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どこかの世界線  作者: マメ


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9/9

9線~記憶のプイスト(公園)~ 《破壊》


タバコを消し強く締め付ける力に喜びを感じる瑠美。


漏れる声に手ごたえを感じる崎口は、そっと唇を合わせそして、


「なあこのままでは俺はあいつらに消されるかもしれん」


胸から離れその顔を凝視した。


「俺1人で立ち向かえる組織じゃないんだ」


「組織......」


あてずっぽうに言ったのに——


「じゃあ本当に?」


じゃあの意味が分からない崎口は一か八かで、


「ああ、そうなんだ。そして助かるには」


そこで黙る崎口の手法に捕まる仕組みの瑠美。


「ねぇ言って、あなたを失いたくないのは私も同じ」


また抱きしめ空気を吸い込む崎口。


音のない笑いがラウンジに響き渡るのだった。



ドアを解錠しようとした時、


「これを頼む」


と、ラテックスの手袋とジッパー付きに入ったハンカチを渡して来たのだった。


「まさか?」


「いや君こそまさかさ」


軽い笑いでやり過ごそうと崎口。


「ただのしびれ薬さ。脅せば」


凝視をやめない瑠美にしびれを切らしそうになる崎口だった。



別々のエレベーターでオフィスに戻る2人。


夕刻前の給湯室に立ち寄り無人を確認する瑠美がいた。




みんながそれぞれの翌朝を迎えることが出来た最後の日。


「真樹夫、今日は会社に行くからな早くしろ」


「分かりましたよ課長。でもいいんすか?」


「ああ、たーくんの指示だ、安心しろ」


「安心て......信じていいのかな」


ゴンっと頭をぶつける北山、


「やるならあそこでやってたさ」


耳に小さく囁く北山だった。



北山の出勤時間の電車はまだすいていた。


しかしやることといえば、やはり吊り下がりの広告を読むでもなく、ぼーっと見比べることだった。


そんな真樹夫に、


「今日仕事終わりにお前んちに寄るからな」


と顔を向けることなく言う北山。


「はぁ!?なんでですか?」


「当分お前はウチに同居だ」


「ええ、そんなぁ......」


「じゃあ俺がお前んちな?」


「それだけはマジかんべん」


「なら従え、お前の身の安全の確保でもある」


「千田社長が俺のおやじだったからって俺まで狙われるとは......」


真樹夫の口からその名が出たことに驚き、表情を窺った。


「相手はアイツだ、何をするか分からん、社内でも気をつけろ、前山にもな」


首を傾け協調するのだった。


「瑠美さんがそんなぁ」


シートから立ち上がりそうになる真樹夫の肩を引き下げ、


「俺たちよりあの女を信用するならそうしろ」


「あの女ってぇ......」


突然睨みつけ、


「だがなお前のせいで俺の家族に何かあったらその時は——」


ネクタイを掴み寄せるのだった。


その気迫に目を逸らす真樹夫は、


「分かりました、でもだったら」


「安心しろお前の生活費はたんまりもらってある」


今度はにやけて見せる北山に、


「結局そこかよ?」


と背を向ける真樹夫だった。


「でも課長ってそんなにたーくんと仲いいんですか?」


「多分お前よりはな?」


「菫さんはたーくんの奥さんでよく家に遊びに......」


北山の顔をまじまじと見る真樹夫。


そこにわざと顔を近づける北山。


「あ”ぁぁっ!?」


今度こそ立ち上がる真樹夫。


「煩えなぁ、人様に迷惑だろ」


「課長ってあの公彦さん〜?嘘でしょ、え、え、そんな」


「黙れよお前は」


「だって、え~」


「いつになったら気づくのかと思ってたが俺からばらす羽目になるとはな」


「分かんないですよあんな怖い人が今の課長だなんて?」


「だから依子さん、お前のお袋さんはココを作ってくれたんだろ」


「ええあの時怖かったすもん、菫さんは綺麗で優しかったけど」


「バカかお前は?アイツのあの字も知らねんだよ」


「ふ~ん」


と、今度は窓から景色を見るのだった。



言われずと北山のタイムカードも押す真樹夫。


「ああ前山」


不意に呼ばれびくっとなり振り向く瑠美。


「はい」


「当分の間、外出は1人で行ってもらうことになる」


真樹夫を見ながら、


「分かりました」


素直な瑠美だった。


「どうぞ」


と、佳苗が北山にお茶を置く。


「ありがとう」


明るいお礼の言葉と湯呑を口へと運ぶ。


湯呑を横目に追う瑠美の視線、その目は細まる。


湯呑を置き、


「はあ~うまいなぁ」


満面の笑みを浮かべる。


それに振り返り、


「ありがとうございます」


と上機嫌になる佳苗。


そこへ、


「ほぉら脇見していないで置かんか?」


と急かす係長の数田が。


「すみません」


顔を赤らめ慌てる佳苗。


「どうぞ」


そして振り向き歩き出したところへ、


「待て違うぞ」


不機嫌な数田が呼び止める。


「あっ」


「それは山崎主任のよ」


三澄の指摘に違いを思い出す佳苗。


瑠美の背後で音声だけがことを運び、それにもどかしさを感じた。


「まあまあ、係長は熱いのは苦手なんすから」


場を取り繕う北山に、


「んあ?まあそうだな」


と、やや堪え気味に流れを終わらす数田だった。




(係長は先輩だったてことは......)


昔の姿を勝手に想像する真樹夫。


「どうぞ、主任」


「ありがとう」


笑顔で返す真樹夫の隣の席の三澄が、


「真樹夫のことなんかを主任と呼んでくれるのは佳苗だけなんだから心して飲むように」


揶揄う言葉に、真樹夫のはす向かいの瑠美の後ろでまたしても顔を赤くする佳苗がいた。


「感謝はしてるけど三澄さん......煩いっ」


「ああ、後輩のくせに生意気ぃ~このぉ」


軽く肩パンする三澄に、


「でも上司ですからねぇ」


首を大きく曲げ小馬鹿にする真樹夫。


「でたぁ恩をあだで返すやつ」


ひときわ大きな声で話す三澄だが、ここはオフィスである。


「お前らは朝からホントに......んん?真樹夫お前はそんなだからモテないんじゃないのか?」


真顔で見つめる北山。


お茶を吹き出しそうになる真樹夫に追い打ちが——


より一層大きな声で、


「その通りでーーすっ!」


両手を広げ三澄は胸まで逸らすのだった。


それに誘われ大きな笑いが起きた時、静かに床に崩れるものがいた。



空調の音だけが支配する静寂の世界に早変わりしたオフィス。


その支配を破り誰かが驚きの声を上げた。


「あ”あ”~!?」


続けて鳴る耳を破壊するような女たちの悲鳴。


話に気を取られ背を向けていた北山は振り向き——


「マキさ......」


と叫び駆け寄るのだった。




——救急は帰り、警察がやって来た



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