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完全包囲



虐殺という大量殺人をしたオレは、設置した『寝袋』まで戻ってきた。



今の気分は、控えめに言って最高だ。



まるで自分が最強になったように錯覚してる。

強者が弱者を蹂躙するのは快感でしかない。

一度味わうとやめれなくなる。

また、すぐに味わいたくなる。

それだけの高揚感を感じさせてくれる。



だが、これはオレの力じゃない。

『イヴニング』の力だ。




ふぅ……。

少し落ち着きを取り戻す。

それでもまだ、心の奥底に消し忘れた火のように燻っている。

それは油を注いだら、また炎としてオレを快楽で燃やすだろう。



厄介だな。

強さってヤツは。



さてと、もうこんなところにいる必要は無い。『リフリーダム』の拠点を壊滅させたけど、生き残りはいる。ここで殺さなかった奴らや、たまたまこの拠点に居なかった奴ら。

それらはいわゆる、禍根ってヤツだ。



でも、オレはそれでいいと思ってる。



たっぷり禍根を残し、それでいいと。

連中のヘイトはオレが大量購入した。

どう考えても、他よりオレを見るだろう。

そしてオレなら連中の報復など、アイテムの宅配サービスくらいにしか感じない。


なんなら定期的に届けて欲しいくらいだ。



だから今、問題とすべきは時刻。

壊滅させるのには時間をかけなかったが、その後の探索に時間をかけ過ぎた。

既に陽は沈みはじめてる。

マジで逢う魔が時って感じだ。


とりあえず1時間睡眠でセーブ。


それで夜になった。

ここで朝まで過ごすか、ホームに戻るか。その二択。

帰るとしてどのルートにするか検討のためマップを見る。


そして笑った。


未探索のマップの中、ホームとここをほぼ直線で結んだように探索してる。

どんだけ脳筋だったのか、と。

そりゃ、ここへ来るほどオンナの攻撃が激しかった訳だ。

これほど進行方向が明確なら、オンナたちも先回りしてたって事だ。



で、気づく。

なら、なぜ今攻撃されてないのか。



もう、嫌な予感しかしない。

確かこういう時は大人しくジッとしてた方がいいとかなんとか。

オレは大量にアイテムを持たされた『イヴニング』から『寝袋』の素材を取り出しクラフトする。

そして、隣にも設置。


朝まで寝ることにした。





あなたは殺されました





ですよねー。

すみません。

イキってました。

ちょっと寝たいだけなんです。

こう、なんていうんですかね、朝日を浴びたい感じなんですよ。

ほら、オレって人間じゃないけどヴァンパイヤでもないし。

お日様を拝みたい気分ってヤツ。

分かってもらえませんか?




あなたは殺されました





そうですか。

ご理解頂けない、と。

つまり夜のデートを『イヴニング』と楽しんで来いってことですね。



ふぅ……。

よし、一丁やりますか。



笑ったら負けよ、アップップ。

って感じでマップと睨めっこしながら、ひたすら最適ルートを模索する。

幸か不幸か道のりは長い。

それは同時に選べるルートも多いってことだ。


必ずどこかに抜け道がある。


そう信じて試行錯誤した。

試行回数が二桁になっても、諦めなかった。

だって、あの偉大なTASツールアシステッドスピードランさんとか、試行回数3桁、4桁当たり前だし。

この程度で諦めますか。



って思ってたが、TASさんと違ってオレは人間だったらしい。

普通に200回くらい殺され続けると、こう少し心にくるものがある。


ってか、純粋にルートが無くなった。


よく刑事ドラマであるテンプレ台詞、お前は完全に包囲されてる、って感じだ。



マジ?

このゲーム、そこまでするん?

ヤバすぎだろ。



だいたい、オンナもオンナだ。

そんな本気出すくらいなら、さっさと人類にとどめさせるだろ。

『リフリーダム』とか、オレですら壊滅させれたんだが?

意味が分からん。



あれか、実は争ってるように見せて裏じゃNPC同士仲良くしてるのか。

そうやってプレイヤーだけ仲間ハズレにするの良くないぞ。

オレとも仲良くしようぜ。

ほら、裸の付き合いってヤツ、すっごくしたいし。

そうすることで、今までのことは水に流してさ、アヘ顔で記念撮影しよ。

オレとしてはそんなにアヘ顔は好きじゃないけど、お互い譲歩するのって大事だしさ。

オレ、君たちと一緒に裸族になるから。

それぐらい我慢出来る。




ってオレは思ってるのに、分かり合えない。

まったく、これだからNPCは信じられん。ま、プレイヤーはもっと信じられんけど。PvP鯖限定で。



さて、冗談抜きで、真面目に困った。

が、ふと疑問も浮かぶ。



例の計画とやらの第一段階で、大量の罠を仕掛けるって話だった。

ならば、どうやって人類はその罠を仕掛けてるんだ?

まさか、本当にNPC同士繋がってる訳じゃないよな。

だったら、何か別の方法があるはず。



路地裏の暗闇の中、オレの視界にマンホールがある。



まさか……これか?



だが、そこにカーソルを合わせても何も表示されない。

じゃ、違うのか……。



その時、思い出したのは初めてマルイと出会ったときのことだ。

マルイはプレイヤーが開けれず出せなかった階段を出した。

ってことは、これもその類の可能性はある。




くくくっ




あそこはマミコのお店だからしなかったけど、この世界はほぼ全てに耐久値がある。


じゃ、壊せばよくね?



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