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変態の道



「エロイチ君……!? 無事だったの、良かった……本当に良かった。もう、心配してたんだから」


ごめん、そんなに心配してるとは思ってなかった。

ま、無事かどうかについては議論の余地があるけど。


「大丈夫? どこも怪我してない?」


マミコがオレをやたらと見てくるが、生憎怪我はしてない。大丈夫だ。

それが柔軟の効果なのか、それとも怪我する間も無くあの世に行くからなのかは判断が難しいが。


「それにしても、本当にタイミングがいいわ。ちょうど今、お店を閉めて帰ろうと思ってたところだもの」


あ……すっかり忘れてた。

そうだよな。

普通、営業時間ってやつがあるか。

ゲームだし24時間営業だと勝手に思ってた。


ってことは、このお店の営業は基本夜で朝に閉まるってことなのか?

でも、それだとなんであの夜出歩いてたのか謎だけど。



それはそれとして、今は朝。

ゲーム内時間で1時間程度の距離にあるお店に行くのに、夜出発したオレが朝にここへ来てる訳だ。



もう、この時点で色々と察して欲しいレベルだ。



とりあえず、最初の一回目はいい。

普通に地上からお店を目指して殺されたから。オレとしても、やっぱ毎晩忍者が現れるようになったと再確認する意味もあったし。同じ『特殊能力』でも明確に差があることも分かったから。


で、当然オレだって無策な訳じゃない。


二回目からは橋の下から向かった。

それでも殺された。

これも想定内。はなから一発で辿りつけると思ってるほどカロリー高くない。甘さ控えめだ。


三回目は前回殺された位置からオンナの活動範囲を想定し、別のルートを通って目指した。

でも、殺された。つまり、想定より活動範囲が広いか、予想より夜戦特化のオンナが多いか、もしくはそれ以外の理由があるってことだ。


四回目からはシラミ潰しだ。

マップと睨めっこする勢いで、片っ端から別ルートを通って少しでもお店に近づくようにした。


五回目も殺され、六回目も殺され、七回目も殺され、いい加減選べるルートが少なくなってきた八回目、オレはついにお店のすぐ近くまでこれた。


あぁ、どうやらこれが正解ルートか。


そう思ってお店に近づくと、突然眠らされた。そして、殺された。

マジで色々と意味が分からなかった。


なんで殺す前にワンクッション眠りを入れてくるのかも、なにが原因で眠らされてるのかも。ただ、毎回同じ場所で眠らされてる以上、その場所に何かがあるのは間違いない。しかも眠らされる前にガスの噴出音も聞こえてる。

それなのに細かくカーソルを合わせても何も表示されない。

結局、それがどうやっても夜間では見つけられなかった。



で、断念したオレは、素直に朝まで他のことを色々としながら時間を使い、今こうしてここにいる。

ちなみに、眠らされた原因はワイヤートラップだった。

つまり、それを避けるには現状ジャンプしろってこと。


暗闇の中じゃ正確なワイヤーの位置が分かる訳ないが、その為の『特殊能力』なんだろう。

夜間でも見えるようにするなり、罠を教えてくれるやつはこの為だ。



で、それらを習得しないなら、これからは状態異常への対策も必要になってきた、と。


「だから、これって運命じゃないかな。お姉さんと一緒のコミュニティになろうよ。悪いようにしないから。お姉さんが手取り足取り優しくしてあげるわ」


おや……!?

オレの変態センサーが同類だと反応してるぞ。もしかして、センサーが壊れてるのかな。


また以前と同じ選択肢が現れた。

なので今回は『いいえ』を選ぶ。

当然だ。オレがここに来たのはビジネスの為だからな。


「もぅ……前あった時は、もっと素直だったのに。でも、君も男の子だもんね。そうやって意地を張るのもカッコいいわ。お姉さん、つい応援したくなっちゃう」


んん?

選択肢を間違えたか?

気のせいか好感度が上がってる気がする。って、それは悪くないのか。ビジネスで重要だし。


ただ、なんだかなぁ。

名前といい、性格といい、オレの苦手なタイプだ。やっぱり叔父さんによる嫌がらせ説が濃厚になった。


流石に母さんがショタコンって説は無いだろうし。

それより、ようやくお目当の選択肢が出た。


上:応援してくれるの?

左:大丈夫

右:嬉しい

下:取引


迷わず下を押す。


「ごめんね、せっかく取引に来てくれたのに言いづらいんだけど、今、ちょっとゴタゴタがあって価格が上昇してるの。すぐ落ち着くとは思うけど」


そうマミコが言う。

すると画面が取引画面になった。

大方の予想通り、物々交換が可能な画面。お店側の所持金に300パケと表示されてるところを見ると、おそらくそれがこの世界での通貨なんだろう。


パケがなんなのか分からん。そう思ってカーソルをそこに合わせると、パケットがこの世界の通貨って説明があった。



いや、パケットってなんだよ。

バスケットやソケットなら知ってるけど。

仕方ないから、ネットで調べてみたら、データ量を表す単位らしい。

ってか、聞いたことが無かったけど現在も使われてるらしい。


へーって感じだ。普通に128バイトでいいと思うけど。ま、なんか理由があるんだろう。知らんけど。



とにかく、それを超える取引は出来ないってことだ。

オレは自慢の採れたて新鮮野菜を売ってみた。一応、リアルなら1日経ってないはず、採れたてで間違いない。ってかゲーム内時間は分からん。同じアイテムとしてチェストに入るからな。



それより、持ってきた野菜が普通に300パケを超えていた。

そこで思い出した。



これこそ物々交換の最大のメリットだ、と。

つまり、買う物の値段が高くなっても、売る物の値段も高くなるのだから相殺される。


もっともリアルだと必要か不要かの判断で交換出来なくなるから、より万能な貨幣が生まれてる訳なんだけど、ゲームならメリットしかないかもしれない。



だとすると、農家に転職すべきか……



って違うだろ。

あぶね、危うく変態の道を踏み外して真っ当に生きるところだった。


ふぅ……。

お金は人を狂わせるってこのことか。



まずは目的の物があるか確認しよう。



武器や防具や服や道具や食べ物などなど色々ある中、ゆっくりスクロールしながら確認していく。


すると



『秘書の葛藤』



ってのがあった。

どう見てもエロ本のタイトルだ。本当にありがとうございます。

気になったオレはそれを確認する。

だが、それはエロ本ではなかった。


そのアイテムは、手に入れると女性用スーツが作れるようになるらしい。

いわゆる、コスプレ衣装だ。

これは人が生きていくのに必要な物。

しかも、値段もお手頃、手持ちの野菜を全て売ればギリギリ買える。




オレはそれを買っていた。



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