24.
「この匂い、記憶があるぞ!」
過去の嫌な記憶がよみがえる。
ヤバ! まじかよ!
「リデルさん、どうされましたか?」
「いえ、何でもございません、ご安心ください。」
ランチェスの案内で温室に入り込んだ。
「リア兄、臭いよ。臭いよ。もう、耐えられない。」
「きゅ~!」
「ちょっと待ってろ、ひとまず、バリア!」
ラピスとりゅうにヘルメットのように、頭を覆うように防御かけてやる。
空気は通すから、匂いの完全遮断は無理だけど、少しは低減にはなるだろ。
この甘さのある癖のある匂いは男性にとっては決して悪い匂いではない。
俗にいう媚薬の効果のある、匂いだ。
ただ、俺にとっては、二度と嗅ぎたくない匂いだな。
「ランティスさん、もしかして、、その女、髪色、ピンクですか?」
おれは、ランチェスの隣に行き、小声で尋ねた。
ランティスが右眉をくっとあげた。
「そうだよ。。 もしかして、 リデルさん、あなたも??」
イヤ! 違うから!! 誤解はやめてくれ!
「いや、俺は、食われてはないですから。」
あいつか、やっぱり、あいつなのか!!!
温室の中でも、ひと際、装飾の激しい扉の前にきた。
「サティーナ様、すこし、よろしいですか?」
ランティスが、トントンと扉をたたく。
ラピスとりゅうは、ランチェスとは反対側、扉を開けた時、死角になる位置に立たせる。
シャルロット様、両親は廊下の先の離れた場所に待機とした。
「あら、ランチェス。 族の退治はもうすんだの?」
サティーナが扉をあけながら、ランティスに尋ねる。
「サティーナ様、珍しいお客様ですよ。」
俺は、スッとドアの内側に滑り込むように部屋に入る。
顔を見られないように、45度腰を折り、お辞儀をする。
「初にお目にかかります。シュディング公爵にお世話になっております。ハーツ商会の者でございます。」
扉は少し、開いたままにし、いつでもラピス、りゅうが入ってこれるようにした。
「あら、なんのご用?」
俺は、右手で顔を隠すようにしながら、ティアラに近づく。
バチッ!
ティアラの腕をつかもうとすると弾かれた。
「痛っ!」
反動で顔を上げてしまった。
「あれ? あなた、リデル? リデルじゃない!」
「イイエ ワタシハ ソンナ ナマエ デハ アリマセン」
「兄さま? 兄さまはリデルですわよね?」
おお、妹とよ~。たまには、空気読もうよ!
「やっぱり、リデルなんじゃない! まあ、ティアラとは兄妹なの!」
知らずに連れだしたのかよ!
「こちらに妹がうかがっているとお聞きして、迎えに参りました。これ以上のご迷惑は、ティアラ帰るよ。」
すっと、何の気配もなく俺とティアラの間にサティーナがふわっと移動した。
しまった!
「リデル。ねえ、兄妹なのね! 偶然ね! 偶然ね!」
厄介だ、こいつは、マジ厄介だ。
「あれ? これは、サティーナさんですか? お姿が変わっていたので、気づきませんでした。」
「まー、そうでしょう! 若返ったのよ!」
いや、わかるよ。 お前のその妖艶さと、癖のある目つき、中身漏れ出してるから。
いくら隠しても、少女じゃねーよ。
「あーそうでしたか。 まあ、お久しぶりですね。 元気そうで何よりです。」
俺は、社交辞令を一通り唱える。
「リデルとティアラ、両方とも手に入るなんて!」
なんか、物騒なセリフ吐いてるな。
「はは、では、われわれは、明日早いんで、帰りますね。」
俺も意味不明なセリフを吐きながら、ティアラを手招きする。
ティアラ、何でもいいから、俺の近くまで何とか自力で来てくれ!
「だめよ。」
やばい!
「ティアラ! 今すぐ、その女から離れるんだ!!」
ティアラが俺の声にきょとんとしている。
その表情、まじ、かわいいけど、今は違うから!
サティーナがティアラの肩を抑えるように、ティアラを後ろから抱きしめる。
「妖狐!! やめろ!!! 俺の妹に近づくな!!」
サティーナが愉快そうに笑う。
「やめろ、妖狐、、その汚れた手で、俺の妹を触るな!!!」
「あら、急にどうしたの? リデル。 昔はあんなに、、」
「目狐!! その口を閉じろ! ティアラから離れろ!」
やめてくれ!! 頼むから、妹の前で、その手の会話はやめてくれ!!!
「妖狐、なぜ、ティアラを攫った?」
「なぜ、って? ティアラちゃんはかわいいじゃない。私、気に入っちゃったの。」
「それだけか?」
「だから、私のコレクションとして、側に置きたいわ。」
冗談じゃない!
「それは、出来ないな。」
サティーナが、また、ニコッと笑う。
「そうね。 ティアラちゃんもだけど、あなたもコレクションに入ってくれていいのよ。」
話、聞いてね~。 やっぱり、この人、人の話聞かないよね。
俺は、ティアラに目線をむける。
「そいつは、そんな姿だが、実年齢は300超えてる、婆さんなんだぞ。」
ティアラが驚愕の表情でサティーナを見る。
そうだ! ティアラ、その本当の少女の純粋なまなざしで見てやれ!
「かわいくなんてないんだ! 見た目がそれでも、中身は汚れた大人だ!」
ティアラがさらに驚愕の表情でサティーナを見る。
くらえ! 妖狐! 本当の少女とは、こういう表情ができるんだぞ!
「そうだぞ! 見た目はいくら若くても、中身はただの汚れきった大人だ!!」
ティアラがさらに、さらに、驚愕の表情でサティーナを見る。
「ティアラちゃん、そんな、目でみないで。 女性はね、見た目がすべてよ。 中身なんて飾りよ。」
サティーナが少し動揺している。
俺は、容赦なく心理的ダメージをサティーナに与えていく。
「お前、ここ数年で何歳、若返ったんだよ。マジ、キモイよ!!」
「リデル? 何言ってるの? キモイ?」
サティーナ、俺は、昔、お前にいいよにあしらわれていた、18の俺じゃないぜ!
「いや、本当、当時25歳ぐらいの見た目だったか、そのときの方が、まだ、マシだたぜ。」
サティーナのティアラをつかんでいる腕が緩んできている。
「300歳なのに、見た目が15歳、いや12歳ぐらいか? 俺、そこまで行くとマジ、無いな。 なっ、ランチェスもだろ?」
俺はランチェスにも同意を求める。
「無いですね~。俺も中身300歳で許容できるのは30歳までかな、25歳まで許容って、リデルさん案外キャパありますね。」
サティーナがぷるぷると揺れている。
おお、ダメージ受けてる?
「何、やってんだよ。 それだけ若返るのに、この国の地力、どれだけ吸ったんだよ。無駄な若返りだよな。 逆効果っていうの、国に帰っても、地位やばいんじゃね?」
「ひどい! ひどい。。」
おー、なんか、効いているな、この攻撃。
「見た目が若けりゃいいってもんじゃないぞ。 お前、中身300歳なんだから。」
おっ! サティーナがぷるぷると震えている。
あれ? もう一声か?
「300歳で見た目12歳とか、マジ無いわ!!」
「300歳、300歳って連呼しないで! まだ、298歳よ!」
いや、いや、 それアラウンド300でしょ。
泣きそうなのか、目頭にサティーナが手を当てる。
ティアラから手が離れた。今だ!
「ラピス、行け! ティアラ奪還、その女にぶち込んでやれ!」
ドーンっ。
ラピスが強化した体で、全力でサティーナに体当たりした。
「ティアラ、早く、俺のところに来い!」
ティアラが、我に返って、俺のところに走ってくる。
「ティアラ!」
リデルは、力強く、ティアラを抱きしめた。




