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どこかの世界線  作者: マメ


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10/13

10線~記憶のプイスト(公園)~ 《もう1つのプイスト》


            ◆◆◆




白く冷たい雲の下で目覚める真樹夫。


見回すとそこは大きな岩のある公園のベンチだった。


(ああ瑠美さんと飲んでたんだった)


「今日は土曜のはずだよなぁ?」



——なんで子供たちいないんだろ



スマホをタップする指が......つった。


「何だこの着信の数は!?」


ホームの日付を見ると、


「やっべっ金曜じゃねえかよっ」


全力で走り出す真樹夫は公園の出口で、


(今更じゃね?)


と、開き直るのだった。



(腹減ったしまずは牛丼っしょ?)


ウィィィンと開くドアに、襟首を掴む強い腕。


歩道の反対側まで引きずられていった真樹夫。


「なにやってんだっ真樹夫?」


突き刺すようなその声は、


「崎口主任......と、る......前山係長」


ガードパイプに腰掛け2人を見上げる真樹夫に、背を向け人通りを眺める瑠美。


「何時だ、何やってんだ、ここどこだ?」


「会社にはもう電話してあるんで。それでは」


立ち去ろうとする真樹夫に、


「待ぁて、誰が出た、何と言った?スマホを確認してやろうか?」


スマホを車道に投げようとする真樹夫を止め、


「馬鹿か、ホントに。コイツを会社まで連行して来てもいいですか?」


「そうね、ほっとくと午前中から飲みに行ってしまうかもね?」


「おぉう、その手が?」


「だから馬鹿かお前はっ!」


真樹夫の耳を引っ張る崎口に耳を塞ぐ真樹夫だった。


「すみませんが先に行っててください」


「慌てなくていいからね?」


真樹夫のベルトをしっかりと握る崎口だった。


見送りながら手を合わせる瑠美。


(ごめん崎口君、昨日飲ませたの私なの......で真樹夫——言うなよっ!)




電車の揺れに合わせて手を振り解こうとするが、その度に余裕の笑みを浮かべる崎口。


「ソウさんもう良くないすか?電車の中だし」


素でそれに気づいた崎口は手を放し、


「お前、会社をクビになるつもりなのか?」


「いやそんなじゃないけど」


「だったらなんでいつもこんなことばかり、課長の気持ちも考えて差し上げろ」


「へーごもっともです」


「貴様っ、この間なんて『もお言い訳の理由ぜーんぶ使い果たした。もお無理』て嘆いていたぞ」


「対部長カードのストック切れかぁやばいな......新しいの課長に」


「ふざけてんのかっ」


車内の注目を集め、


「すみません、ご迷惑を」


と、頭を下げる崎口だった。




「おはようござ......」


「昼回っている、反省のフリだけでもしろ」


叱りながらも真樹夫をかわいがるのを隠せない崎口。


「ぞうだよ真樹夫、今のうちに練習しとけよ」


課長とは思えない数田の言葉とノリ。


「はあ、あっそうだ新しい部長カードいります?」


「マジか、出来たかついに?」


(ホントだったんだ?)



こっそりと崎口の横に並ぶ部長。


「ああ、部長お疲れ様です。私はちょっと外出がありますので」


「そうか頼んだぞ」


「はい、失礼します」


小走りにエレベーターに乗り込む崎口。



「で、私の新しいカードがあるって?」


「ポテチに入ってたりして」


「え!?マジで嘘でしょ売っての?」


「数田ぁ、お前まで乗ってどうすんだ?」


「あいや、すみません部長つい」


「でもあったら課長も買っちゃいますよね?」


「買う買う」


それを聞いて、にやけ出す部長に活路を見出す真樹夫。


「部長似合うんじゃないですか?後ろ向いて構えてくださいよ」


「なんだ、こうか?」


「ああ、そうっすね!それで背中にKITAYAMAて入ってたら完璧っすよ。もう一回」


「おっ、こうか?」


「今だっ課長!」


「逃げろー」


走り出す数田と真樹夫に、振り向きデスクに膝をぶつける北山。


「てめーらコンプラなんてなかったらぶっ飛ばしてんからなっ」


負け犬の遠吠えが無人のオフィスに反響した。




「今後ともジヒルをよろしくお願いします」


勝手に回るガラスのドアのタイミングを見ながら退出する瑠美。


振り向き、


「いつからこんなに運動音痴になったのかしら?」


と、回り続けるドアを見つめた。


(ま、運動の力が試されるほどのものでもないが)


ひとつの自問自答を終え、


「でも、少し遅いわね?」


と、次の疑問へと移っていくのだった。



時計を見て、バスを調べるも来そうにない。


カフェに入り席から位置情報を送り終えると、昨日の真樹夫とのことが頭に浮かぶのだった。


そのままぼーっと眺め続けたガラスに姿を残して走り去るバス。


あれねキット——


(あの人は確か......あの顔で甘いものが)



「遅くなりました」


「はいキャラメルね?」


「ありがとうございます」


「真樹夫は何か言ってなかった?」


あり過ぎて困ると言いたげな崎口。


瑠美は身を乗り出し、


「何言ってた?」


「え、まぁ結構凄いことを」


(噓でしょまさか?)


「それより残りの......」


「それよりっ?ああそうね向かいましょっか」


(男の人は興味ないか)


独りよがりで一日を終える瑠美だった。



新しい朝は道のわきで横たえる草にも光を分け与えた。


「おっはよー」


真樹夫の背後から声を掛けるのは、


「三澄さん?」


真樹夫の先輩社員だった。


「今日は早いね関心関心」


晴れやかな朝の景色によく合う笑顔。


「さすがに今日は、早く行くか?休むか?ですからね」


「選択肢がすごいね、さすが真樹夫」


「三澄さんはいつもこのくらいに?」


「私はやることが多いからね?」


「メイクしてるし制服なんてないし......なんだろ」


「昨日の未処理分とか?」


人差し指を真樹夫に向ける三澄。


「あー!?仕事はその日のうちにですよ?これも三澄さんから教わったやつっすね」


「アンタ今ヤバいと思って付け加えたでしょ?」


「いや別にぃ、後輩の尻拭いも先輩の役目」


「お前ふざけんなっ、一緒にやるんだ」


掴まれる手を振りほどこうとしながら、


「いやだ今から行くとこがあるんだ」


「どこに?」


心底不思議そうな三澄に、


「立ち食いそば」


胸を張りながら言う真樹夫。


「ふざけんなよテメー」


「そんな言葉ダメでしょ?カレンちゃん」


後ろを振り向く三澄、


「一瞬、誰に言われたか分かんなかっただろ?」


「ははじゃあ今後はカレンちゃんね?」


「お、おぉ!?じゃあそばおごりな?」


「えー金出してよ」


「行ってみたかったんだよ、あーゆーとこに」


「カレンちゃんなら1人で行けるって、違和感ないって」


「どーゆー意味だっ」


ははっと走り逃げ出す真樹夫だった。


楽しそうにあとを追う三澄を羨望の眼差しで見つめる女がいた。



温まった体でエレベーターを待つ2人。


「思ったより美味しいね?」


「いやあ旨いっすよ。つーか三澄さん焼き鳥とかも行かない系?」


「あ、三澄に戻るのね......」


「え、社内では恥ずかしいですよね?」


「まさか私の名前が......」


「いや、ああ!?そうしときますか?」


「おまっ、28年使ってきた私の名前を」


エレベーターに乗り込み真樹夫の首を絞め揺らす三澄。


「コラ、止まるだろ?」


その声に振り向く2人は、


「出た!?」


とハモリを効かす。


「お前ら朝から私を......」


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