罠
問題、静かに寝てても殺される状況で、マンホールを壊そうと大きな音を立てるとどうなるでしょう?
正解は
あなたは殺されました
でした。
うん、当然だ。
だが、これで発想が変わった。
わざわざ、地上を走る必要など無くなった。オレは『イヴニング』と共に『リフリーダム』の拠点まで戻る。そして、試しに『寝袋』を置こうとしたが置けなかった。
これで『リフリーダム』が無くなった訳じゃないと判明。このエリアはまだ『リフリーダム』の縄張りってことだ。
それはそれとして、この地下街。
当然、駅ビルの地下にあるのだが、あえて無視した場所がある。
それが地下鉄の駅だ。
なぜなら、マップ的に線路を見ると、明らかに一方はオンナの街へ繋がっており、もう一方は真逆に伸びてた。
現状、オンナの街へ行くのはまだ論外として、大事なのはもう一方。
方向的にオレのホームじゃないが、それはそれでオンナに対する欺瞞行動にもなる。
オレは『イヴニング』に騎乗した。
この線路が何処に繋がっるのか分からないが、確認する価値はある。
ってか、最悪行き止まりだったら、そこから掘るぐらいの気持ちだ。
しかも『イヴニング』のインベントリには『リフリーダム』さんから援助してもらった物資が大量にある。
水分値や食料値は気にする必要すらない。
今、大事なのは睡眠時間だけだ。
先ほどの1時間睡眠は『寝袋』でしてる。どこか安心して寝れる場所に行けるだけでも、十分な収穫。
そう思って暗闇の中を走り続けた。
時折、『寝袋』が設置出来るかを確認しながら、だ。
それで分かったのは、エリア以外にも『寝袋』が設置出来ない場所があるってこと。
これもある意味当たり前といえる。
普通、川の上に設置出来ないように、この線路もまた設置不可に設定してるのだろう。
それを確認してたら終着駅に到着した。
マップを開くと、地上の状況が表示される。それだと、そこは港らしい場所だった。
じゃ、行きますか。
オレは一旦『イヴニング』から降りて、命令を警護へ変更した。
線路からホームに登り、そこから階段を上って地上へ出た。
その光景は夜でも幻想的ですらあった。
壊された工場、散乱するコンテナ(金属の箱)、へし折れたクレーン、大型トラックやトレーラーに合わせたような太い道、倒壊した看板にはそれぞれの埠頭を表す文字、かつて昼夜問わず働いてた人がいた場所。
それが今は無人。
人影どころか、動く物すらない。
異世界に踏み込んだような錯覚すら覚える。
ふぅ……。
とりあえず、一安心出来るみたいだ。
再度マップを開く。
ここは、オレのホームからもっと離れた場所。どんどんホームから遠ざかってる訳だ。
もう、いっそ根本的に考え方を変える。
さてと、それじゃ建築するぞ。
オレは『イヴニング』から素材を取り出して、まず『作業台』を作る。
それを適当に設置したら、今度は土台を作って並べた。
更に壁を作り、屋根を作る。
どっからみても豆腐ハウスと呼ばれるもの。二階への階段も設置して屋根に登った。半分をテラスみたいに柵で囲い、残りの半分はバス停の屋根みたいに作る。その下には『作業台』でクラフトした『シンプルなベッド』を2台並べて設置する。
階段から降り、出入り口の扉を付けると扉を閉めた。そして、その前に『焚き火』を設置する。
もくもくと燃える『焚き火』を見ながら、オレはまた二階へ上がってく。
しばらくすると、階段から煙が出てきた。それを確認したら、階段を壊して穴を塞ぐように屋根を作る。
ここまで出来たら、全てのセーブファイルを更新するつもりで、ひたすら1時間セーブを繰り返し続けた。
今、一階は煙で充満してるはず。
もし、オンナが攻めてきたとして、果たしてどうするのか。
プレイヤーなら気にせずひたすらロケランをぶっ放す状況だけど。
忍者みたいなオンナはそれをするのか。
オレはそれが知りたかった。
だから、普通に海から上がってきた日差しに照らされた時、なんか色々と複雑な気持ちを味わった。
マジでオンナが分からん。
あいつら、なんなんだ。
あからさまに罠臭すぎってことか?
エスコートが下手すぎってか?
うるせえ。
リアルでデートとか未経験だ。
ほっとけ。
なんか幻聴に喧嘩売られるとか、斬新な経験なら今してるが。
ってか、考えすぎかもしれない。
単純に、活動範囲外ってだけかも。
だいたい昼間はある意味オレたちの時間だ。
『イヴニング」なら銃弾の中でも駆け抜けてくれる。
オレは命令を変更して『イヴニング」に騎乗した。
その状態で二階から飛び降りる。
一応落下ダメージのある世界だが、たぶんこの高さなら問題ない。
実際、『イヴニング』のHPは減って無かった。
そしてオレたちは帰路につく。
それは、あまりにも順調に進む。
なぜなら、巡回に遭遇しないのだから。
あれ?
今日って8の倍数の日だっけ?
ヤバっ
完全に日数を数えるのを忘れてた。
ま、いいか。
どうせ『隠れんぼは得意です』を習得してる今じゃ、あまり関係ないし。
そして景色が見慣れた廃墟に変わる頃、廃墟の陰から1人のオンナが現れた。
そのオンナはオレの進行を塞ぐように立ち止まる。
たった一人で?
そう油断した時、ゾロゾロと陰からオンナが現れた。
オレたちは即停止。
瞬時に右を見るとそこにもオンナ。
左を見てもオンナ。
後ろを見てもオンナ。
完全に囲まれていた。
だが、不思議なことにオンナは攻撃してこない。
銃口をこちらに向けた状態で、いつでも殺せるはずなのに。
そして、オンナの声が聞こえた。
「やっと会えた……」
それが、ラブロマンスの始まりじゃないことだけは、確かだ。




