11.5
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白い世界。
見慣れていたはずの景色も、くすんで見えた。今にも崩れそうな雰囲気があり、哀歌や鎮魂歌が流れてもおかしくない。いつもと違うのはそれだけではない。
ワンピースを着た女性が倒れている。動かないまま、
「!? なぁ! おいッ!」
死んだ……のか? あまりの事態に目が覚めたが、頭の整理は付いておらず、本能のままに動いていた。グッと肩を持つと、体のほとんどが真っ黒で、そして掴むことを許さなかった。彼女――央子さんの体が今すぐにでも機能しなくなることは明白だった。
「……けて」
「え?」
「私を助けて……」
「どういうことだよ……!」
ぎゅう、と彼女は俺のシャツを握りしめた。弱っているとは思えないほど力強いものだった。
「私を助けてくれればいい……お願い……お願い……!」
「悠李はどうするんだよ!」
悠李の名前を出すと、彼女は何かを言おうとして、やめた。にこ、と笑う彼女の顔は何処か優しかった。
「……任せ、ました」
「な、なぁ、何か見えてるのか……? もしかして……」
彼女は左手の指で俺の口を塞いだ。
「お願い、助けて……私たちを……救って……」
どうして、と言おうとした時、白くもやがかかり始めた。意識が遠のいていく。彼女の消えかかった右手を握ると、一枚のカードが握られていた。書かれた文字は読み取れなかったが、その色を見て感づいた。
そうか。俺のこの能力は――。
白の世界は崩壊を始めた。
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