表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
郷里の松  作者: ひじき
7/9

7話

「親父さん!大丈夫ですか?」

起きようとする老人を押さえ、そのまま動かない方がいいと伝えた。

頭を打っているはずだ。

「拓郎、おめぇ父親に向かってなんてことしやがる」

弱弱しく、だが吐き捨てるように言った。

「父親だ?ふざけたこと抜かすなよ。おめぇの悪事は今全部こいつに喋ったぜ」

「なんだと?!テメェこの野郎!」

叫びながら立ち上がろうとする。

ものすごい力だ。

「あの女に似てきたよなぁ!俺のやること全部邪魔しやがって!」

「誰がおめぇの邪魔なんかしたよ!おふくろはおめぇが殺したんだろうが!」

もう収拾がつかない。

私はただオロオロと、足元のふらつく老人が倒れこまないようにと手を添えるだけだ。

「だいたいおめぇは…」

ふと、動きが止まる。

宙を見るように目が虚ろになっている。

「親父さん……?」

様子がおかしい。

次の瞬間!


「うわぁぁぁ!」


老人が叫ぶ。

やはり頭を打っていたようだ。

叫んだ勢いで転んでしまった。

「親父さん、動かないでください!」

素人にはわからないが、頭を打ったとしたら大変なことになっている気がする。

「拓郎!救急車呼べ!拓………」

大男は冷めた目でこちらを見ている。

「さんざん俺たちをぶん殴ったバツだ。そのままくたばっちまえ!」

憎しみに満ちた目だ。

埒が明かないので、私は母屋から電話をかけようと立ち上がった。

すると

「タケ子……!」

引き攣り、上ずった声が響く。

「うわぁ!来るな!そもそもおめぇが悪いんだ!おめぇを埋めたのはアイツだぞ!」

のたうち回りながら、顔中を掻きむしっている。

まずいとは思ったが、足が動かない。


「ひぃ!ぎあぁぁぁぁぁ…」

声を張り上げた瞬間、見てしまった。

薄ぼんやりと浮かんだ……影。

覆い被さるように、老人の顔を覗き込んでいる。

恐怖に見開かれた目が、ぐるぐるとちぐはぐに動いている。

背中がぎこちなくしなっていく。

あれは…あの影は……拓郎にも見えているのだろうか。

2人とも動けない。

硬直した父親の口の端に泡が溜まっていく。

そのうちに


ボキッ


と音が鳴った。

あ、背骨が折れたのだなと、何故か冷えてきた頭で思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ