有機結晶
情報ってヤツは不思議なものだ。
知りたくてたまらない事は、いくら調べても辿りつけない。
それなのに、知りたくない事ほど、押し売りみたいに情報が集まる。
オレはオンナをテイムする方法を考えていた。
最強生物にも弱点はあるはずだと。
そして、いつものように夜間探索で廃墟を訪れた。そこは元民家らしい外観だったが、まるで断面図のように半壊していた。
色々と物色しながら二階へ上がると、寝室だった部屋に入る。部屋は廃墟らしく荒れ果てていたが、壊れたベッドの上で2つのアイテムを拾った。
『白い有機結晶』×2
そんなアイテム取得ログを見て、嫌でも察してしまう。
このアイテムの原材料が人間だということを。
そしてこの世界で大量に死んでるはずの人間が、なぜ人骨を残してないのかも。
そもそも、初めてこのアイテムを取得した時から、漠然と違和感を感じていた。
その理由は有機結晶という名称だ。
有機物とは生体由来の炭素を含む物質を意味しており、結晶とは規則正しい分子や原子の物質を指している。
つまるところ、ダイヤは炭素でも無機物であり、この『白い有機結晶』は生体由来だということだ。
はぁ……。
少しだけ自分が嫌になる。
叔父さんが用意したオープニングムービーが無ければ、こんな風には結びつけなかった。
そう思う自分が嫌だ。
なぜなら、叔父さんは悪くない。
むしろ世界観を練った結果であり、しかも『白い有機結晶』のフレーバーテキストに、そんな内容は記載してない。
ってことは、オレが勝手に考察してるだけだ。
この後どうするかは分からない。
でも、今は心を落ち着けるべきだろう。
オレは探索をやめてホームに戻った。
それでも、まだ心がモヤモヤする。
こういう時は何も考えず、単調な作業に没頭すべきだ。そう考えたオレは、『寝袋』でセーブしながら、時刻を朝にした。
そして、『石の斧』を持って森へ行く。
あとは、ここでひたすら『木材』を集めるだけだ。
無心で木に『石の斧』を当てると、澄み渡る音が聞こえる。
それをBGMにしながら『木材』を集め続けた。とはいえ、『木材』は相当重量がある。オレの所持限界に簡単に達した。
最初はそれを持って帰ろうかと思ったが、よくよく考えてみればレベリングの為の『木材』だ。
別に拠点に持って帰る必要すらないことに気づいた。
で、その場にチェストを設置し、『木材』を入れていく。
そんな単調な作業をリアルで10分ほどしてたら、オレは榴弾で吹っ飛ばされて死んだ。
いやいやいやいやいや。
まてまて、意味が分からない。
なに、うるさかったの?
それにしても抗議の仕方ってあるよね。
こっちがしんみりと感傷に浸ってる時に、榴弾で吹っ飛ばすとか、マジであり得ないんですけど。
ヤバっ……
やっぱり、あいつらオンナたちは分からせなければならない。
これは世界の変態として、為さねばならぬことだ。
その為なら、オレは魂をサキュバス限定で販売しても構わない。
そう、覚悟を決めた。
ってか、それはそれとして、『木材』すら安心して採取出来ないのはつらすぎるだろ。
ここは流石に改善すべきだ。
オレは叔父さんへのメモにそう書こうとして、冷静になる。
つい、柄にもなく常識的に動いてたことに気づいた。
普通なら日中の方が騒音にならない。
むしろ、夜間の方が騒音に対する苦情がくるだろう。
だが、この世界は違うかもしれない。
その検証次第では、夜間に木こりになりそうだ。
さて、忌まわしきオンナのおかげで、ある意味気持ちの切り替えが出来た。
こうなったらなんとしても、オンナをテイムする方法を見つけなければ。
きっと、何かヒントがあるはず。
オレがやってない何かに……
うーん。
まさか、人類系コミュニティとの交流か?
いやいや、それは無いか。
その場合、キャラクリでの性別選択が罠すぎる。
男を選ぶとヒントが手に入れやすく、テイムが難しい。
女を選ぶとテイムはしやすいが、そもそもテイムするためのヒントを手に入れるのが難しい。とか……どうかと思う。
だが、そう考えれば考えるほど、叔父さんならあり得そうだと思えてしまう。
でも、これってオレだからメタ的にそう思うだけで、他のプレイヤーには気づけないのではないか。
だとしたら、ゲームとして不公平だ。
叔父さんならゲーマーとして、その辺りは熟知してるはず。
それに人類系コミュニティがテイム方法を知ってる場合、ここまで不利な状況にはなってないだろう。
大体、オンナとテイムしたオンナで争わせてるはずで、もっと激しく各地で戦闘があってもおかしくない。
んー。
ダメだ。
頭が働かない。
ふと、リアルの時計を見ると深夜1時を過ぎていた。
明日、創立記念日で学校が休みだからとここまでぶっ通しでゲームし続けてたが、ある意味でちょうどいい。
とりあえず、今日はこのへんでやめて、面倒だが風呂入って寝るか。
ってか、腹も減ったし。
よし、明日から本気出す。
いや、既に日をまたいでいるか。
ならば、目が覚めたら本気出す。




