↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
120/178

主人公&神羅万象VSセラフィム2

# 熾天使セラフィム戦――神の炎と、人類最強の拳


神の炎と、森羅万象の世界が激突した。


白銀の空間が震える。セラフィムの六枚の翼から放たれた炎が、幾重にも重なる隔離空間を焼き崩していく。


一層目が消滅。

二層目が融解。

三層目では、空間そのものがねじ曲がった。


だが、炎は止まらない。


「空間を分けようと、因果をねじ曲げようと無駄だ。浄化すべきものが存在する限り、神の炎はそこへ至る!」


森羅万象は、砕けた茶器を見下ろした。


「……なるほど。空間を焼くだけではありませんのね。浄化という結果そのものを成立させようとしている」


「だったら、結果を成立させる前に止める」


主人公が口を挟んだ。


森羅万象が振り返る。


「ご主人様?」


「こいつは空間を突破しているんじゃない。浄化するという結果を、無理やり成立させている。なら、いくら壁を増やしてもきりがない」


主人公はセラフィムを睨んだ。


「違うか?」


「……人間にしては、よく見ている」


セラフィムが片手を上げた。


遠方の柱が白く染まり、内側から燃え上がる。重力が変質し、世界を支える法則までもが浄化の対象となっていく。


「お前の世界は、己の執着を守るために作られたもの。その根幹から清めてくれよう」


「素晴らしいですわ。世界の仕組みそのものを変えようとなさるのですね」


森羅万象が指先を動かす。


消えかけた柱が元に戻り、重力が正常化する。だが、修復された柱は再び白い炎に包まれた。


「浄化を拒むか!」


「いいえ。あなたの力がどう作用するのか、理解しただけですわ」


森羅万象の指が横へ滑る。


柱の周囲に幾何学模様が浮かび上がった。


炎を封じ込めたのではない。


浄化が成立する条件そのものを、書き換えているのだ。


炎は燃えている。

浄化の権能も健在だ。


それでも、浄化という結果だけが成立しなくなり始めた。


「……対象の在り方を変えているのか」


セラフィムが目を細める。


「ならば、世界そのものを浄化する!」


六枚の翼が大きく広がった。


次の瞬間、疑似フィールド全体が純白に染まった。


柱だけではない。床も、空間の境界も、重力も、因果も。森羅万象が定めた法則のすべてが、神の炎に包まれていく。


「歪みが世界全体に及ぶのなら、世界全体を清めればよい!」


床に亀裂が走った。


柱が消え、空間が軋む。


森羅万象が整えた世界そのものが、侵食されていく。


主人公は、迫る炎を見つめていた。


森羅万象が世界を整えている間にも、セラフィムは攻撃を続けている。彼女が防御と修復に力を割けば、その分だけ世界を維持する負担が増える。


そして、セラフィムはその隙を逃さない。


「……なるほどな」


主人公は拳を握った。


「お前、森羅万象を先に潰すつもりか」


「当然だ。世界を支える者を排除すれば、歪みは自ずと消える」


「そうかよ」


主人公が一歩、前へ出た。


「なら、俺を無視するな」


セラフィムの視線が主人公を捉えた。


「人間よ。神の意志を理解せぬ者が、正義を語るな」


「神の意志?」


主人公の拳が、ぎりりと握り締められる。


「お前たちの都合を、神の意志と呼ぶな。エンジェルに手を出したことも、地上に攻め込もうとしたことも、俺は認めない」


「ならば、その拳で神の愛に抗ってみせよ!」


セラフィムの翼から炎が噴き上がった。


主人公は真正面から踏み込んだ。


拳を振り抜く。


しかし、セラフィムを守る透明な光の膜が膨らみ、拳を弾き返した。


「くっ……!」


腕に衝撃が走る。


主人公は後退しながら、拳を握り直した。


先ほどと同じだ。


力は届かない。


ただ強く殴るだけでは、何度繰り返しても結果は変わらない。


「人間の力では、私の聖性を破れぬ。お前の拳にどれほどの力があろうと、神に守られたこの身には触れられぬのだ!」


セラフィムは主人公を見下ろした。


「退け。お前にできることはない」


主人公は答えず、相手の翼を観察した。


炎が放たれる瞬間、六枚の翼がわずかに収縮する。

光の膜が拳を弾いた瞬間、翼の付け根に白い光が集中する。


攻撃も防御も、聖性によって成立している。


ならば、突破口はそこにある。


「……森羅万象!」


「はい、ご主人様♡」


「俺の拳を届かせろ。ただし、こいつの力を奪う必要はない」


森羅万象が微笑んだ。


「力を奪わず、拳を届かせる……。ご主人様らしいご注文ですわね」


「こいつは自分の力を正義だと信じている。その力を消して勝ったところで、こいつは負けを認めないだろう」


主人公はセラフィムを睨んだ。


「こいつの力が残ったままでも、俺の拳が通じると証明してやる」


セラフィムの表情が険しくなった。


「人間風情が……!」


「その人間に殴られるのが嫌なら、さっさと降参しろ」


主人公は再び構えた。


「俺は、お前が倒れるまでやめない」


森羅万象は、世界全体へ広がる炎を見渡した。


「承知いたしましたわ♡」


彼女が両手を広げる。


床から柱へ。柱から空間の境界へ。境界から世界の中心へ。


無数の光の線が走り、世界を構成する法則が浮かび上がった。


彼女は、壊れたものを一つずつ直しているのではない。


世界がどのような状態にあるべきか。その基準そのものを整え直していた。


「ご主人様の拳が、あの天使に届かない道理はありませんもの♡」


森羅万象の指先が、わずかに動いた。


それだけだった。


主人公の肉体に変化はない。

腕力も、速度も、何一つ増えていない。


変わったのは、世界の決まりごとだった。


聖なる存在には、不純なる者の拳が届かない。


その法則が、森羅万象の世界から消えた。


「……世界の基準そのものを固定したか」


セラフィムが警戒を強める。


「ええ。あなたの炎が何を変えられるのか。それを決めるのは、もうあなたではありませんの」


「ならば、お前を直接焼き尽くす!」


白い光が一本の柱となって放たれた。


森羅万象へ向かい、空間を焼きながら迫る。


「させるか!」


主人公が駆けた。


森羅万象を狙う炎の進路へ踏み込み、セラフィムの注意を自分へ引き戻す。


「よそ見してんじゃねえ!」


セラフィムが振り向く。


主人公の拳が迫っていた。


先ほどと同じ、ただの拳。


しかし今度は、光の膜が弾くことはなかった。


**ドゴォッ!**


拳がセラフィムの頬に直撃した。


熾天使の身体が大きく吹き飛ぶ。六枚の翼が乱れ、白い炎が空中に散った。


「なっ……!」


セラフィムは体勢を立て直そうとする。


だが、主人公は追撃していた。


床を蹴り、距離を詰める。


「エンジェルを傷つけたこと!」


右拳が、セラフィムの腹部に叩き込まれた。


「地上を侵略しようとしたこと!」


続けざまに左拳が炸裂する。


セラフィムの身体が浮き上がった。


「そして、それを正義だと言い張ること!」


最後の一撃。


主人公は全身の力を拳に込め、セラフィムの顔面へ叩きつけた。


**轟音。**


白銀の床に衝撃が走った。


セラフィムは床を転がり、数本の柱を巻き込んでようやく止まった。


六枚の翼が力なく広がる。


純白の炎は、まだ燃えている。


聖性も、神の加護も失われてはいない。


それでも、セラフィムは立ち上がれなかった。


「……なぜだ……」


彼女は震える腕で身体を支えようとした。


「私の聖性は……消えていない。神の炎も、失われてはいない……なぜ、人間の拳が……!」


森羅万象が、主人公の隣へ歩み寄った。


「聖なる存在だから、人間の拳が通じない。その法則を、わたくしが書き換えただけですわ♡」


「力を奪ったのではなく……世界の条件を変えたというのか……」


「ええ。ご主人様の腕力は何一つ変わっておりません。あなたの聖性も、神の炎も、そのままですわ」


森羅万象は主人公を見上げた。


「ですが、その世界で何をするかを決めたのは、ご主人様ですわ」


主人公はセラフィムを見下ろした。


「聞こえたか。お前を殴ったのは俺だ」


セラフィムが顔を上げる。


「森羅万象が世界を整えたことは否定しない。だが、エンジェルを傷つけたことも、地上を侵略しようとしたことも、お前がやったことだ」


主人公は拳を握り締めた。


「だから俺が止める。お前の正義とやらが、誰かを踏みにじる限りな」


セラフィムの瞳に、怒りが宿った。


「人間ごときが……神の使命を妨げるというのか!」


彼女は立ち上がり、六枚の翼を大きく広げた。


残された力のすべてを解き放つ。


白い炎が爆発した。


床を砕き、柱を呑み込み、空間全体を純白に染め上げる。


最後の抵抗だった。


「消えよ! 神の炎の前に、すべてを捧げよ!」


炎が主人公へ殺到する。


主人公は逃げなかった。


「森羅万象! 止められるか!」


「もちろんですわ♡」


「なら、頼む!」


「お任せくださいませ!」


森羅万象が指を弾く。


**パチンッ。**


その音と同時に、世界が静止した。


炎は燃えたまま、進まなくなった。


広がることも、何かを焼くこともできない。


セラフィムが翼を動かそうとする。しかし、その動きが結果として成立しない。


神の力は消えていない。


ただ、この世界に何の変化も引き起こせなくなっていた。


「……そんな……」


セラフィムの声が途切れた。


森羅万象が指先を下ろす。


「あなたの力も、熾天使としての格も、何一つ失われておりませんわ。ただ、この世界で何を起こすかは、わたくしが整える。それだけですの」


「……これで終わりだ」


主人公はセラフィムの前へ歩み出た。


セラフィムは動けない。


それでも、彼女の瞳から敵意は消えていなかった。


「私は……神の使命を……」


「その話はもういい」


主人公は拳を引いた。


「お前が何を信じていようと、他人を傷つけていい理由にはならない」


一瞬の静寂。


「これで終わりだ」


全身の力を一点に集中させる。


人類最強の男が、最後の拳を放った。


**ドゴンッ!**


拳がセラフィムを捉えた。


その身体が床へ叩きつけられ、白い光輪が砕け散る。


六枚の翼が大きく広がり、やがて力を失った。


熾天使セラフィムは、ついに意識を失った。


戦場に、静寂が戻る。


主人公は拳を下ろし、倒れたセラフィムを見つめた。


怒りが消えたわけではない。


だが、これ以上殴る必要もなかった。


「……これで、終わりだ」


その言葉を聞き、森羅万象は満足げに微笑んだ。


「お見事ですわ、ご主人様♡」


彼女が再び指を弾く。


**パチンッ。**


砕けた床が元に戻り、亀裂が塞がる。消えた柱が復元され、空間を覆っていた炎も別次元へと隔離された。


焦げたドレスも、割れた茶器も、すべて元通り。


森羅万象の世界は、何事もなかったかのように整った。


彼女は新しい紅茶を用意し、主人公へ微笑みかけた。


「これで、地上を脅かす方はお一人、退場ですわね」


主人公は小さく息を吐いた。


「ああ。エンジェルに、もう手を出させない」


神の炎は、最後まで消えなかった。


セラフィムの信念も、最後まで折れなかった。


それでも彼女は敗北した。


森羅万象が、主人公の拳を届かせた。


主人公は、その突破口を見抜き、自ら戦い続け、最後の一撃で決着をつけた。


世界を整える力と、人類最強の拳。


二つがそろって初めて、熾天使セラフィムを止めることができた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。