ゾンビアタック
清々しい朝を迎えた。地平線が白くなり、空を水色に変えていく。そして、星々はその姿を隠してしまう。
そんな詩人になった気分を味わいながら、オレは『トマト』を食べる。
本日の朝食
トマト
綺麗な水
以上。この『トマト』は自生してた『トマト』で、採取したら食べるか植えるか選べた。で、試しに1つ植えた。すると今度は水をやるというコマンドが表示される。凄く貴重な水だが、それを消費した。
すると、なんということでしょう。
翌朝になると『トマト』が収穫出来るではありませんか。
ってな訳で今のオレの気分は詩人だ。
そうでもならんとやってられん。
まあ、『トマト』の説明に、遺伝子操作された『トマト』。ってあったし、そういうものだと思おう。
それよりなにより、これで食料事情も改善の目処がたった。
水は夜間の探索で『空き瓶』を集め川で採取、食料はこの『トマト』を集めて栽培すればいい。
きっと、とても穏やかで安らぎのある日々。人生に疲れた大人にオススメの生活だ。
が、オレはこんなスローライフが送りたい訳じゃない。エロライフが送りたいんだ。
そこであの『白い有機結晶』だ。
それに注目してクラフトメニューを調べていたら、どうやら『化学作業台』を使って『テイム薬』が作れるらしい。
他にも素材が必要だが、まず『化学作業台』をアンロックするには『器用』5、『賢さ』6、必要になる。
しかも、この『化学作業台』の必要素材を入手するには『高炉』が必要で、『高炉』を作るには『作業台』が必要ってな具合に、ただ素材を集めるだけじゃ無理らしい。
ちなみに、オレは現在10レベル。『器用』2、『賢さ』3、他は全部1だ。本来『賢さ』を上げると経験値効率が増えるみたいだから、先に『賢さ』を上げたいところだ。だが、『器用』2ないとチェスト(収納箱)がアンロック出来ない為、真っ先に割り振って作った。
それで採取したアイテムを全て入れてる。もちろん、貰った装備もだ。
なにせマジで持ち運べる総重量が少なすぎて、ほとんど持ち帰れない。そして装備品にも重量がある以上、やっぱり全裸探索がベストだと結論が出た。
実際、あまりに持ち運べな過ぎて、総重量を増やす為に『体力』を上げるべきか少し誘惑されたくらいだ。
とりあえず、現在全裸で廃品回収業者みたいな生活を送ってるが、オレの拠点と呼ぶべき場所は、路上に『寝袋』とチェストが置いてあるだけである。ホームレスと互角のいい勝負が出来そうな気がしないこともないが、これがオレの素敵なマイホームである。なにせ、見晴らしも風通しも陽当たりも抜群。雨が降れば、水分補給もたぶん可能。実に最適化されたマイホームだ。
もちろん防犯対策だって抜かりはない。
チェストは拠点から離れた場所にも設置しリスク分散済みだ。ただ、今のところNPCに盗まれたりはしてない。
案外、とても治安のいい好立地の可能もある。もちろん、盗むほど価値があるものがないだけかもしれないが。
それより、なんで川の近くに引っ越さないかと言うと、単純に川の近くに『寝袋』が設置出来ないからだ。
むしろ川こそキャンプの定番だし、そこにこそ『寝袋』が合うだろうに。残念すぎる。
でも、それで気づいたんだが、もしかして他のコミュニティには縄張りがある気がしてきた。そして、その縄張りの内部には設置出来ないとしたら、『寝袋』を持って探索することで、その縄張りをある程度特定することも可能だと。
ま、どちらにせよ、先の話だ。
今、大事なことは、これでレベリングの準備が出来た。ということ。
不思議だが、そうなると心にゆとりが出来るらしい。
ふと思い出した。
ゲーム開始直後、オレは廃墟を徘徊したが人の気配が無かった。
ってことは、川に近寄らないなら日中も探索出来るのではないか。
そうすれば、なにも朝から夜まで睡眠しなくてもよくなるし、なにより日中の方がアイテムを見つけやすい。
そうと決まれば軽く1時間睡眠でセーブして、最近流行の原人ファッションで廃墟へ行くことにした。
そして響く銃声。
赤く染まる画面。
もはや見慣れた、安心のマイホームへファストトラベル。
このゲーム、ファストトラベルあったのか……ちょっと、対価にプレイ時間を支払うことになるけど。
っていやいや、ゲーム内で現実逃避してる場合じゃない。
普通に廃墟をオンナたちが徘徊していた。いや、むしろ巡回してた。
だが、大切なのはその容姿だ。
マジで美女。凄ぇ美女。語彙力とか不要なくらい美女。
欠点があるとするなら、めちゃくちゃ殺意が高いくらいだ。サーチアンドデストロイくらい判断が早い。
もっとも、そんなことはどうでもいい。
俄然、オレのヤル気が出る。
いつか、このオンナたちに分からせてやらねばならない。
このオレが変態だということを。
ふぅ……。
少し落ち着こう。
あまり使いたい方法ではないが、このチャンスを逃す訳にはいかない。
ならば今こそ封印を解き放ち、禁断のゾンビアタックで情報収集するとしよう。
そしてオレは殺された。
何度もオンナに殺された。
うんざりするほど殺された。
ゾンビゲームに出演してるモブのゾンビ並みに殺された。
その甲斐あって、いくつか判明したことがある。
まず、オンナには種類があるということ。
これについては、オンナにカーソルを合わせた時に『ポーン』や『ナイト』と表示されていたことから間違いない。まるでチェスの駒みたいだし、オンナの種類数も簡単に予想出来る。
そして同じ種類のオンナの外見は、同じということも分かった。
若干誤差の範囲内みたいに肌の色などが違うが、2Pカラーみたいなものだ。対した違いとも思えない。
ま、叔父さんの手抜きかもしれないけど。
さらに、日中はチームを組んで巡回してるみたいだ。その巡回経路も少し把握したが、それが明日以降も同じかは分からない。これについては、要検証である。
また、ここで疑問が出る。
なぜ、初日には巡回していなかったのか?
ゲーム画面には曜日の表記はないし、カレンダーの無い世界だと思っていたが、もしかしたら曜日があるのかもしれない。
そして日中巡回しない曜日があるなら、今後の探索に大いに役立てる。
これについても、要検証だ。
他にもオンナの武装についてだが、これはいくつか装備してることも分かった。
アサルトライフルで蜂の巣にされたり、サブマシンガンで弾をスプレーみたいにばら撒かれたり、手榴弾でキャッチボールしようとしてきたり、ロケットランチャーであの世にツアーさせようとしてきたり、実に多彩な武装だった。
ろくに近寄れなかったから分からないが、おそらく近接武器も所持してる可能性が高い。
それらが判明するほど、とても重要なことがある。それが『テイム薬』を作ったとして、どうやって殺意の高すぎるオンナに使うのか。その方法だ。
どうやら、それについても早急に調べる必要がある。




