6.
「リア兄、夕食だよ~。」
「兄さま、起きてください。」
リデルが目を開けると、ラピスとティアラが両側から覗き込んでいる。
『あーなんだ、ここは天国か?天使が二人、、なんてことだ。よく見たら妹達ではないか。どういうことだ。この可愛らしさは罪なのではないか?そうか!妹達はかわいすぎて地上に下ろされた堕天使の生まれ変わり、、あーそう考えると、納得できるな、、あー、かわいい。。。。。。。。。。。。。。。。。』
「リア兄は、いつも寝起きが悪いな~。」
ラピスがひょいっとリデルを裏返し、その上に馬乗りになり、そのまま首に腕を回した。
ボコッ、グキッ。
「う~~。ギブッ、ギブッ、ギブアーーーップ!」
顔を真っ赤にしたリデルがバンバン床を叩く。
「めー覚めた~?」
コブラツイストをかけられ、リデルは正気を取り戻した。
「起こしてくれたんだね、ありがとう。夕食の準備は、もう出来た?」
俺は乱れた服を整えて、テントの外に出る。
美味しそうな匂いがする。
騎士たちが、いくつかの固まりに分かれて、それぞれ焚き火を囲って、陽気に話しながら食事をしている。
俺も父母のいる焚き火の側に腰を下ろした。
今晩の食事は摘んだ山菜と木の実、昼過ぎに仕留めた鳥肉を塩だけで煮込んだスープに乾燥させたご飯を入れた雑炊のような物と焼き鳥だ。
スパイシーな薬味が隠し味になっていて、サムゲタンに山椒を効かせた様な味で俺は気に入っている。
これ、酒の後の締めに食べたいよね。
「もう! りゅう、焼き鳥、食べ過ぎだよ。」
ラピスとりゅうが焼き鳥を取り合ってる。
りゅうが、火が通った先から食べてしまったようで、ラピスが怒ってる。
争ってる隙に、俺も2、3本頂く。
「食後に一杯どうかな?」
食事を終えて一服していると、レオナルド騎士団長がグラスと酒瓶をもって話しかけてきた。
俺が差し出されたグラスを受け取ると、褐色のラズベリーの様な穂のかな匂いの果実酒が注がれた。
「是非、いただきます。」
この国の酒なのだろう、カリフォルニアワインのような軽く、フルーティーでさっぱりとしていて口当たりのよい酒だ。水がわりにいくらでも飲めそうだ。
「ここまで、兵力を落とさず進めたのもハーツ商会さんのおかげだよ。」
レオナルドがニカッと人懐っこい笑みでお礼を述べる。
「お役に立てて何よりです。残り一晩ですが、しっかり護衛させていただきます。今後もハーツ商会をご贔屓に。」
俺は営業スマイルでそれに答える。
「ハーツ商会さんは、護衛以外も物品販売なんかもしてるみたいだけど、他にもやっているのか?」
「はい、ハーツ商会は現在は護衛の仕事の比率が多いですが、はじめは輸送屋で起業したんですよ。先日は人探しの依頼を受けましたし、その前は商談の交渉の請け負いでしたね。騎士の方々から受ける仕事は護衛がほとんどですけどね。」
「おう、そうなのか。多才だな。」
レオナルドが少し考え事をするような表情になる。
「。。。」
レオナルドが眉を寄せてリデルの目をじっと見た。
「なにか、お困り事でも?」
「。。大した事ではないんだが、、」
??
何か頼みたそうな感じだよね。。?次の仕事につながるかな?護衛以外の案件かな。。?
営業モードの思考をしていると、その様子に気づいた父がスッと話が聞こえるところまで近づき腰を下ろした。
親父、聞こえるように話をしろ。ってことだよね?
20才になった俺は、気づいた時には仕事の受注もするようになっていた。とはいっても、まだ、仕事の危険度を見誤る事がある。父はそんなところをさりげなくフォローしてくれている。
「。。ハーツ商会さんに頼んで良いものか、、身内事で大した事ではないのだが、、」
レオナルドは切り出しにくそうに話し出した。
「ハーツ商会は、そんな高尚な商会ではないですよ。 金額は内容しだいで違いますが、時には、迷いペットの探索なども引き受けますしね。」
俺はレオナルドに話すように促す。
「。。まー、少し恥ずかしい話なんだが、叔父が娘のことで、俺に相談に来て、、でも俺もすぐに、この遠征に出なければならなかったから、詳しくは相談に乗ってやれなかったのだが、叔父が切羽詰まったような顔をしていたのが気になってて、、」
「、、それは、どんな相談だったのですか?」
「叔父には2人の娘と1人の息子がいるんだが、17才になる次女が1年ほど前から花嫁修業のために、ある貴族のお屋敷に奉公に出ているんだ。奉公といても、叔父とも懇意のなかの屋敷なので、週末は休みが貰えて、いつも週末は自宅に戻って来て、家族と週末をすごしていたんだが、3か月前から、週末に帰ってこなくなってしまったんだ。」
「、、その姪子さんと連絡は?」
「手紙では、今週も帰れないと連絡は来ているようなんだ。筆跡も姪のもので間違え無さそうなんだが、顔を見せないというのが叔父的には引っかかるようで。理由は、忙しくて休みなく働いている。と書かれているようで、それで体調も大丈夫なのか?更に心配になっているようで。」
「、、その、叔父君は奉公先のお屋敷には訪ねたのですか?」
「ああ、訪ねたい旨を伝えたようなんだが、娘が会いたがらないから、と断られたようで。押しかけるのも相手に不敬だし、それで、俺に一度会って来てくれないか?と相談に来たんだ。」
「、、家庭の問題ですかね?」
「まー、それで済めば俺も心配無くなるんだけどね。妹みたいに可愛がっている姪っ子の事は俺も心配なんだよ。できたら、王都に戻ったら、一度叔父の家に訪ねてくれないか?仕事の報酬は俺に請求してくれて構わないから。」
「ええ、訪ねるぐらい構いませんよ。明日、王都に戻るので、明後日ぐらいには尋ねられますが、突然訪ねても大丈夫ですか?」
「ああ、念のため手紙を用意する。叔父は、礼儀作法には寛容だし、急に行っても歓迎してくれるとは思うけどな。」
「では、叔父君をお尋ね致します。」
俺は、営業スマイルをにこっと返し承諾した。
仕事の話はここまでだと悟った父が母や妹のところに戻り、テントまで、騎士を寄せ付けないように妹達をエスコートすると、今夜の警備に当たる場所に移動したのが見えた。
「ところで、ティアラちゃんとラピスちゃんにはイイ人とかいるのかな?」
「います!!!(俺が)」
『いきなり、なんて話を切り出してくるんだ。とっさに変な返しをしてしまったではないか。なんだ、縁談でも持ちかけてくる気だったか?まーいい、まだ早い、後3年は、いや、5年は、俺が変わりでいいんだ。いいんだよ。それで、いいんだ!!』
これ以上双子への悪い虫の話にならないように、リデルも早々に雑談を切り上げると、警備の所定位置に移動した。
明日は、ドース王都に戻る。
歩けば5日程かかる距離だが、りゅうにちょっと頑張ってもらえば、ひとっ飛びだ。
数時間もしないで着くだろう。
次回は、リデルとりゅうの出会いの閑話です。




