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番外編13「脱獄ごっこ」1日目

### 第1話「刑務官・主人公様、着任」


ヤンデレたちは、洋画や海外ドラマにも詳しかった。


ある日のこと。十人は『脱獄』シーズン1を最終話まで視聴し終えた。


「面白かったですね、主人公様♡」


「マイクの脱獄計画、すごく緻密だったわ♡」


「私たちもやってみたいです♡」


主人公様は嫌な予感がした。


「……何を?」


「もちろん、脱獄です♡」


「お前ら、刑務所に入ったことないだろ」


「ですから、これから入るんです♡」


番外編――五日の脱獄ごっこ


【看守】


主人公/格闘特化/拷問特化/腰振りスペシャリスト/エンジェル(看守兼記録係)


【脱獄役】


森羅万象/魔導/科学/薬学/監視/潜入/慈愛/嫉妬


---


## 1日目「職人魂と衝撃波」


「五日間、脱獄を阻止すれば俺たちの勝ちだ!」


主人公が宣言した。


格闘特化が拳を握り、拷問特化が自作の拘束具を並べる。腰振りスペシャリストは低く頷き、エンジェルはバインダーを抱えて目を輝かせた。


「記録開始です♡ ご主人様の活躍も、視線の回数も、すべて記録しますね♡」


「視線の回数は今、関係ないだろ!」


こうして、五日間の脱獄ごっこが始まった。


最初に動いたのは拷問特化だった。


「完成した。俺の拘束具は完璧だ。鎖、封印、多重ロック。これなら、どんな相手でも逃げられない」


「よし! さっそく設置だ!」


主人公の指示に従い、格闘特化と腰振りスペシャリストが拘束具を運び始めた。


ところが。


「ちょっと待て。設置する前に、こっちの角度を調整しておくか」


腰振りスペシャリストが、拘束具の前で腰を落とした。


「おい、何をする気だ?」


「衝撃波の角度を確認する。万が一、脱獄役が突破しようとしたとき、確実に迎撃できるようにな」


「いや、拘束具に衝撃波を撃つ必要はないだろ!」


主人公の制止もむなしく、腰振りスペシャリストが試し撃ちを放った。


ドゴォォォン!!


轟音とともに、拘束具を設置する予定だった壁が粉々に砕け散った。


ついでに、拷問特化自慢の拘束具も巻き添えになった。


沈黙。


拷問特化が、ゆっくりと振り返った。


「…………何をしている?」


「いや、威力を確認しただけだ」


「俺の最高傑作まで壊しておいて、それだけか!!」


「すまん。まさか、壁ごと吹き飛ぶとは……」


「壁ごと!?」


主人公が頭を抱えた、そのときだった。


「あらあら。大変なことになっていますわね♡」


森羅万象が、いつの間にか現れていた。


彼女が指先を動かすと、散らばった壁の破片が宙に浮かび上がり、元の位置へと戻っていく。


だが、修復はそれだけでは終わらなかった。


「壁の内部構造を確認しました。強度計算はこちらで引き受けます」


科学特化が工具と測定器を手に駆けつけた。


「破損した箇所の補修材も必要ですね。強度を維持できる配合に調整します」


薬学特化まで、なぜか補修材の入った容器を抱えている。


「…………お前ら、何をしているんだ?」


主人公が呆然と尋ねた。


森羅万象は壁の破片を元に戻し、科学特化は内部の構造を調整し、薬学特化は補修材の配合を確認する。


「壁の修理ですわ♡」


「見ればわかる!! なんで三人がかりで本格的に修理してるんだよ!」


「森羅万象さんが破片を戻し、私が構造を補強し、薬学特化さんが補修材を最適化しています。役割分担は合理的です」


科学特化が真顔で答えた。


「合理性の問題じゃないだろ!!」


やがて、壁は元どおりになった。


いや、以前より頑丈になっていた。


科学特化が壁を叩いて確認する。


「修復完了。以前より耐衝撃性能が向上しています」


「補修材の配合も問題ありませんわ♡」


薬学特化も満足そうに頷いた。


森羅万象が、腰振りスペシャリストに微笑みかける。


「ところで、もう一度壊してみませんか? 今度は、さらに強度を上げられるかもしれませんわ♡」


「おお、それは面白そうだな!」


「面白くないです!!」


エンジェルがバインダーを抱えたまま、二人の間に割って入った。


「ちょっと待ってください! 脱獄ごっこの準備中ですよね!? なぜ看守側が自分たちで壁を壊して、科学実験と補修材の開発まで始めているんですか!!」


「より頑丈な壁になれば、脱獄阻止に役立ちますわ♡」


「そもそも壊さなければ修理する必要もなかったんです!!」


「なるほど……。次は、壊してもすぐ直せる仕組みを考えればいいのか」


科学特化が真剣にメモを取り始めた。


「補修材も大量に用意しておきましょうか♡」


薬学特化まで乗り気になった。


「違います! そういう話ではありません!!」


エンジェルの悲鳴が施設中に響き渡った。


その横では、拷問特化が修復された拘束具を手に取っていた。


「……壁は以前より頑丈になった。拘束具も、森羅万象に直してもらえばいいのか?」


「もちろんですわ♡」


「いや、待て。今度は絶対に壊すなよ!」


主人公が腰振りスペシャリストを指差す。


「わかっている。今度は壁に当てないように撃つ」


「撃つなと言ってるんだ!!」


こうして初日の脱獄阻止は、脱獄役との勝負が始まる前から、看守側による破壊と修理の連鎖に突入したのだった。


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