番外編――温泉くらい普通に入らせてくれ1
番外編――温泉と監視とお仕置きの境界線
【王国・名湯「白霧の湯」・玄関前】
温泉旅館の門をくぐった瞬間、格闘特化が感嘆の声を上げた。
「すげえ……! 本格的な造りじゃねえか」
腰振りスペシャリストが低く頷く。
「岩も湯気も、悪くない。朝の腰振り後に来る価値はある」
拷問特化が建物を眺める。
「……いい出来の旅館だな」
ゲイバーのお兄さんが荷物を下ろしながらぼやく。
「俺は店を休んでまで来たんだが……まあ、設備は確かだな」
主人公は玄関の暖簾を見て、小さく祈った。
(……今日は、何も起きませんように。普通に浸かって、普通に温まって、普通に帰りたい)
「よし。今日は男だけで温泉に入る。女性陣とは別行動だ」
「おう!」
男たちは安心して脱衣所へ向かった。
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【男性脱衣所】
鍵付きの籠に衣服を入れながら、会話が弾む。
格闘特化がタオルを肩にかける。
「ここまで追ってくるわけがねえだろ。旅館の中まで来るなんて、流石にやりすぎだ」
腰振りスペシャリストが鏡に向かって髪を整える。
「監視特化も、温泉の中までは見られねえだろ。湯気で映像が歪むしな」
拷問特化が淡々と。
「……警戒はする。だが、今は湯を優先する」
お兄さんがため息をつく。
「俺は普通に温まりたいだけなんだが。ここなら大丈夫だろ」
主人公も、つい同意した。
「ああ。今日くらいは、何も起きないはずだ」
読者には嫌な予感しかしない会話だった。
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【男性露天風呂】
湯気の向こうに、山々の稜線がぼんやりと浮かんでいる。
熱い湯に沈むと、一日の疲れがゆっくりと溶け出していくようだった。
「……ああ、いい湯だ」
主人公が目を閉じ、ようやく肩の力を抜く。
格闘特化が岩に背を預けて満足げに息を吐く。
「最高だぜ……」
腰振りスペシャリストが湯をすくい、腕にかける。
「……悪くない」
拷問特化が短く呟く。
「……いい出来の湯だ」
お兄さんが目を細める。
「たまには、こういうのも悪くねえな」
平和な時間が、ほんの少しだけ流れた。
その瞬間だった。
(……見られている)
主人公の肌に、複数の視線が絡みつく感覚が走った。
湯面に、不自然な光が規則的に揺れている。
岩の隙間から、小さなレンズのようなものが覗いている。
「……誰だ」
主人公が低く呟く。
格闘特化が首を傾げる。
「どうした?」
「見られている。確実に」
腰振りスペシャリストが湯気を払うように手を動かした。
「……気配はある。だが、姿は見えねえ」
拷問特化が浴槽の縁を叩く。
「監視か」
お兄さんが呆れた声を出す。
「またかよ。俺は普通に温まりたいだけなんだが」
事実、その通りだった。
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【女性露天風呂・特別室】
大きなモニターが湯気の中に浮かんでいる。
映し出されているのは、男性風呂の内部。
監視特化がポテチを齧りながら、満足げに端末を操作していた。
「最初から仕掛けておきましたわ♡ 解像度も音声も完璧です。ご主人様の湯船に沈む瞬間まで、残せてますよ」
魔導が扇子で口元を隠す。
「ふふっ♡ いい眺めですわね。主人公様の油断した表情……素敵ですわ」
科学が数値を読み上げる。
「体温上昇、筋肉の弛緩度、視線の動き……すべて理想的なデータですわ♡」
薬学が湯船に浸かりながら微笑む。
「リラックスしてるところを見るの、好き……♡」
森羅万象が優雅に湯をすくう。
「空間も整えましたわ。監視の死角は、ありませんわよ♡」
嫉妬が目を輝かせる。
「主人公様も、みんなも、両方楽しそうでいいね♡ 応援しちゃう!」
慈愛が穏やかに言う。
「温まって、疲れが取れるといいですわね♡」
エンジェルはバインダーを湯気から守りながら、ペンを走らせていた。
頬が赤い。ハイ状態だ。
「記録。主人公様が湯に浸かった時間、表情の変化、周囲の男たちの反応……すべて残します。
……ふふっ、見られていると気づき始めてますね。この反応も、愛おしいです」
潜入特化が影から短く報告する。
「男性側の脱出経路は、すでに制限してありますわ」




