19.
「ティアラ!」
執務室の机上を確認する。
版画用のイラストは、ほぼ完成しているように見える。
お絵かきセットも片づけられている。
部屋に荒れた様子もなく、争った形跡はない。
ティアラは抵抗をしなかったように見える。
でも、胸騒ぎがする。
なんだろう、部屋に微かに、先ほどまではなかった匂いが混じっているように感じる。
「なんだろう、遠い記憶に嗅いだことのあるような、、」
ティアラ意外がこの部屋に入ったのは間違い無いだろう。
そいつが連れ出した可能性が高い。
「1人では出ては行けない。」と伝えた。
ティアラは故意に言い付けを破る子ではない。
「顔見知りか?」
この屋敷でティアラの顔見知りなんて1人しかいない。
「くそっ、シャルロットか! 探ってる事に気付かれたか。」
「ティアラ!」
ばくばくと鼓動が早くなってくる。
ティアラが危ない? ティアラが危ない!
頭に血が上る。
ドッ、ドッ、ドッドッドッドッ
「ティアラ!!!」
ぐあーーーーー。
リデルは、押さえていた魔力を解放した。
ドン、ドン、ドン、ドン
4本の魔力の塊を外に向けて放つ。
「ラピス、りゅう、緊急事態だ、来い。」
放ったのは、緊急を知らせる合図の魔力だ。
間髪入れず次の呪文を唱える。
「、、我の目となり、耳となれ、、」
透視の呪文を唱え、触手の魔法を放つ。
リデルの体から糸状の魔力が四方に向かい伸びてて行く。
糸の先の情景が頭のなかに流れ込んでくる。
「 いない、いない、いない、」
触手となる魔力を数十本打った、同時に放った触手の先端の映像は走馬灯のように容赦なく流れ込んでくる。
リデルの処理能力限界まで触手を放った。
バンッ!
「何事です! リデルさま!」
そこにシャルロットが駆け込んできた。
「シャルロット」
瞬間、本能的に敵と認識した。
腕に魔力を這わせ、床を蹴る。
瞬間、シャルロット背後をとらえ、右手は首を、左手は両腕を拘束するように締め上げた。
「ティアラはどこだ。」
怒りに満ちた低い声で尋ねる。
「リデルさま?」
「この屋敷の魔法使いは、シャルロット、あなたでしたか。」
ザッ!
リデルを背後から、
殺気を帯びた剣が降りかかってきた。
「お前は、偽物!」
シャルロットを押さえたまま、身をかわし、相手をにらむ。
「シャルロット様を離しなさい。」
「偽物、ティアラを返せ!」
「何を言っている、シャルロット様を放しなさい。」
「ティアラはどこだ?」
シャルロットの首を締め上げる。
「くっ。ティアラさまの事は知りません。」
シャルロットは少し苦しそうに答える。
「ティアラはどこだ?」
俺は、脅すように訪ね、さらに締め上げる。
「ほ、ほ、本当に、し、しらない、の、です。」
まだ、答えないか。
さらに締め上げる。
「やめろ!それ以上やれば、取り返しがつかなくなるぞ!」
偽物が怒鳴る。
「だったら、貴様が答えろ!」
俺も怒鳴り返す。
「ティアラさんのことは、本当に知らないんだ。」
偽物が答える。
そんなわけ、ないだろ!
「では、質問を変えようか。貴様は誰だ。」
俺は脅すようにさらに低い声で尋ねる。
偽物がシャルロットの顔ををみて伺う様な仕草をする。
シャルロットは何か決断したように頷く。
「あなたは、これを聞いたら、後戻りはできませんよ。それでも良いですか?」
偽物が、通告してくる。
「何を言っている、質問に答えろ!」
お俺は、怒鳴りつけた。
これ以上待てない! 待たない!
「私は、ドース王国、第三王女、シャルロット・ラズ・ドース王女の護衛騎士だ。それがどういう意味かわかるか?」
偽物が踵をただし、答えた。
は?
「そして、お前が今締め上げているお方こそ、ドース王国王女、シャルロット様だ。今すぐ、姫様から離れろ。」
はっっ?
一瞬締め上げていた腕の力がぬけた。
「こほっ、こほっ、っ。リデルさま、離してください。」
「どういう事だ?」
リデルは、想定外の情報にフリーズした。




