第14話 アプリの王様
広告は、3円だった。
毎日、3円。
私は、広告に期待するのをやめた。
3円のために、アプリの下に、知らないゲームの広告を貼り続ける。惨めである。
私は発想を転換した。
無料で、広告で3円もらうくらいなら。
有料アプリを作ればいい。
買い切りである。
欲しい人にだけ、堂々とお金をもらう。
薄く、広く、ではない。濃く、狭く、である。
少数精鋭。プロの戦略である。
私はまた、賢くなった気がした。
私は有料アプリのアイディアを考え作成した。
もう2度作っているスムーズに作る事ができた。
問題は、値段だった。いくらにするか。
300円。——安い。私の自信作である。安売りは、価値を下げる。
500円。——強気。だが、これくらいの価値はある。ある、はずである。
私は、自分のアプリに値札を貼った。生まれて初めて、自分の作ったものに値段をつけた。
500円。
指が震えた。
私は有料で出した。そして、ランキングを見た。
どうせ、彼方だろう。王は強大である。
ASOもルールを作り、AI Agentに作ってもらい、きちんとレビューした。抜かりは無い。
そう、思っていた。
審査が終わり数日後
——ジャンル1位だった。
私は画面を二度見た。
1位。
私のアプリが、1位になっていた。ランキングの頂点。
そこで、私は考えた。
1位。ということは、だ。私はこのカテゴリで、一番、ということである。
一番、ということは。王、である。
アプリの、王。
私のことを、アプリの王様と呼んでも、差し支えはないのではないだろうか。
いや。差し支えは、ない。
むしろ、名実共に王であろう。
モンドセレクションとは違う実力だ。
私は今日、アプリの王様になった。
私は立ち上がった。
天下を取った。
スパムと言われ。★1をつけられ。広告は3円で。ユーザーは去りぬ。
その私が。
——アプリの、王様。
私はスクリーンショットを撮った。何枚も撮った。この瞬間を、永久に残す。
SNSに上げたい。
「アプリ、1位になりました」
指が動いた。
——だが、こらえた。
私は知っている。調子に乗ると、あとで刺さる。
私は学んだ男である。
私はそっと、SNSを閉じた。
そして、にやにやしながら、ふと思った。
日本の人口は1億2000万、iPhoneのユーザーは…なので100ダウンロードは堅いだろう。
100*500で1日で五万円。左団扇の生活が見えてきた。
そういえば。何本、売れたのだろう。
何処からみれるかもしれない。
私は販売数を見た。
3。
3本だった。
1位。3本。
私は見比べた。
1位。3本。
数字が合わない。
1位とは、もっとこう。何千、何万と売れているものである。なのに、3本。
私はカテゴリを見た。
「新聞」の有料カテゴリ。確かに私もこのジャンルを見た事がない。
そこに、私はいた。
その下に並ぶのは、iPhone4Sぐらいの時に作られていたアプリのようなものが並ぶ。
まさか、過疎カテゴリなるものだろうか。
その棚で3本売れれば、1位になれる。
井の中の蛙。
いや、井の中の王である。
高齢なアプリがゲートボールしている中で、若いアプリが無双して、王冠をかぶっていた。
私は念のため、計算した。
500円。3本。1500円。
そこから、Appleが3割。残り、約1000円。
私の、生涯初のアプリ売上。1000円。
私はAI Agentに、月15000円払っている。Macは、まだ分割が残っている。
1000円。
焼け石に水ですらない。焼け石に、3本である。
いや。焼け石に、2本かもしれない。
私は思い出した。
3本のうち、最初の1本。それは、私だった。
有料にした日。ちゃんと買えるか確かめたくて、自分で、自分のアプリを買った。500円、払って。
王の最初の民は、王、自身だった。
だが、私は1位だった。それは、消えない。
私は、アプリの王様という立派な衣をまとっていた。胸を張って、ランキングを練り歩いた。
見よ。私の1位を。
だが。その、きらびやかな衣の下には、3本しかなかった。しかも、1本は私だった。
裸だった。
私の売上は、裸だった。
きっと、童が言うだろう。
「王様、それ、実質2本だよ」
うるさい。わかっている。わかっているのである。
だが。今日だけは。この、アプリの王様という衣を、脱ぎたくなかった。
私はその、裸の1位を、待ち受け画面に設定した。
明日も、私は王である。
たとえ、井戸の底の。民が、ほぼ自分の。王でも。




