表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どこかの世界線  作者: マメ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/13

12線~記憶のプイスト(公園)~ 《インスパイア》


「どうしたんですか?係ちょ......瑠美さんを悲しませたヤツのことですか」


椅子に掛ける崎口、運ばれるドリンク。


「目の前にも1人ぃ~」


わざとチャめる瑠美に、


「ウチのとは大学からの付き合いですよ」


と、防波堤を築く崎口。


「大学かぁ......たーくんて彼がいたんだけど真樹夫とは大違いだったなぁ?」


「やはり真樹夫ですか?」


「え、あ、いや......」


「課長も心配しておられました」


淡々と話す崎口はただ胸のつかえを取ってやりたかった。


「やっぱりかぁ......今日の計らいも2人が」


黙ってグラスを傾ける崎口へ、


「あなたはいつも無関係な顔して......ホントはね、好みじゃなかったんだけどあんなヤツ」


「分かります」


なるべく小さな声で言った。


「飲み過ぎてホテルに行ってしまって、そしたら意識しちゃって......」


「真樹夫とそんなことが?」


と、グラスを置き瑠美を見返す崎口。


「真樹夫がスゴイこと言ってたとこの間、だから知ってると思って」


「それは、対部長カードなるものを課長に......」


「何それ?いくつになっても子供ね......じゃあ真樹夫からは何も聞いてないのね?」


「はあ、むしろアイツは知らないのでは?」


「知らないって本人なのに......覚えてないのかぁ?」


「正直、瑠美さんのような美人とそんなことすれば自慢するかと?アイツなら」


酔っていても直に言われると恥ずかしがる瑠美だった。



駅で別のホームに分かれる2人。


その背を見送る崎口は、瑠美の幸せな姿を無理にでも思い描くのだった。




午前中は2人の手柄の話で持ちきりだったが、午後は穏やかに時間が過ぎていった。


そんな中2人はトイレ前で鉢合わせるのだった。


「あっ真樹夫ちょっといい?」


「はい、なんですか?瑠美さん」


「あ、あなたこの......」


「まっきおー、お待たせぇ......」


「あ、瑠美さん!?」


「カレン......」


見つめ合う2人、引けない瑠美。


「あっ!?係長、課長が探してましたよ」


「ありがとう崎口君」


そういいオフィスに戻っていく瑠美。


「真樹夫ちょっと」


言いかける崎口に、


「崎口いいところにいた、ちょっと来てくれ」


と、部長室に連れていかれるのだった。



何も聞けないまま、少しの日々が流れていった。


「うわぁ~同じお弁当ぉ」


「ウソ〜!?真樹夫君が作ってんの?」


戯れる女子社員たち。


「なんでだよっ!」


プチきれの三澄。


「だってカレン料理できないじゃん?」


「それより決まった?どっちどっち?」


「えーカレンちに住むんだぁ!?」


とうとうその言葉に同時に瑠美を見る数田と崎口だった。


引き出しから煙草を取り、黙って立ち上がる瑠美は部屋を後にした。


後を追おうとして数田を見る崎口に、瞼を閉じ制止するのだった。



最上階のフレバ—ラウンジに向かう瑠美は1人、エレベーターの壁に頭を押し付けた。


ドアを開け中に入ると、押すのはなぜかブラックのボタン。



——孤独なラウンジ



椅子に座らずカウンターに体を預け、タバコに火をつけた。


入りたてのコーヒーの、湯気に混ざる青い香りが瑠美の寂愁を引き出すのだった。


どうしていつも遅いのかしら——


「私は......バカね、、、だったら!?」



——あなたを




仕事が終わり駅のホームに立つ2人。


「うーわぁ⁉ごった返しだねえ?」


「じゃあカレンちゃん、どっか寄っていく?」


「えぇ~帰ろうよぉ、せっかく前にいるんだし」


と、気づけば線路際まで押しやられる2人。


電車の到来を告げるアナウンス、人ごみを縫う人影。


ホームに辿りついた崎口が——


近づく吹鳴に消される声。



——ダメだっ瑠美さん 



聞こえたか分からないその声に振り向く真樹夫、


「あ!?」


抱きつく瑠美。



ぷあっーーー!!



つんざく警笛に消える瑠美と真樹夫。





真樹夫の頭の中にまで強く白い光が入り込んだ時——




世界は......


終わりを告げた——





            ◆◆◆




「うわ~っ!」


現への覚醒時に珍しく声を上げる真樹夫。


現場検証と聴取の終わったオフィスには、数田と佳苗はいなかった。


「課長は?」


三澄に聞く真樹夫。


「警察」


三澄でさえいまだ衝撃が薄れないと見え、椅子に座ったまま放心していた。


さっきの白い光を経験した真樹夫にとって、今の状態は比較的緩やかなものに思えた。


数田の席に歩き出す真樹夫。


PCも引き出しの中身も失くなっていた。


数田の最後をかたどった線を見たとき真樹夫は......



——泣きくずれた





北山からの連絡で事件を知った佐藤は、警視正に連絡を取るのだった。


「すみません奥永さん」


「ああ、例のアレか?まさかとは思ったがまた君とは?」


「いいえぇ、違いますよ」


「そろそろ一度逮捕しとかんとな......飲みにも行ってくれん」


「そんな暇ないくせに?」


「で、今回も自殺か?」


「ありがとうございます」


「じゃあ嗅ぎつけられる前に手を打たんとな」


続けて電話を掛ける佐藤。


「ああキミ、その子もすぐに返されるはずだ。自殺にしてもらった」


「助かります。しかし強力なコネですね?」


「奥永さん姉さんに惚れてたし、親父さんの頃からだから今では他にも協力者はいるよ」


「その分汚い仕事も押し付けられると......」


「分かったゴメン今度は俺もやるよ」


「あ、出てきた。彼女を送っていきますので」


電話を切った佐藤は溜息をつき、


「さーて、ジュタブル・クイーンに会ってきますか」


と、瑠美に接触するのだった。



重要参考人の網を掻い潜った瑠美はうす暗い路地を歩くのだった。


恐怖と罪悪に震える手。


崎口への恐怖から崎口本人にも佐藤にも連絡することも出来ず彷徨い続けた。


そこへ一筋の光明が差すのだった。


鳴るスマホに佐藤の文字を認め、安堵のため息をつくのだった。




漏洩リスクの低い個室レストランを選ぶ佐藤。


「今回は大変なことが起きたね、自殺だって?」


「え!?」


と、佐藤を凝視する瑠美にスマホを振るのだった。


「ああっ!?」


ネットニュースを見て思わず声を上げる瑠美。


「正直に言うこれは君を守るためにやったんじゃない、自分のために誰かを陥れる——俺の一番嫌いなことだ!」


「わ、私は......ただ」


「言われてやったから仕方ないか?」


「違う、ただのしびれ薬だって言われて。でも殺したのは私になるの?」


「それは分からない。し......そこじゃあない。容疑に掛けられた人は、死を目の当たりにした人は、遺族はどうなる?」


言葉をなくした瑠美は自愛に溺れた日々を思い起こし恥じるのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ