16.
「リア兄~! おかえり~!!」
「きゅ~!!!!」
リデルは、がばっとラピスとりゅうを抱き締める。
「会いたかったぞ!!」
「リデル、お疲れ様。今日は、皆で食事ができるわね。」
「母さん、うん。明日からの動き方について話しながら食事したい。」
「そう、なら、個室に食事を用意してもらえるように宿にお願いするわね。」
「ありがとう、俺は、先に風呂に入るね。」
リデルが風呂に向かうとりゅうがついてきた。
「一緒に入るか?」
「きゅ~。」
よしよしと頭を撫でてやる。
「予想範囲ではあるけど、重いほうの仕事になっちゃたね。」
りゅうへと言うよりは、自分に向けて呟く。
前回の騎士団の護衛業務はそれなりに危険度が高かったから、次の仕事は、休息のつもりで軽い仕事を受けるつもりでいた。
危険な仕事の報酬が高い、今回も最終的に危険が高かった場合、報酬を上乗せする契約にはなっている。
でも、そいうことではない。
ここから、先が読めない。
「俺は、兄ちゃんとして、みんなに無理はさせちゃいけないのにな。」
情けないよね。という表情でりゅうの顔を覗き込む。
「きゅ~。」
「そうだな。落ち込むより、うまく行く方法を考えろだな。湯にでも浸かりながら考えるね。」
この宿の温泉は内風呂は小ぶりだが、露天風呂は広くて気持ちがいい。
俺は、服を脱ぎ、りゅうの首輪を取ってやり、風呂場に入る。
先にりゅうを洗ってやる事にした。
「気持ちいいか?」
「ぎゅ~。」
「あっ、ごめん、ごめん。 目に泡がはいちゃったな。」
ザバーッ。桶でお湯をかけて、泡をながしてやると、りゅうはプルプルと水を飛ばす。
「うぉっ! 急にプルプルするなよ~。」
こんなやり取りが、まじ、癒される。
転生前の日本という国にくらべ、この世界は圧倒的に死ぬ確率が高い。危険とは隣り合わせで、自分も家族も何時命を落としてもおかしくない。
だからなのか、日常のなんでもない家族とのひと時に、ホッとする。
リデルも体を洗い、露天風呂に入る。
「よし、明日からの作戦を考えよう!」
『ひとまず、カトリーヌとは容易に会える状態ではないことは分かった。屋敷に勤める女性は、侍女と下働きを合わせても30名程、あの規模の屋敷にしては、かなり少なめだ。事情があるのか? ただ、シュディング公爵が節約家なのか? どちらとも言えないな。カトリーヌについての事情を知っている人物も特定できてないな。 シャルロットが侍女に関して質問した時警戒していたし、重要人物ではありそうだな。 もう少し、カトリーヌについて揺さぶりをかけてみたいな。 カトリーヌ以外にも行方が分から無くなっている人物はいるのかな? その辺りは、親父の調査結果を後で聞けばいいか。 最悪、シュディング公爵と一線交えることになりそうだけど、戦力が把握できていないな。 貿易で金を設けているぐらいだから、傭兵、私兵は持っていそうだがな。。。。。。。。。』
ぶつぶつ、仏頂面で口まで温泉につかりながら考え込む。
「リデル。 いい湯だね~。」
「あっ、親父、お帰り。 あれっ? りゅうは? 」
気づいたら、父が湯に入ろうとしていて、りゅうの姿が見えない。
「りゅうに長湯はかわいそうだぞ。 私が来たのに気付いて、ふらふら上がってきたから、体拭いて湯冷めしないようにしといたから、心配ないよ。」
「あ~。 りゅうに悪いことしちゃったな。 親父ありがとう。」
「リデル。 手がかり無さそうなんだね。」
「そうなんだよね。少し揺さぶりをかけないと、重要人物も特定できないかな。」
「じゃあ。 外から少し圧力をかけてみようか? 」
「どうやるの? そうだね。 ストーン伯爵にでも、娘と会いたいと家を訪ねてもらおうか?」
「あー。そうか。そのとき態度の変わったヤツが、重要人物だね。」
「あと、行方不明者だが、他にはいないようだな。」
「そうか。 そうなると、人身売買の線はほぼ消えるね。」
「その点はよかったな。 他国に売り飛ばされているとなると、さすがに今の契約の延長線上とはいかないからな。」
「リデル。 もうそろそろ上がった方がいいんじゃないか?」
くちゃくちゃ考えていたら、長湯しすぎた。 くらくらして気持ちが悪い。
「上がったら、エリーに回復でもかけてもらうといいよ。」
「そうだね。間違っても、加護はかけられないように気を付けるよ。」
リデルは、フラフラしながらも、少しすっきりした顔で温泉から上がった。




