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どこかの世界線  作者: マメ


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7線~記憶のプイスト(公園)~《アーティファクト》


退室を待って再開される会話。


「私たちも同業、あの突然の倒産はおかしいとみなが疑問に」


湯呑で手を温める磯中。


「それは私たちも同じでした」


「気を悪くしないで欲しいのですが、御社との関りが......と勘ぐるものも中には」


磯中の気を楽にしてやりたい一心で言葉を遮る真樹夫。


「その件ですが、少なくとも会社が関与していた痕跡は有りませんでした」


心なしか磯中の眉尻が下がった。


「わが社の資金流通から帳簿となるデータ、社内のものは全て調べ尽くしました」


「山崎さんにはそんなお力が?」


未成熟な青年のように口を開け真樹夫を見つめる。


「いいえ私には、北山は権力より行動力の男なので各部署にコネがありまして」


今度は北山にならい、『しー』のポーズを取る真樹夫。



そんな真樹夫をやはり見ていない磯中は、


(本当にそんなことが?)


と思い耽ったところで、


「ではなぜあの前山さんはうちのものにしつこく......」


言い難そうに語尾を濁した。


「その件も北山が責任を持って聴取いたします」


「前山さんとあの方とのことはみんな知っていますのでどうしても」


(まあ社長である奥さんが怒って流した話なんだけどね)


「以後はご安心ください。私と北山がタッグでお相手をさせていただきますので」


玄関まで見送る磯中は、


「本来ならこちらからお伺いしないといけない中、本当にありがとうございました」


「いいえ、こちらからお願いしといて迷惑をおかけしまして」


それではとバス停に歩き出す真樹夫だった。



会社に報告を入れる、


「あ、課長お疲れさまです」


「おお、どんなだった?」


「はぁ意外と平気でしたよ?娘はやらんと早くも断られましたが」


「はは、そんなの日常茶飯事だろお前にとって」


「ぐさっ、今の聞こえました?深く傷つきましたよ傷病で早退OKっすよね?」


「分かったから早く報告を済ませろ」


「了解しました」


繁華街方面へと向きを変える真樹夫は報告をするのだった。



電話を切り視線へと意識が切替った時、


「なんでだよ?」


目の前には公園のベンチで俯く瑠美がいるのだった。


歩を止め、ネクタイを引っ張るように掴む手に強い痛みが......



——だがそれさえ打ち消す



心の傷が大きく脈打つのだった——





オフィスの時計はまだ4時にも満たなかった。


「ちょっと出かけて来ます。急用以外は係長お願いします」


と部下にも低姿勢な北山を見送ったところで、


「お前に出来ることは俺にも出来るだろっ」


とクリアファイルをデスクに叩きつける係長の数田。


PCのディスプレイに身を隠しひそひそ話す女子社員。


「時々係長ってヒステリーですよね?」


「あ~佳苗は知らないかぁ、課長はね大学サークルからの後輩なんだってよ」


「えーっ!?」


驚き、大声とともに立ち上がる佳苗。


「おい、またアイツと比較しただろ」


じとーとした目の数田に声を失くす佳苗。


見かねた三澄が、


「どうしてですか、課長は係長のことを今も......」


「あー煩いっ、お前は今関係ないだろ?」


席を立ち、ホールへと歩き出す数田。


「情けを掛けられてもしがみ付かなきゃいけない虚しさ......分かるか?」


「そんなの家庭があるから——」


理解した口を利く三澄に背を向けたまま手を振る数田だった。



路地を曲がったところで佐藤に電話する北山は後ろを確認した。


「おお、どうだった?」


「はい、やはり崎口絡みで間違いないですね?」


「そうか、崎口に対してまだ未練があるみたいだな?」


「おっと、セルでも遂に......」


「バカ野郎、今日だって菫に、大変なんだからな!お前の姉貴さまはよ」


「ははは、アイツを手懐けられるのはたーくんだけだよ」


「ふっざけんな離婚したらキミ、お前んとこに行くんだぞ?」


「あっそれはダメ絶対、うちの奴マジ無理みたいで『キミっあの人とどっち取るかはっきりしてよね』って先週また言われたばっかだよ」


「ははーだったらもっと俺を敬え」


「あなたは依子さん亡き跡を継ぐボスでしょ、そんな小さなこと」


「キミはいいだろ真樹夫相手に遊んで......」


「あっセル、申し訳ありませんでした。ひとつ言い忘れたことが」


「なんだ?」


「真樹夫は私が社内を隈なく調べたことを磯中氏に伝えてしまったそうで」


「そうか......いよいよアイツもか~」


電話の向こうで夕焼け雲を見上げる佐藤の顔色まで容易に浮かぶ北山だった。


「しかし私を一員とは知らない訳ですし」


「だが——しかしだろ」


やはり言うべきではなかったと後悔する北山だった。


「お、そろそろ着くわ、この件が終わったら飲みに行こうな」


「ええ、もちろん......」


「菫抜きでな?」


はははー、2人の時にしか出来ない顔とはどこにでもあるものだった。



——とかく彼らの世界には




そして公園にさしかかる佐藤は思わず立ち止まった。


「アイツはキミの思いも踏みにじるのか」


真樹夫の肩を容易に掴み瑠美の視界に入る不安を取り除いた。


「お前いいかげ......」


真樹夫の顔に異変を感じる佐藤。


「違うんだ、1人で飲みに行こうとしたらあそこで」


いつもより光っている真樹夫の目から視線を逸らす佐藤。


「どうして瑠美さんをあんな風に利用したんだよ?」


光は頬へとあふれ出す。


「千田さんが死んだ以上もう猶予はない、人死には......」


「心は——使い捨てられる人は?」


組織を興した時の幼少の真樹夫の背の高さを、木の幹に思い描く佐藤だった。

黙って振り向く佐藤は、


「分かったお前は帰れ。彼女のことはこれ以上悪くはしない。お前のスニーキングでは俺に通用しない、いいな」


凄味を優しさで包み込んだその言葉に素直に引き下がる真樹夫。


公園に入っていく佐藤は2人の監視を真樹夫につけた。


これには崎口側からの接触を断つ狙いもあった。



ベンチにひっそりと並ぶ佐藤は何も言わず瑠美の肩を温め......時の力を利用した。


子供たちの声が薄れてゆき、オレンジの空もいつしかライトアップへとその座を明け渡していった。


「瑠美には感謝している。君のおかげで千田さんのような人も出ずに」


「ねえ千田さんが親友って噓でしょ?」


言葉に詰まる佐藤の顔を覗き込む瑠美。



(なんだって!?)


焦りながら胸のスマホに手をやり、もう一度バイブ信号を確認する佐藤。


(あの2人を......)


「正直に言うと死んだ姉さんの元旦那さんなんだ」


空いてしまった間を埋めるために、衝撃の事実を伝えた。


「真樹夫のお父さん?」


ゆっくりと瑠美が聞き返した。


「ああ、アイツが生まれてすぐに別れちゃってね」


「だから千田さんは......」


時折覗かせていた優しい目を思い浮かべる瑠美。


「ああ、姉さん意地でも会わせなくてね。それでも木曽田さんに頼んで真樹夫をジヒルに」


「会長に?いつか仕事でなら......と思ったのかしらね?優しいお母さま」


会話に耳を貸しながらも辺りを警戒する佐藤。



「なんなんだよ——お前ら俺のなんなんだっ」


その声は佐藤には聞こえなかった。


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