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 衝撃的な光景を二度も見たにも関わらず、思ったよりもすんなりと目覚めた。ただ、体は今にも壊れそうなほど熱を持っていて、薄着なのに、汗をかくほど暑い。無機質で簡素な目覚まし時計は午後十一時四十分を指している。滑らかに動く秒針を見つめ、俺は鮮明過ぎるデジャヴではないと確信した。悠李が自死を選ぶ前の時間へと戻ってきたんだ。彼をどうにかするまで戻ってこられるのか、それともこれが最後のチャンスなのか。初めて見た夢でさえ、二度の夢で救うことが出来たため、三度目があるかは未知の世界だった。もう、これは。


「最後のチャンスと思うしかない……」


 一度目と同じように、俺は悠李にメッセージを飛ばすことにした。文面はどうするか。前回と同じなら、死ぬ直前に返信が返ってくる。いい加減な内容はまずい。何か彼を引き止められることを考えなければ。俺は突発的にメールを送るのはやめて、じっくりと考えることにした。むしろ何も考えずに会いに行ったら良いのだろうか、と思うまで錯乱していた。

 何か情報はないか。スマートフォンの電源を入れると、医師の二宮先生のことを思い出した。動画サイトで番組に出演していたのだ。


『今回も呼んでいただいて、大変光栄ですよ』

 彼はブランド店で見たままの笑顔を見せた。

『またまた、先生はもう引っ張りだこですから! こんな番組と思われないか不安に思ってるスタッフもいっぱいいましたし』

『褒め言葉として受け取りますよ?』

『もちろんです』


 司会者のベテラン芸人は相変わらず上手に話を回していた。テンポのいい話が心地よく、ぐるぐると頭の中を不安が駆け巡るのを抑えてくれるようで、俺はたまらず見入ってしまった。医者の彼から何かいい話を聞けるかもしれない。


『さて、ニュースコーナーも終わって、二宮先生からお知らせがあるそうで』

『はい。少し失礼しますね』


 彼は机の下からフリップを取り出した。

 ――やっぱりこれだ。

 夢の中でみたあのカードを思い出す。


『実は、臓器提供について皆さんに知ってもらおうと思ってこの度お時間を割いていただきました。日本では臓器移植の手術が行われるようになってから随分と時間が経ちますが、未だ多くの方々が臓器提供者であるドナーを待ち続けています』


 彼はフリップを変えながら、臓器移植についての説明を始めた。すげーわかりやすい。これまでのデータや手術内容、法律など細かく説明してくれたおかげで、医学に精通していない未熟な自分でも言っていることが理解できた。


『勿論提供する、しないは個人の自由です。自分の、そして家族の大切なお体ですから、傷つけられないこともわかります。想いはどちらでも構いません。この制度を知らなかったという方が見ていらっしゃっていたら、どうか、どうか意思表示をしてくれませんか。保険証や運転免許証に記入するだけで終わります。するか、しないか、単純ですが、とても大きな問題です。あなたの判断で助かる命があるのです』


 真剣な表情で語る彼の話に、涙ぐむコメンテーターもいた。


『私が担当している患者さんにも、臓器移植が必要な方が沢山います。明日生きられるかもわかりません。臓器提供出来るか否か、その判断をしているうちに亡くなる方もいます――』


 俺はその言葉で確信し、一本の電話をかけ、悠李にメッセージを送った。



――



 メッセージを送ること三十分。見続けた動画のコーナーがいくつか終わる頃、スマートフォンは軽快な音を立てた。


『一花 悠李:新着メッセージがあります』

 待ち焦がれた返事が来た。飛び起きる。

 すかさずメッセージを開くと、十文字にも満たない言葉が並んでいた。


『家の前にいる』


 慌ててベッドから降り、カーテンを開くと、家の前に人影があった。ああ、生きていて良かった。安心した……。こんな夜に不安定な心のまま、一人で待たせてはいけない。すぐに階段を駆け降り、母に一言悠李に会ってくるからと告げ、玄関から飛び出した。

 暑くもなく、寒くもなく、丁度いい気温。夏で良かった。冬なら凍えて外に出るのも大変だ。制服姿のままで汗をかき、うずくまった悠李に声をかけると、彼は安堵の表情を俺に向けた。


「……悠李」

「千景」

「千景、ね……」

 わざわざ呼び方を変えてくる悠李の声で、我に返った。そうだ。夢のせいで忘れていたけど、こいつは俺と央子さんを重ねている――いや、それがなんだ。俺はただ人を助けたいだけ。それだけ、だから、別に。

 立ち上がる悠李に手を差し伸べる。ありがとう、と言い、背中の汚れを払って向き合う。

「千景のメッセージ、見た。あのさ、ちょっとだけ、歩いてくれる?」

「いいけど……遠くまではやめとこ」

「じゃあ、あの……公園でもいいかな」

「あ……うん」

 いこ、と歩を進める悠李。空気は冷たくも、温かくもない。ただ空に、二つの星が見える。曇りのない空だ。本音を隠して、他愛もない会話で沈黙を埋める。

 それにしても、あの公園か……。

 少し歩いてたどり着く、誰もいない夜の公園。事故にあった記憶が今もまだないので、改めて公園に来てみると変に緊張してしまう。ここでサッカーをしていたのだろうか。俺がここに来たから全てが狂ってしまったのか。考えれば考えるほど、息が詰まりそう……。大きく深呼吸をして中央付近に設けられた柵に体を預けた。隣に腰掛けた悠李が、目つきを変えて俺を見つめる。


「ねえ、話ってもしかして……」

「……俺、お前のこと夢で見た」

 やっぱりそうだよね、とため息をつく。

「そして……助けられなかった。悠李が落ちる姿を、夢で見たんだ」

 トン、と悠李の胸を突く。頭の中で何度も繰り返されるあの映像。瞼の裏にこびりついている。彼は全てを知っているかのような、悲しい顔をした。


「千景、俺もうだめかも」


 もうダメ。それは今、悠李は死にたい気持ちがあるということだろうか。頭の中に、また夢の記憶が蘇る。茶色の髪が風に揺れている。あの髪が赤に染まる。考えたくないのに、このままだと悠李は死この世からいなくなる――。

 掛けたい言葉、聞きたいこと、沢山ある。でも俺は黙って話を聞く。俺が止められるなら、悠李の真意を知らなければならないから。


「昨日……いや日付が変わっただろうし、もう一日前かな。いつもとは違う夢を見たんだ」

「違う夢?」

「……白っぽい雰囲気の教室で、俺、何もかも忘れて、窓に行って……声をかけられて……そして……そこで終わるんだ」

「……落ちた。そこから悠李は飛び降りたんだ。俺がそれを見た」


 俺の夢と全く同じ内容だった。そっか、と呟く彼の目に涙が溜まっていくのを眺めた。手の届く距離どころか、真横に悠李がいる。手を上にあげるだけで、その涙は拭える。でも俺が拭ってしまったら、悠李の気持ちを揺らしてしまうかもしれない。悠李には、自分のこと、央子さんのこと、俺とのこと……どうしたいのかを自分の手でハッキリさせてほしかった。それは、俺のためでもある。自分の気持ちも、もうわからない。顔を上へ逸らすと、点滅する街灯が目に入る。小さくため息をついて、淡々と言葉を紡いだ。


「悠李、何を思い詰めてる?」

「……千景、俺ね、千景に出会うまでは央子が人生の全てだった」

 知ってる。だから、考えたくない。視界の端で震える悠李の手を見過ごした。


「俺ね、家族も母さん以外とあまり上手く行ってなくて、その上昔から変な人に絡まれたり、女の子に囲まれたり、男の子から距離を置かれたり……友達があんまり出来なくて。でも俺が小学五年生の時、家の隣に央子が海外から引っ越してきた」

 滲んだ眼を指でなぞりつつ、静かに思い出を語り続ける。


「初めて会った時は元気な子だなって思った。学校でもすぐにクラスメイトと打ち解けた。あぁ、また俺とは違う世界の人間が増えたと思った……でも俺が悲しい顔で学校から帰ろうとすると、央子は必ずついて来た」

 ――一緒にかえろ。ほら、行くよ。

「俺が一人でいるのが気になってたみたい。勝手についてきて腕を引っ張って、家に帰る頃には俺は笑顔になってた。明るくて、強くて、俺に寄り添ってくれて……彼女の笑顔と優しさに救われていたんだ」

 央子さんはきっと、本当に優しい女性なんだろう。悠李の一番の人。誰からも好かれる、太陽のような女の子。非の打ち所がない人の代わりとしてずっといられるわけがない。いつの間に俺、こんなに悠李のこと考えるようになったんだ。


「……でも、事故が起きた。央子は目覚めない。母さんもフラッシュバックでパニックになることもあって。そうやって俺の世界は終わったのに、周りは進んでいくんだ。俺に立ち止まる暇を与えてはくれない。でも、そこに置いていかれるわけにもいかない」

 時間は勝手に進んでいく。含みのある言葉に驚き、悠李のほうへ向き直すと、彼越しに公園の時計が目に入る。屈められた背がどんどん丸くなっていた。


「だから、俺は高校に行った。彼女が目覚めるまで、今度は俺が居場所を作って待っていなきゃと思った。そこで千景と出会って、もっと、頑張れるようになった。人と話すのも、少しずつ気にならなくなった。俺にも央子の居場所が作れるんだって思えてきた。それなのに……」


 ポロ、と涙が流れる。堰を切ったようにどんどん涙が溢れてくる。彼が感情を揺さぶられることに央子さんが関わっている事実は揺るがなかった。俺は何を考えても無駄なのかもしれない。それなら、涙は、拭わないほうがいい。


「……さっき電話があって、容態が急変したって。あと数日持つかどうかって……普通は寝たきりになったら半年ぐらいで亡くなってしまうんだって……だからさ、ここまで生きてくれたのも奇跡に近いのはわかってるんだけど……」

「悠李……」

「今後意識が戻るかどうか、お医者さんもわからなくて……事故の衝撃で心臓がやられたままで動かないって……」

 項垂れた悠李。地面に落ちる水滴の跡が大きくなっていく。

「もう新しい心臓にする以外助けられる方法はないってさ……なぁ、助けてよ……ちかぁ……ッ!」

 声を荒げる悠李に肩を掴まれる。繊細で、美しい見た目に会わないほどの力。指が服にめり込んで、思わず声を漏らす。

「ぃッ……」

「千景が助けてくれるんでしょ……ねぇ……俺が代わりに死ねばちかは助かる……?」


 男前の顔が涙でぐしゃぐしゃになっていく。彼の問いに対して首を縦に振りたいが、俺が助けられるのは夢で亡くなる相手だけだった。彼女が死ぬ夢は見たことがない。悠李が死ぬくらいなら、俺が死んだほうがいいのに。体の奥底から熱が湧いてくる。目頭から零れそうになる涙を唇を噛んで抑えた。

 俺、悠李のことが、好きだ――。

 好きになっていた。初めてキスされたからじゃない。見た目がいいからじゃない。きっかけはキスでも顔でも、いつの間にか一花悠李というその個人に惹かれていたのだ。繊細で、脆くて、触れたら消えてしまいそうなその姿が、俺の存在を肯定してくれる気がした。きっと、この夢を見る力は央子さんを助けたらなくなってしまうだろう。そうなったとき、悠李にとって俺の存在価値も消えてなくなる。だから、今、彼女を助けたくないなんてどす黒い感情を捨てきれずにいたのだ。

 ――あほらし。

 笑顔が一番似合う美しい人間なのに、こんなに泣いて。

 なんで俺は悠李を突き放していたんだろう。

 キスされて、それなのに俺じゃない人を見ていたと知ったから?

 思わせぶりな態度を取られたあげく、好きな人を助けてほしいと言われたから?

 ――ただ、自分が悠李といられなくなるのが、怖かっただけだ。

 悠李が誰を選ぶかだなんて、央子さんが目覚めてから考えればいい。それがお役御免の俺じゃないことは、重々承知の上だ。それでも、悠李の笑顔を取り戻してあげたい。俺の行動が、誰かを救えるのなら、それで満足だ。

 悠李の落ちかけた涙を指ですくう。

 どうしても俺が助けてあげたい。俺にしかできない。自分のわがままで悠李を傷つけたままにしておきたくない。悠李が感情が揺さぶられるくらい大切にしている人を助ければいい。

 自暴自棄になる彼にかける言葉が、自然と自分の口から出ていた。


「悠李、お前が死んで、央子さんはどう思う? お前が死んだって聞かされて、人生を心から楽しめるか?」

「それ、は……」

「正気になれよ! むしろ、お前がそばで見守って、大丈夫って声かけて、呼び戻させるしかないだろ。一人じゃ受け止めきれないなら、俺も一緒にいるから。やっぱり俺は、悠李の泣き顔はもう見たくない」


 強引に悠李の涙をスウェットの袖口で拭う。その勢いままに頬を手で挟んで正面を向かせた。ああもう、折角の男前が台無しだ。


「ぅ……」

「俺に考えがある。もしかしたら、いや、これが運命なら、間違いないかもしれない」

「……え……?」


 俺が何のために誰かを助けられるようになったのか。ずっとそれが疑問だった。しかし、今ならきっとこれが正解だとわかる。


「悠李、俺が夢を見られるようになったのは、たぶん、事故に遭ってからだ。俺は何のためにこんなことをしているのかわからなかった。見知らぬ人を助ける理由は何故? ここ最近夢の頻度が高くなった。何故?」

「……央子の生死に関わるって言いたいの?」

「そう、この事故の夢を見る力は、央子さんのために与えられたものだと俺は思う」

「でも央子が死ぬ夢は見てないんだよね? 一体どうやって……」


 スマートフォンの着信音が、悠李の話を遮った。俺はスピーカー状態にして電話に出た。


「もしもし」

『泉野さんですか! 先程のお電話の件なのですが……今さっきご納得いただけました』

「そうですか……ありがとうございます……! まだどうなるかわからないかと思いますが、本当に助かります」

『いえ、良いご報告が出来るかはやはり時間がかかると思いますので……また何かあればお電話いたしますね』

「はい。進展ありましたらこちらからも伺います」


 電話を切ると、不安そうな悠李が俺の顔をのぞいていた。


「誰?」

「先月、とある人を助けたんだ。普段なら事故に関係する人は誰一人として死なないんだけど、事故じゃないところで亡くなるのは別なんだ」

 そう。事故は止められても病気は止められない。事故そのものを防いでも、その人が病気を患っていたら、その病気自体は俺の力ではどうすることもできない。

 俺はスマートフォンで動画配信サイトの画面を見せた。


「央子さんに心臓を移植する」


「……まさか」

「さっきの電話は事故に関係していて、そして病気で入院していた方の勤め先からだった。その人は脳梗塞で意識を失ってからしばらく入院してたんだけど、昨日脳死判定されて……ご家族が相当悩んでいたらしい。でも本人の意思は提供したいと、免許証に丸がついていて。俺がそのタイミングで連絡したから、納得出来たって」

 気さくに話してくれた、タクシーの運転手。名前はそう……山根さん。あの時の事故は防げたが、病気の進行は止められなかった。良い人だった。また、あの車に乗りたかった。一筋の希望を見つけた悠李の目から、再び涙が溢れ出した。すすり泣く悠李の頭を抱きかかえる。小ぶりな頭。沢山心配をかけてきた。ごめんな――。


「俺はきっと命を繋ぐ役割だったんだ。俺が助けてきた人は、全員何らかの形で央子さんの死と繋がってたんだよ」


 二宮先生を知ったのも夢のおかげだ。これまでの人々の繋がりが分かった時、全てが理解出来たような、パズルの最後のピースはまったような感覚だった。


「最後は悠李、お前だよ。だから悠李が生きなきゃ、彼女は目覚めないんだ」

「ちか……ちか……俺、何てことを……」

「わかったか?」


 彼は何も言わなかったが、決意は固まったようだった。俺の役目も、もう終わる。数回頭を撫でで、深呼吸をさせる。すう、と息が入るたびに膨らむ制服のシャツ。そうだ、もう夜中だ。早く帰らないと補導されてしまう。

 なあ、と声をかける。

「今日は俺の家泊まってけ。今頃は移植の話で向こうも忙しいだろうから、明日の夕方にでも病院に行こう」

「うん……ありがとう。母さんにも連絡しておくよ」

 寝ているだろうけど、と携帯を操作する悠李。


 暗い夜道を歩く。悠李が落ち着くまでの間、空に光る星を数えた。一つ、二つ、三つ。家から出た時よりも、綺麗な星空に見えた。

 家に着き、玄関を開けると、母親が出迎えてくれた。俺が出ていく様子が気になっていたのだろうか。心配させたな……。

 母はボロボロの俺と悠李の顔を見て、にっこりと笑った。


「千景。悠李くん。おかえり」

「え、っと、自分はお邪魔します、の立場ですが……」

「あなたの居場所は何処にでもあるのよ……うちだってその一つなの。一人で悩まなくていいからね」

「あの、その、ぁ……ありがとうございます……」


 折角泣き止みかけた悠李の涙の量が増えた。居場所という言葉に思うところがあるのだろう。


「千景もよ。いっつも我慢するようになっちゃって。今だって悠李くんの手前、泣くわけにいかないって思ってるんでしょ」

「……なんだっていいじゃん」

「……もう。夜遅いんだから早く中入りなさい。お父さん、明日も早いし静かにね」


 正直、母とも少し気まずかったが、こうやって出迎えてくれるあたり、本当に俺のことを大切にしてくれてるんだと思うと、許すしかなくなってしまう。俺たちは大人しく家に入り、悠李にシャワーを浴びさせて、散らかしたままの俺の部屋に入った。悠李が着たおかげか、くたびれた俺のスウェットが、まるで新品のような顔をしていたのは少々許せない。悔しさを感じていると、母親が来ておやすみ、と言い残し布団を一式置いていった。


「悠李、敷布団で寝れる?」

「うーん、いつもはベッドだけど……」

 そんな気がしてた。

「じゃあ俺床で寝るからベッド使って」

「え! わ、悪いよ……」

「今日は色々疲れてるだろ」


 流石に枕は変えるか。敷布団をセッティングし、お気に入りの枕と来客用の枕を入れ替えようとベッドへ手を伸ばす。その時ぼふ、と視界が真っ暗になる。頭が掛け布団に埋まったのだ。背中に感じる温かい体。悠李が被さってきたとすぐに気がついた。その瞬間、耳元でちか、と声をかけられた。


「な、に」

「……横で寝てほしい」

「寂しいの?」

「そうだよ」

「……仕方ないな」


 悠李は安心した面持ちで俺から離れる。初めて会った時はキラキラした、勝ち組の人間だと思っていたが、彼の生い立ちを聞いてから、どれだけ孤独な思いをしてきたのか、そんな寂しいことを考える時間が増えた。そして信用出来る人間がどれだけ少なかったのか。彼に対して同情のような愛情のようなものが芽生えてしまい、優しくしてしまう自分がいた。そんな彼が、好きになってしまった。

 枕を並べて、そのまま俺は布団に入る。携帯を見ると、時刻は午前二時を過ぎていた。


「もう二時過ぎてるじゃん。早く寝るぞ」

「……お邪魔します」


 育ち盛りの青年二人が寝るには狭いベッド。これ、寝れるのかな……。悠李は安心したのか、数分後には寝息を立てていた。悠李が寝れるなら、まあいいか。


 俺は悠李の頭を数回撫でて、呆気なく眠りについたのであった。



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