもの♡」


監視特化は、すでに別の記録ボタンを押していた。


「私的ビデオ、撮影開始。夜の部に移行するわね」


「全国の皆さまには、後日ダイジェストでお伝えします♡ 主人公さんの『ふざけんなお前ら』という愛の言葉とともに♡」


主人公は天井を見上げ、天を呪った。


そして、その夜。


魔導特製の煮込み料理が、たっぷりと食卓に並んだ。


隠し味の効き目は、想像を絶するものだったという。


(監視特化の私的ビデオ記録により、詳細は後日検証可能。エンジェルの報告書にも「愛の爆発シーン」として大々的に記載された)


そして、その夜。


魔導特製の煮込み料理が、たっぷりと食卓に並んだ。


「さあ、召し上がれ♡ 愛情をたっぷり込めましたわ♡」


「……絶対に何か入れただろ」


主人公は疑いの目を向けた。


「隠し味ですわ♡」


「その隠し味が問題なんだよ!!」


しかし、森羅万象の「整え」によって逃げ道は封鎖されている。


結局、主人公は一口食べてしまった。


「……普通にうまいな」


「まあ♡ 嬉しいですわ♡ もっと召し上がってくださいませ♡」


二口、三口。


食べ進めた主人公の動きが、ふと止まった。


「……魔導」


「はい♡」


主人公は頬を赤く染め、魔導をじっと見つめた。


「お前……今日も可愛いな」


「…………え?」


魔導の手からスプーンが落ちた。


「ちょ、ちょっと待ってくださいませ……! 今、なんと……?」


「いや、だから可愛いって。ずっと一緒にいたいくらいだ」


「きゃああああああああっ♡♡♡」


魔導が椅子から立ち上がり、歓喜の声を上げた。


「ついに! ついに主人公さんが、わたくしに愛を告げてくださいましたわああああっ♡♡♡」


「魔導さん、落ち着いてください! まだ記録が追いついていません!」


監視特化は即座にカメラを構えた。


その横で、主人公はさらに追い打ちをかける。


「魔導。明日も明後日も、ずっと一緒にいような」


「一生ですわ!! 一生一緒ですわああああっ♡♡♡」


「いや、俺は別にそこまで……」


「照れ隠しまで完璧ですわ♡♡♡」


翌朝。


王国全土に、エンジェルの明るい声が響き渡った。


『国民の皆様、おはようございます♡ 昨夜、主人公さんは魔導さんに対し、「今日も可愛い」「ずっと一緒にいたい」と愛を告白されました♡』


主人公は放送室の隅で頭を抱えていた。


『さらに、「明日も明後日も、ずっと一緒にいよう」と将来を誓われました♡ 愛ですから♡』


「全国放送するなあああああっ!!」


その叫びも、もちろん放送に乗った。


魔導は主人公の腕に抱きつき、満面の笑みを浮かべた。


「もう離しませんわ♡ 昨夜のお言葉、すべて永久保存してありますもの♡」


監視特化が淡々と付け加える。


「映像、音声、心拍数。全部記録済みよ」


「消せ!! 全部消せ!!」


「無理ですわ♡」


魔導はにっこりと微笑んだ。


「ちなみに、惚れ薬の効果はまだ三日ほど続きますわ♡」


「三日!?」


主人公の絶叫が、王国全土に響き渡った。


エンジェルは報告書に、満足げに一文を書き加えた。


『主人公さんと魔導さん、ついに相思相愛へ♡ 愛ですから♡』

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