第12話 誰がために広告は鳴る
★は、ひとつだった。
だが、ダウンロードは増えていた。
30が50に。50が80に。
80人。
★1をつけられても。うざい、と言われても。それでも、80人が私のアプリを入れていた。
私は強くなっていた。
★1ひとつでは、もう折れない。
そして、人が増えると、人は欲を出す。私も、出した。
収益化である。
考えてみれば、私はここまで、一円も稼いでいなかった。
Macを買った。Apple Developerに99ドル払った。AI Agentに毎月15000円。
出ていく一方だった。
そろそろ、入ってきてもいい頃である。
私は調べた。
「アプリ 収益化」
すると、ある名前が出てきた。
AdMob。
Googleの広告である。
アプリに広告を貼る。ユーザーが広告を見る。私にお金が入る。
——寝ていても。
不労所得である。
出た。
魔法の言葉である。
私はまた、計算を始めた。得意の皮算用である。
広告は、一回表示されると、だいたい1円。
ユーザーが一日に5回、アプリを開く。広告も5回出る。5円。
80人で、400円。
一日、400円。
一ヶ月で、12000円。
おお。
AI Agent代が、ほぼ出る。
一年で、14万円。
私は震えた。
不労所得、14万円。
しかも、ユーザーはこれから増える。80人が800人に。800人が8000人に。
そうなれば、私はもう、働かなくていい。広告が働く。
私は南の島にいる。ハンモックで揺れている。
スマホに通知が来る。
「広告収益が、入金されました」
これである。
これが、やりたかったのである。
私はAI Agentに頼んだ。
「AdMobの広告を、入れて」
数日かかった。
SDKだの、IDだの、また横文字の嵐だった。途中、アプリが何度か落ちた。
だが、今の私にはgitがある。落ちても、戻せる。
私はもう、何も恐れない。
ついに、広告が表示された。
私のアプリの下に。知らないゲームの広告が出た。
美しい。
世界で一番、美しい広告だった。なぜなら、それは私にお金を生む広告だからである。
私はリリースした。そして、待った。
AdMobの管理画面を開いた。
収益。
0円。
まだ、0。
当然である。
私は知っている。
この、待つ時間を。
ダウンロードのときも。レビューのときも。私はずっと、0を見つめてきた。
だが、今回は違う。今回は、お金である。
0が1円にでもなれば。それは、私が生まれて初めて、自分の作ったもので稼いだお金である。
私は何度も更新した。
0。
0。
そして、翌日。
数字が動いた。
——3円。
3円である。
一日の広告収益。3円。
私は画面を見つめた。
3円。
14万円は、どこへ行ったのか。400円は。ハンモックは。南の島は。
3円だった。
自販機の水も買えない。おつり、ですらない。
エチオピアなら生活出来るだろうか。
私は、計算が合わない理由を考えた。
広告は、表示されてお金になる。つまり、表示が少ない。つまり。
——見ている人が、いない。
私はAI Agentに聞いた。すがる思いだった。
「どうすれば、広告収益が、増えますか」
AI Agentは即座に答えた。
「表示回数を、増やしましょう。つまり、ユーザーを、増やしましょう」
正論である。
また、正論である。
広告で稼ぐには、広告を見る人がいる。
私のアプリには、80人。正確には、毎日開く人はもっと少ない。数人。
その数人のアプリの下に、私は広告を貼った。そして、不労所得を夢見た。南の島を夢見た。
その広告を。
——誰が、見るんですか。
誰も見ていなかった。
正確には。たぶん、私が一番、見ていた。
動作確認で。自分のアプリの、自分の広告を。何度も、何度も。
一日、3円。
そのうちのいくらかは、たぶん、私が見て生んだ3円だった。




