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どこかの世界線  作者: マメ


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16/16

16話〜残し残されるもの〜《山荘へ》


「いつもありがとうね」


「いいえ、俺の絵をこんなに買ってくれるのはこちらだけなんで……また欲しい絵が決まったらおっしゃってください」


「そうかい、なら……長野にある山荘を描いて来てもらえるかね?」


「山荘!?ですか」


「ええ、ちゃんと旅費やその他、必要な分はこちらで受け持つからお願いできないかね?」


「分かりました。和子さんのご要望なら喜んで」


「はは、若い人は素直で助かるねぇ」


「嫌だなぁ和子さん、俺ももう40が聞こえる年だよ」


「私には孫のようなもんだろ?」


そう言って笑い合う真樹夫と和子だった。




(さあ〜て、長野に行く前にもう1枚仕上げておくかな)


真樹夫は駅の改札を抜け自宅へと向かう途中、


「あ!?飯買ってかないとないや」


と、気づきスーパーへと足を向けるのだった。


「今日は何を食べようかなぁ?ウナギかあ?でもご飯炊くの面倒だし……」


結局、惣菜コーナーで物色するのだった。


「コレとパン?いやこの弁当うまそうだな」


大きな独り言が惣菜コーナーをぐるぐると2周した時、


「山崎さん」


真樹夫の耳に心地よい呼び声が聞こえた。


「あぁ、瑠美ちゃん!?お疲れ様」


「今日はお弁当ですか?もう少しで割引ですよ」


「スーパーの人がそんなこと言っていいのかい?」


「え〜!?教えてあげたのにぃ」


「ははは、なら瑠美ちゃんが割引になる頃合いを教えてもらおうかなあ?」


「あ!?人を売れ残りみたいに言って!」


手に割引シールを持ちながら叩くフリをする瑠美の顔は笑っていた。


「あ〜ぁ、それを瑠美ちゃんに貼ればいいのかぁ?」


「いいですよぉ〜、どうせ私は独りですから〜」


と、言いつつ真樹夫が手にした弁当にシールを貼る瑠美だった。


「なあんだ、寂しいなら言ってくれればいいのに」


「山崎さん……おじさん」


「こらっ、瑠美っ!」


「きゃっ!?ごめんなさい」


「前山!お客さんと遊ぶなよぉ」


「あ!?数田さん、すみません」


瑠美は顔を赤らめ頭を下げた。


「もお、山……おじさんのせいで怒られたぁ」


「言い直す必要あった?」


「ははは」


「また怒られちゃうから行くね」


「は〜い」


真樹夫の後ろ姿を見送る瑠美は、


「やっぱお母さんの同級生にしては若いよね?」


と、呟くのだった。




家に着いた真樹夫は食事の前に描きかけの絵に向かった。


「さ〜て、遠田さんからの依頼を仕上げないとな」


そして、時計の針が0時を過ぎたころ、


「はあ〜あ、ココが進まないな……」


座ったまま背伸びをする真樹夫は、絵を眺めながら疑問を持ち始めた。


「遠田さん、なんでこんなおかしな絵を……」


地面に屈む女に、岩に立つ男……


「どうしてもこの男が描けないなぁ、うまくいかない」


時計も3時を周り、ようやくスーパーの弁当をレンジに放り込むのだった。




「痛たたた」


アトリエに置いたベンチで目覚める真樹夫。


ソファを置くとそこで寝てしまうからと、硬めのベンチにしたのだが……


意味はなかった。



「もう11時かぁ!?」


お腹をさすり身支度を始めた。


「何を食べに行こうかな?」


ファミレス、とんかつ屋、牛丼……


「パスタはパスた……アホくさっ」


ようやく行き着いたのは、


「ま、ココでいっか」


一年中、冷気がこもった店内。


やはり惣菜だな。


創作の途中だと自炊する気になれない真樹夫だった。


「う〜ん、昨日のと被っちゃうからコレはパスた?」


(まだ言ってるよ俺)


「はい、はい、はい、出来立てを陳列しますからどいたどいたぁ」


「コラっ、前山さん!お客さんに……て山崎さんか!?」


「山崎さんか!?て俺も客なんですけど〜」


「ははは、寒い寒い山崎さんには出来立てホカホカのお弁当がいいんじゃないですか?」


「数田さんと俺、そんなに面識ないよね?」


「え!?あ〜いや〜いつも前山さんから話を聞いているからなんか親近感が……」


「瑠美ちゃん、何話してんの?」


「いやぁ昔、私のお母さんにフラれた話とか、たまに酔って電柱と寝ているとかかなぁ?」


「おいっ!?俺のエピソードには著作権があるんだぞ!」笑


「はは、そういえば山崎さんは画家さんだから著作権には煩いんですね?」


「え!?あ〜そういうわけでは……」


「はいっ、陳列完了!戻りましょう。ちなみに〜黒酢酢豚がサービス品となっておりま〜すっ」


数田の背後から両肩に手を置き、小走りにバックヤードに戻っていく瑠美。


それを眺めつつサービス品を手に取る真樹夫だった。


そんな真樹夫を、粉物の棚の陰から見つめる女がいるのだった。


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