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第二十九話 地表観測

外部ハッチが開ききると、五機のUAUは順に格納区画を離れた。


青い海と巨大な大陸を正面に捉えながら、アルファ機、ベータ機、イプシロン機はひとまとまりとなって隊列を組み、その後方を自律運用の二機が追従していた。


やがて五機は大気圏へ入り、以前のように一気に高度を落とすことなく、安定した緩やかな動きで大陸沿岸へ向けて降下していった。


「……今回は、ずいぶん大人しいのね」


「観測地点まで、通常航行を続けています」


アリアの呟きに、セバスチャンが淡々と応じた。


「それは見れば分かるけれど。今回は一度も変形しないのね」


「前回の航行記録から、現在の環境では変形の必要がないと判断したものと思われます」


アリアは眼下を流れていく海面へ視線を向けた。


「以前、同じ環境を二度目に航行した時は、形を変えていたわ」


「変形しなければ飛べなかったわけではないでしょう?」


「ええ。その認識で問題ありません」


アリアはしばらく黙ったまま、眼下へ流れていく景色を眺めていた。


「……同期した視点で、あの動きを見てみたかったのだけれど」


しばらくしても、ベータ機に変化はない。


「……やっぱり受け付けないわね」


誰に伝えるでもなく、アリアは小さく呟いた。


五機はそのまま沿岸部へと進み、ほどなくして入り江が視界いっぱいに広がった。


大陸の縁は大きく抉られ、崩れた地層の間へ海水が入り込んでいる。周囲には衝突によって飛散した岩塊が点在し、海中にも沈んだ破片がいくつも確認できた。


入り江は半円形に広がり、海へ開いた部分だけがいびつに狭まっている。


「……よく、これで済んだわね」


軌道上から得た情報では、惑星全体への影響が限定的であることは分かっていた。


だが、目の前に広がる地形は、それが決して小さな衝突ではなかったことを示している。


「衝突角度と地点、それに隕石の組成。複数の条件が重なった結果でしょう」


「大陸の縁を浅く削ったのか。内陸へ落ちていれば、こうは済まなかっただろうな」


「その可能性はあります。より詳細な情報を得るには、現地での観測が必要でしょう」


マスターは入り江の周囲をひと通り確認すると、後方から追従する二機のUAUへ視線を移した。


「ここは二機に任せる。俺たちは、各地のモノリスを確認する」


その指示を受け取り、後方から追従していた二機のUAUが隊列を離れ、高度を落としながら入り江の上空で進路を分けた。


一機は崩落した沿岸部へ、もう一機は内陸へ向かっていく。


同期中の三機は、一定の間隔を保ったまま入り江を離れ、最初の観測地点となる高原へ進路を変えた。


大陸上を進むうち、前方に高原へと続く斜面が見えてくる。


海側から吹き上がる湿った風に押され、薄い雲が斜面を這うように流れていた。


三機は斜面に沿って高度を上げていく。


流れる雲の中へ入ると、それぞれの機体の周りだけ、雲が切り取られたように空隙が生まれた。雲はその境界をなぞるように、外側へと流れていく。


雲の層を抜けた先には、むき出しの岩肌が緩やかな起伏を描く高原が広がり、その各所には、周辺の岩とは組成の異なる小さな破片が点在していた。


湿った空気が触れやすい斜面には薄い膜のようなものがまだらに広がり、わずかな窪みには浅い水溜まりが点在していた。


「流石に、高原全体へ広がるほどではないようだな」


「そのようですね。岩の窪みなど、水分の集まりやすい場所に限って、微生物が確認できる程度です」


アリアは会話に加わらず、何かをぶつぶつと呟いていたが、言葉として判別できるほど明瞭ではなかった。


アルファ機を先頭に、三機は高原の上空を旋回しながら観測を続けていた。


ベータ機は、アルファ機との間隔と角度をほとんど変えることなく追従し、その軌跡をなぞるように、少し遅れてイプシロン機が続いていた。


その隊列を保ったまま、高度や旋回位置を変えながら、設置地点のモノリスとその周囲を何度か巡った。


モノリスの稼働に問題はなく、周囲の地形にも大きな変化は見られない。


一帯を見終えると、アルファ機は旋回を解き、そのまま高度を上げた。


ベータ機はその動きをほぼ同時になぞり、イプシロン機もわずかに遅れて上昇を始めた。


三機は上空で一度静止すると、進路を揃え、次の観測地点となる淡水湖へ向かった。


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