13.
そして、潜入に成功した。
「、、、、はい、承知致しました。 商品の市場拡大にご協力致しましょう。」
上品な衣装を纏ったリデルは、大げさに、腰を45度に曲げ、腕を胸に添え、わざと道化のような態度をして喰えないヤツ的な演出をした。
その隣、ティアラも兄を真似るようにお辞儀をする。
『ははっ! ここまではチョロかったな。』
シュタング公爵にはハーツ商会として、接触することにした。
「町で商売するのに、ご挨拶させていただきたい。」という形で、アポイントを取りつけ、面会の機会をえる。
まずは、ハーツ商会の売り込みから入った。
金儲けに積極的な野心的な商人を装って、「あー、はいはい、よくいる積極的な商人ね。」てな感じでシュタング公爵には接触。
ドリンクのマーケティング戦略やブランディングの話をもちだし、それなりの市場シェアを得ていることを、それとなく話題に盛り込んだら、案の定、シュタング公爵の目つきが変わった。
雑談を交え、それとなく、警戒を解いてゆく。
興味を引かせたところで、流れで新しいサービスの事業化の話題を持ち出した。
「商品のマーケティングの知識を金で売るよ。」というそのサービスは、転生前の日本では、「コンサルタントサービス」と呼ばれていた商売だ。
まだ、こっちの世界では、文書化されていない知識を金で買うという考えが定着していない。
商業の知識は基本人脈で得るしかない。それもあって、力を持っている大抵の組織が世襲だ。
シュタング公爵はもともと商売で成功している家系ではないらしい。おそらくだが、一時的に最初のインパクトで上手くいっているのだろう。
そこで、市場を広げていくこれからの知識はないだろうと踏んで話題を振ってみた。
シュタング公爵の顔つきが分かった。
『掛かった。』
俺は、そこから言葉巧みに、畳みかける。
シュタング公爵だけではなく、ライバルの公爵たち、侯爵や伯爵まで接触していて、他の公爵に付くことも匂わせ、「今、契約しないと損ですよ~。」と不安を煽った。
後で裏を取られても、シュタング公爵以外のドースの貴族への情報操作は父が裏で遂行。
母に用意してもらった、商人風の衣装は贅沢な生地を使って上品に仕上げ、ハーツ商会がある程度資産があることを示唆した。目先の金欲しさに、知識という本来お家から持ち出せない情報を売るのではないと思わせるには十分だっただろう。
こうして、シュタング公爵から、ハーツ商会は「市場拡大の支援」の仕事を受注する事に成功した。
これぐらいのセールストークは、転生前の幸一の頃からいくらでも口から出てくる。
ここまでは楽勝だ。
それで、今日からシュタング公爵家でお仕事開始だ。
契約は、まずは 1か月、成果によって更新という形を取った。住み込みで構わないと言われたため、本当はラピスやりゅうと離れるのは心配だが、カトリーヌを探すには都合がいい、折中案で、忙しく遅くなる日は宿泊させてもらう。ということにした。
「では、シャルロット、今日からハーツさんにご滞在いただく。執務室と寝室の準備を頼む。」
「はい、かしこまりました。旦那様。」
シュタング公爵は侍女に命令すると、相談のための準備をすると部屋を出て行った。
「わたくし、ここの筆頭侍女をしております。 シャルロットと申します。」
『。。。』
紹介されたシャルロットをみて、リデルが狼狽える!!
『あっ、ヤバ! なんて綺麗な人なんだ! うわっ、まじ!! ドッ!! ストライク!』
もともとリデルの嗜好は幸一のときと変わらない。
歴代彼女はどちらかというと可愛い系よりきれい系が多かった。
なんだかんだで美人が好きだ。そして、意外と惚れやすい。
「はじめまして。リデル・ハーツと申します。本日より、こちらで仕事をさせていただきます。 ご負担をおかけしますが、よろしくお願いいたします。」
「こちらこそ、旦那様のためにご協力いただきありがとうございます。」
シャルロットは凛とした、どこか高貴な雰囲気の女性だ。
大人になりきらない雰囲気もありながら、もう子供とは呼べないぐらいの色気はある。年は22ぐらいだろうか? リデルより、少し上だろう。
「はじめまして、兄の手伝いをしております。ティアラと申します。」
ティアラも余所行きに言葉遣いであいさつをする。
「ティアラさま、はい、よろしくお願いいたします。 お部屋は、リデルさまと同室でよろしいでしょうか?」
「はい!!! 同室でお願い致します!!!!」
少し元気になりすぎな様子でティアラが答える。
「ええっ、、。では、同室で用意いたしますね。」
少しシャルロットは引き気味の表情になりながらも、さすが、侯爵家の筆頭メイドだけあって、滑らかなそつのない対応だ。
シャルロットは軽く会釈すると、ささっと部屋の準備をしに出て行った。
その姿を、少し、ぽーした間抜けな表情で見送る。
「兄さま、お仕事中でしてよ! トルネード! 」
「ぐふっ。 あーすまない、ティアラ、少し、考え事をしていた。」
『危ない、危ない。 潜入中だ。 やばい、油断したら、ティアラにも危険が。俺としたことが、油断した。 それにしても、なんなんだ。美人すぎるだろ! 』
リデルは頭をポリポリとかきながらも表情を引き締めた。




